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イタリア・フィレンツェ伝統の提灯行列
ローカルなフィレンツェの秋のイベント
イタリアには大小様々な起源のお祭りがありますが、今回紹介するリフィコローナとは、お祭りというよりイベントや伝統行事に近いかもしれない規模の小さなものです。フィレンツェ特有のもので、他地域にはあまり馴染みがありません。
起源は中世17世紀頃。聖母マリアが誕生した9月8日を祝うため、郊外の農家の人々もフィレンツェに巡礼へと集まってきました。彼らはせっかく街に行くのだからということで農産物や自家製チーズなどを売るために持っていったので、毎年この日には土地の農産物を売る大きな市場が開かれるようになりました。
巡礼者たちはフィレンツェ中心街のサンティッシマ・アンヌンツィアータ教会の広場を目指して、それぞれの荷を持って全日夜、つまり9月7日に出発しました。少しでも良い場所を取るために、暗い夜道を夜を徹して集まってきたのです。現代で言うところの前乗りですね。
そうした農民たちの持つ提灯(ちょうちん)や松明(たいまつ)の灯りが、9月7日に提灯行列として残ったものがリフィコローナです。広場に到着して無事に場所取りを済ませた人々は、そこでキャンプをして歌い踊って夜を過ごしたそうです。
現代ではリフィコローナは、地元の子供たちが提灯行列するイベントとして親しまれています。
フィレンツェ市内の公園で有志による子供向けのリフィコローナ作り体験をしていたので、参加してきました。材料費2ユーロを支払うと、その場に並べられた材料を使うことができます。土台の形を四角か丸か選び、薄い色紙を貼り付けて飾りを付けます。穴を開けて竹竿を固定し、中央にロウソクを乗せれば出来上がり。この時期の文房具店やパーティー洋品店では、手作りではない既製品のリフィコローナも沢山店先に並びます。どれもとても単純な作りで、カラフルな色の薄紙を使っています。
それぞれの提灯を持ち寄って地元の子供たちが集まる夕べ
本来ならリフィコローナの提灯行列をするのは9月7日なのですが、2017年は生憎の雨でイベントが流れてしまいました。それでもせっかく子供たちが作った提灯を灯さないのは勿体無いと、伝統からは外れますが翌日8日の夜、提灯行列が行われました。
係の人に火を灯してもらった子供たちは、一列になって前に進みます。その時伝統的に歌われる歌が、リフィコローナの歌です。 Ona, ona, ona Oh che bella rificlona!(オーナ・オーナ・オーナ、ケ・ベッラ・リフィコローナ!)
というフレーズで始まるこの歌は、フィレンツェ市民が農村からやってきた野暮ったい農民たちを野次った歌。今では提灯行列の時の歌として、伝統的に歌い継がれています。
本家本元であるサンティッシマ・アンヌンツィアータ教会にはもっと沢山の人が提灯を持って集まるそうですが、それ以外の場所でも有志による行列の開催が各地で開かれています。イベントと言っても特に変わったことがあるわけではなく、提灯に火を灯して、上記の歌を歌いながら歩くだけなのですが、秋の始まりを告げる夜のイベントとして地域住民に大切にされています。
娘が参加した行列では、最後に自分の提灯を燃やし、参加賞としてノートと鉛筆をもらってきました。たったそれだけのことなのですが、子供たちはいつもの公園に夜集まれることが嬉しく、良い思い出になったようです。
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佐藤 モカ
- イタリア・フィレンツェ在住。作家、フリーライター、マーケティング各種リサーチやコーディネートなど。2013年女児出産、現在育児奮闘中。