パドヴァの老舗カフェ「ペドロッキ」で、名物コーヒーをいただく

ヴェネト州パドヴァのシンボルのひとつでもある『カフェ・ペドロッキ』。町の歴史と強いつながりを持つ由緒正しきカフェにて、同店オリジナルのカフェをいただきます。

町の歴史に欠かせない「カフェ」の位置付け

ヴェネト州の都市パドヴァは、イタリアでも2番目に古い大学のある学術都市でもあります。そして、大学の歴史ともつながりが深く、町の中で最も歴史あるカフェが『Caffe Pedrocchi(カフェ・ペドロッキ)』です。1831年に、アントニオ・ペドロッキにより創業しました。

イタリアにおけるカフェとは、ただ単にコーヒーを飲む休息の場というよりは、人が集い、意見を交換する場。いわゆる社交場としての目的が主として成り立ってきています。

こちらのカフェもその例にもれず、向かい側にパドヴァ大学を構えた町の中核部に、美しく立派な品格あるカフェとして存在しています。

パドヴァ旧市街地の中心にあるカフェ・ペドロッキの外観。写真:Aki Shirahama

パドヴァ旧市街地の中心にあるカフェ・ペドロッキの外観。写真:Aki Shirahama

創業者のアントニオ・ペドロッキの肖像。カフェの外壁にみられます。写真:Aki Shirahama

創業者のアントニオ・ペドロッキの肖像。カフェの外壁にみられます。写真:Aki Shirahama

パドヴァの3大"なし"のひとつ「扉のないカフェ」

パドヴァ人ならば誰もが知る、町を象徴するフレーズがあります。それが、「パドヴァには3つの不足がある。名のないサント、芝のないプラート、そして扉のないカフェ」というものです。

その意味するところとは、次の通り。

1.名のないサント:サントとは、パドヴァの守護聖人である聖アントニオをさします。非常に信仰の高く、愛されている聖人であるため、パドヴァ市民には通常その聖人名ではなく、"サント"と通称されていることから。

2.芝生のないプラート:プラートとは芝を意味する言葉ですが、パドヴァのシンボルである大きな広場、プラート・デッラ・ヴァッレには、芝が生えていないことから。

3.扉のないカフェ:これが、今回紹介するカフェ・ペドロッキ。ここでは、誰にでも扉が解放されている、自由がある、ということを意味しています。パドヴァに大学が設立された経緯も、もっと自由な学問を求めて......という思想のもと。当時の大学関係の学識者たちも、このカフェに集まって思想を語り合ったことでしょう。

同カフェは大学と非常に縁が深く、近年歴史上の重要ポイントとしては、19世紀半ばに起きた学生によるリソルジメント運動(近代イタリア独立運動)の活動の拠点とされていたことなどからも分かります。

現在でも建物の2階部分は、リソルジメント博物館とされ、当時の様子をうかがえます。また、1984年に学生がオーストリア軍に対抗したことの記念日である2月8日には、大学生による記念イベントも行われます。

パドヴァ大学(パラッツォ・ボー)の正面。13世紀に創設されました。写真:Aki Shirahama

パドヴァ大学(パラッツォ・ボー)の正面。13世紀に創設されました。写真:Aki Shirahama

パドヴァ中心地。右側がパドヴァ大学、正面奥はカフェ・ペドロッキ。左側は現在のパドヴァ市庁舎。 写真:Aki Shirahama

パドヴァ中心地。右側がパドヴァ大学、正面奥はカフェ・ペドロッキ。左側は現在のパドヴァ市庁舎。 写真:Aki Shirahama

歴史あるカフェでオーダーする名物コーヒーとは?

早速店内に入り、歴史を感じながらコーヒーでもいただきましょう。

内部は大きく3つの部屋に区切られ、白、緑、赤のトリコローレに色別されています。もちろん、創業当時のままの姿です。

店内の様子。中心の大きなホールは赤の部屋です 写真:Aki Shirahama

店内の様子。中心の大きなホールは赤の部屋です 写真:Aki Shirahama

ここでオーダーすべきメニューがあります。それは、店名を冠した『カフェ・ペドロッキ』という名のコーヒー。

名物メニューの「カフェ・ペドロッキ」 写真:Aki Shirahama

名物メニューの「カフェ・ペドロッキ」 写真:Aki Shirahama

これをオーダーすると、カメリエーレ(給仕人)はカプチーノ用の少し大きなカップに入ったコーヒーをテーブルに置きながら、「砂糖は入れずに、そして絶対に混ぜないでください。ただし、最後の泡までしっかり味わって......」と、必ず一言添えていきます。

それを口にすると......ほろ苦く熱いコーヒーに冷たく甘いクリームとミントの香りが......。

作り方は、通常のエスプレッソをカップに注ぎ、その上にミントのシロップを入れた軽いホイップクリームをのせます。そして、仕上げにココアを表面にふってできあがり。

苦さと甘さ、コーヒーとクリームの温度差......様々な要素が層になっていて、それを口に含んだところで、その対比するものを一緒にさせて味わう、という仕組み。かき混ぜてはいけない、という意味がここで初めて分かります。とはいえ、この美味しい泡の部分を、スプーンを使わず最後まで残さずにいただくのは、結構難しいのです。

正しくいただくコツは、飲んでいる途中にも何度かカップをゆすりながら、泡をコーヒーに溶かしていくこと。それでも、美味しそうな泡がしっかりカップの底に残ってしまったら......迷わずにカメリエーレを呼んでスプーンをもらいます。「最後までしっかり味わいたい」旨が伝われば、嫌な顔もされずに持ってきてもらえます。

このカフェメニューは、一度は味わっていただきたい一品です。パドヴァの町の雰囲気と、この歴史あるカフェという空間でいただく、実に素敵な美味しさです。

写真・執筆:Aki Shirahama

店舗情報

店名:カフェ・ペドロッキ(Caffe Pedrocchi)
住所:Via VIII Febbraio, 15, 35122 Padova PD,
公式サイト:http://www.caffepedrocchi.it/

※情報は公開時のものです。

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