晩秋のスイスで自家製ザウアークラウト(Sauerkraut)作り体験

冬の漬物というと、京漬物のすぐき(酸茎)や、韓国のキムチの名前が挙がる。スイスを始めとするヨーロッパの多くの国にも冬に漬物を作る慣習があり、その代表選手がザウアークラウト(Sauerkraut)だ。先日、私の友人のリタさん&レネさんご夫婦が、このザウアークラウトを自宅で作る・漬ける作業を見せて下さったので、作業風景を交えてご紹介したい。

ベテラン夫婦のザウアークラウト指南

ザウアークラウトは、ざっくりと説明すると「キャベツの酸っぱい塩漬け」。酸味は酢などの調味料によるものではなく、すぐきやキムチと同様に乳酸醗酵の過程で酸っぱくなるのが特徴だ。リタさん&レネさんのお宅では毎年ザウアークラウトを漬けているそうで、その漬物経験は何と45年!ザウアークラウト漬けの大ベテランと言える。
今回用意されたのは、5キログラムのキャベツと2キログラムのサボイキャベツ。

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サボイキャベツは、濃い緑色で縮れた葉っぱが特徴。日本ではあまりポピュラーではないが、スイスを始めドイツやオランダ、フランスなどでは日常でよく目にする一般的な野菜に属する。標準ドイツ語ではウィルシング(Wirsing)という名前だが、スイスドイツ語ではウィルツ (Wirz)と呼ぶのが面白い。

まずはこのキャベツをザクっと4つ切りにして、中心にある硬い茎部分を切り落とし、外側の傷んだ葉を取り除き、きれいな水でよく洗う。作業は結構な量の水を使うので、屋外で行うのが理想的だ。

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リタさん&レネさんによると、ザウアークラウト作りで一番大事なのは、異物や汚れなどが入らないこと。45年の漬物経験で1度だけ失敗した(つまり漬物が腐ってしまった)ことがあり、その原因は、漬ける過程で紛れ込んだ小さい木片だったのだそうだ。

このきれいに洗ったキャベツを、次にクラウトホーベル(Krauthobel)と呼ばれる道具で削る。

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仕組みは大工道具のカンナの逆で、器具は固定し、削られるもの(キャベツ)を入れる容器部分をスライドさせて削る。刃は複数枚付いているので、手早く大量に削ることができる。

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<体重をかけてザクザクと削る結構な力業(!)で、これはレネさんの役目>


次に、削ったキャベツを陶器製の漬物樽に入れ、これをクラウトスタンプファー(Krautstampfer)という日本の杵に似た木製の道具で押す。

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<「これもかなり力が要るのよ!」とリタさんは言う>


その昔は、キャベツを大きな容器に入れ、その上から人間が足で踏みつぶしていたそうだ。今はさすがに足で踏むことはなくなっているが、要領は同じ。ドンドンと力まかせに突くのではなく、体重をかけてグッと押し潰す感じだ。このスタンプフェン(stampfen:ドイツ語で「足や道具などで物を力強く踏みつける、または押し潰す」という意味)と呼ばれる作業の目的は、削ったキャベツをきっちりと密着させるのと、キャベツの野菜汁を抽出させること。この野菜汁によって、初めて醗酵が可能になるのだ。

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押したキャベツの上に片手一杯程度の塩とクミン少々(クミンは好みによって入れなくてもいい)を振りかけて、第1層が完成。...第1層?そう、ザウアークラウトは、押し潰したキャベツ+塩+クミンの層を複数重ねて作られるのだ。

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<2層以降を漬けるべく、作業を続けるリタさん&レネさん>

ザウアークラウト道は奥深い!

2層以降も同じようにキャベツを削って押して塩とクミンを振りかけ、今回は4層が完成。一番上のキャベツ+塩+クミン層の上に清潔な布巾(繊維くずが出ない綿やリネンが適している)を敷き、その上に重し(2キログラム程度)を乗せ、その上から布巾部分に更に塩を振る。そして、重しが完全に浸るまで水を注ぎ、容器に蓋をし、蓋と容器の接着面にある溝に水を注ぎ(中が密閉される)、摂氏4~5度ぐらいの場所に保存する。

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食べられるようになるのは、1か月後ぐらいからだ。

今回のザウアークラウト作りは10月30日に行われ、12月の第1週目に1回目のザウアークラウトを頂く予定とのこと。食べる時には、食べる分だけ取るのではなく、1層まるごとを取り出す。この際にはまず漬物樽から水を抜き、いちばん上の層をまるごと取り出し、布巾+重し+塩を乗せ、また水を注いで次の層を取り出すまで保存する。4層あれば3月ぐらいまでの間に毎月1層を取り出す計算になり、その都度深く漬かるので酸味が増すのだそうだ。

もちろんもっとたくさんの層を作ってもいいのだろうけど、ザウアークラウトは基本的に冬の食べ物だし、特に今日では毎日モリモリ食べるという食材でもない。取り出したザウアークラウトのうち一度に食べ切れない分は冷凍庫で保存もできるが、リタさん曰く「いや、暖かくなるとザウアークラウトを食べる気分にはならないし、これぐらいが丁度いい」とのこと。

どれぐらいのザウアークラウトを1回に取り出したいかにもよるが、層の厚みは5~8センチメートルぐらい。レネさん曰く、層が厚すぎるとキャベツが上手く密着せず、またキャベツ汁+塩が層全体に均等に行き届かないので、上手く漬からないとのこと(仮に上手く漬かったとしても、1層はまるごと取り出さなくてはならないので、一度に取り出す量も多すぎる)。

下の層を崩さずに1層だけを取り出すのは難しいんじゃない?と尋ねたところ、「スタンプフェン作業をした各層の上部はテーブルの天板みたいに平らで硬くなってるから、簡単に取り出せるよ!」とのこと。また、リタさん&レネさんは薬味としてクミンを入れているが、これはご夫婦がレネさんのお爺さん&お婆さんから継承したザウアークラウトレシピによるもの。

ザウアークラウト作りには塩は不可欠だが、他の薬味は特に必要という訳ではなく、またクミンは苦手な人もいるので、入れなくてもいいのだそうだ。クミンの代わりにジュニパーベリー-ドイツ語ではワッホルダーベーレ(Wacholderbeere)-を入れるレシピもあるとのこと。

この記事は11月下旬に書いているので、第1回目のザウアークラウト取り出しはもう間近。リタさん&レネさんのお宅では、毎年この1回目のザウアークラウトを取り出す時に親戚や近しい友人を招いてザウアークラウトを使った料理を振る舞っているそうで、今年は私もご招待に与っている。「簡単に取り出せるよ」とレネさんが言っていたザウアークラウト層の取り出しも見せて下さるそうで、今からとても楽しみ!

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<漬物作業の後で、キャベツの傷んだ外側の葉っぱや切り落とした茎を庭の畑に埋めるレネさん。春までにはすっかりと分解されてしまうそうだ。>

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Asami AMMANN-HONDA

スイス東部トゥールガウ州の農村在住。元書店員、現在は兼業主婦(介護補助士&日本語教師&日独英通訳)。趣味はスポーツ・園芸・料理、専門は音響映像技術。

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