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ヴェネト州はワイン王国!豊かな自然が産み出す銘柄の魅力
イタリアでもトップクラスのワイン生産量を誇るヴェネト州。豊かな自然の中で造られるワインは、人気のプロセッコや高級ワインのアマローネなど、赤白どちらも素晴らしい仕上がり。それぞれの違いや味わい、一緒に合わせたいお料理などをご紹介します。
ヴェネト州がワイン王国なのは、地形に恵まれているから
ヴェネト州は、非常に自然豊かな州です。北側はオーストリアに続くドロミテ(ドロミーティ)山岳地帯、東側はアドリア海に面し、西・南側はイタリア最大の平野地帯であるパダーナ平原に位置しています。
さらに、その合間には自然豊かな丘陵地帯が連なって......と、恵まれた地形をベースに、州内の各地方でバラエティに富んだ自然環境が形成されています。特に、各地で作られる伝統的なワインは見逃せません。
ヴェネトは、イタリアのワイン生産量において国内でトップクラスの生産地です。ヴェネト産ワインの代表的な品種としては、「プロセッコ」、「ヴァルポリチェッラ(アマローネ)」、「ソアーヴェ」などがあります。
美しい景観のプロセッコの産地 写真:Aki Shirahama
人気急上昇の発泡白ワイン「プロセッコ」
ここ数年でイタリア国内外から人気を集めている「プロセッコ(Prosecco)」。
爽やかでドライな口当たりの発泡白ワインです。生産の中心はトレヴィーゾ県の北側、コネリアーノとヴァルドッビアーデネという丘陵地帯です。
「エクストラ・ドライ(Extra Dry)」と表示されているのがクラシックなもの。リンゴや洋ナシ、柑橘系のフルーツや爽やかな白い花など、デリケートで丸みを帯びた風味を細い気泡のなかに感じることのできる、好感的なスプマンテ(スパークリングワイン)です。
そして近年、特に急速に人気が高まっているのが「ブリュット (Brut)」という、エクストラ・ドライよりも辛口のプロセッコ。香りはさらに柑橘系で、野草的な印象が特徴です。
ヴェネトにおけるプロセッコは、アペリティーヴォ(前菜)と共に飲む食前酒として、欠かせないワインであるほど非常に身近で、親しみのあるものです。夕暮れ時のバールで、一杯のプロセッコを飲むのは格別のひととき。
食事と合わせるのであれば、魚料理に最適です。ヴェネツィアで魚介料理をいただくときは、ぜひ一緒に味わってみてください。特に、ヴェネツィア特有の魚介の前菜にぴったりなのでオススメです。
アペリティーヴォ(前菜)には欠かせないプロセッコ 写真:Aki Shirahama
ヴェネトを代表する白ワイン「ソアーヴェ」
ヴェネト州のワイン生産量のうち、全体の70%は白ワインが占めています。中でも特に歴史があり、代表的な白ワインのひとつが「ソアーヴェ(Soave)」です。ヴェネツィアからミラノ方面に西に向かって約80kmの丘陵地、ソアーヴェとガンベッラーラがその産地。こちらは非常に美しい丘陵地帯です。
ワインの特徴は、甘みと酸味のバランスの良い口当たりのよさ。花の香りや完熟したフルーツ香のなかに、フレッシュな爽やかさもしっかりと感じられます。後に残るのはアーモンドを感じられる余韻。
食事どきには食前酒としてはもちろんのこと、魚介ベースのパスタやリゾットなども良いでしょう。魚料理や軽い肉料理などと合わせることをオススメします。
ちなみに、ワインと同名のソアーヴェの街は、城壁に囲まれた小さな美しい街です。街の上にはロッカと呼ばれる城壁が連なり、その周囲にはぶどう畑が広がっています。
ワインを楽しむのと同様、こちらもぜひ一度見ていただきたい景色です。
気品溢れる「ヴァルポリチェッラ」そして「アマローネ」
ヴェネトの赤ワインの代表は「ヴァルポリチェッラ」、そして同じぶどう品種からなる「アマローネ」。産地はヴェローナ県の丘陵地で、地元原産種のブドウを中心にブレンドした赤ワインです。
細かく分けると、比較的フレッシュ感を残した苦めな風味の「ヴァルポリチェッラ(Valpolicella)」、それを樽熟成させて奥深い熟成香を出した「ヴァルポリチェッラ・スペリオーレ(Valpolicella Superiore)」、そして収穫後数ヶ月をかけて影干しした、いわゆる半干しブドウを使う「アマローネ(Amarone)」があります。
中でもアマローネは、醸造工程に入る時点ですでに果実の水分が減っているため、極端に糖度の高い原料から作られます。さらに樽熟成を何年もかけて行うため、香りや口当たりがさらに濃厚に、エレガントに、そして奥行きの深い高級ワインとなります。
ブドウの収穫後、竹製の棚にブドウを数ヶ月間並べて干し、水分を抜いて糖度を高くしてからワイン醸造に入ります。 写真:Aki Shirahama
また、ヴェネト伝統の特有の製法で作られる「リパッソ(Ripasso)」は、絞りかすが残ったアマローネを熟成した樽にヴァルポリチェッラを合わせて数日おき、再度アルコール発酵をさせたもの。二番煎じ的なものですが、ヴァルポリチェッラのなかにアマローネ由来の深みが加わります。
このように、同品種のブドウからなる赤ワインでも、その醸造法の違いによって味わいや風味が大きく変わるので、料理やシチュエーションによって選び方を変えて楽しみたいですね。
ちなみに、アマローネの産地であるヴェローナ地区では、このアマローネを使ったリゾット「リゾット・アッラマローネ(Risotto all'Amarone)」 も有名です。
見た目はシンプルですが、深いワイン色に染まったリゾットはアマローネの濃厚な香りを存分に楽しめます。ヴェローナ方面にお越しの際には、ぜひ試してみてくださいね。
他にもオススメはたくさん......!
同じヴェローナ県下において近年人気が高まっているものに、「ルガーナ (Lugana)」という品種のワインがあります。
生産地域はヴェネト州とロンバルディア州の境、ガルダ湖周辺。白ワインですがしっかりとした口当たり、フルーティな上にミネラルを感じる風味、甘みや香りもしっかりと感じられるものです。
また、パドヴァ郊外の丘陵地、エウガーネイ丘陵地にて生産される「モスカート・フィオール・ダランチョ (Moscato Fior d'Arancio)」は甘い微発泡のスプマンテで、非常に限られた地域で生産されているもの。
「アランチャ(=オレンジ)の花」という意味の通り、オレンジの花を連想させる甘さの奥に、ほのかな柑橘を感じさせる香りが特徴です。
蒸留酒、グラッパもヴェネトならではのお酒
ヴェネト州は、ワインの醸造の際に余ったブドウの皮などを使った蒸留酒「グラッ
パ (Grappa)」もよく知られています。ブドウの絞りかすを高温で蒸し、冷却してアルコールにしたものがベースです。
グラッパはアルコール度が40~50度まであるのですが、鼻を近づけると奥にブドウの香りをフッと感じます。消化を助ける食後酒として小さなグラスで提供されるので、まずは香りを楽しんで、そして口に含んでみてください。
もともと無色透明な蒸留酒ですが、樽に入れて熟成したものなど、木の樽の色や香りづけをしたものもあります。また、エスプレッソコーヒーの中に数滴のグラッパを入れて飲むスタイルを「カフェ・コレット (Caffe Corretto)」と呼び、食後の飲み物として日常に根付いています。
グラッパの製造現場。銅製の圧力鍋でブドウの絞りかすを高温で蒸すように加熱します。 写真:Aki Shirahama
ヴェネトの名物カクテル「スプリッツ」
ヴェネト州を訪れた人なら必ず目にするカクテルがあります。それが「スプリッツ(Spritz)」。今やイタリア全土で愛されているものですが、オリジナルはヴェネツィアを中心としたヴェネト州にあります。
アペロールというオレンジ色のリキュール(またはカンパリ)をプロセッコと合わせ、ガス入りの水で割ったものです。夕方にはあちらこちらのバールで、まるで皆が示し合わせたかのように飲んでいる風景が見られます。
リキュールのほろ苦さがある、甘さの効いたカクテル。ヴェネト州を訪れたときは、一度試していただきたい一杯です。
※編集部註......日本でもアペロールが販売されており、イタリアン料理のお店などでスプリッツをいただくことができます。ご興味のある方は、国内のお店でも試してみてくださいね。
写真:Aki Shirahama
お酒好きにはたまらない、ヴェネツィアの酒場「バーカロ」を楽しむ
ヴェネト州の州都であるヴェネツィアの飲食店には、独特の形態があります。
「バーカロ 」と呼ばれるもので、一般的にいうオステリア(大衆食堂)がそれにあたります。入り口にバンコ(カウンター)があり、そこでグラスのワインを立ち飲みで味わえることが特徴。
ハウスワインなどは非常に安価で飾り気ない気軽さがよく、一杯のワインのことを「オンブラ」と呼んで親しんでいます。バンコには大抵の場合、おつまみの惣菜(チケティ)が並んでおり、それらをつまみながらお喋りをして楽しむのが地元流。
多くの店ではさまざまな品種のワインが揃っていますので、お店の黒板に書かれたメニューなどを参考に、地元ワインを気軽に味わってみてください。
ヴェネトのワインはとてもバラエティに富んでいます。お料理も魚介料理中心のアドリア海沿岸から、平野地域、そして山岳地域へと地元の幸をふんだんに使ったものがあるので、それに合わせてさまざまなワインを楽しんでみてくださいね。
写真・執筆:Aki Shirahama
※編集部註......イタリア・日本両国の法律を守り、お酒をお楽しみください。
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