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まるで本物!キュートでおいしい「フルッタ・マルトラーナ」の秘密
日本のお盆やアイルランドのハロウィンのように、イタリアにも近しい風習があります。そのときに欠かせない「あるもの」とは?
シチリアのお菓子「フルッタ・マルトラーナ」についてご紹介しましょう。
※写真はイメージです。クリエイティブコモンズライセンスに基づき掲載しています。
参考:クリエイティブコモンズ公式サイト(外部サイトに遷移します)
聞きなれない「フルッタ・マルトラーナ」の正体とは?
シチリアを旅すると、街中のお菓子屋さんで色鮮やかなフルーツを売っているのを見かけます。とりわけ、10月~11月になるとあちこちの店頭に艶々としたフルーツが並びます。けれど、何だか様子がおかしいのに気が付くでしょう。
フルーツにしては鮮やか過ぎる色どりで、どれも小ぶりなのです。なぜ、お菓子屋さんでフルーツを売っているのでしょう。その秘密やいかに......。
実はこれら、「フルッタ・マルトラーナ」というシチリア伝統のお菓子なのです。シチリア名産のアーモンドを原料に、砂糖と卵白を使いペースト状にして作るマジパンが、フルッタ・マルトラーナの正体。これを様々なフルーツの形をした木製の型か、手で器用に形を作って色を塗っていきます。
乾いては塗り、乾いては塗り、を繰り返し、まるで本物のフルーツそっくりに仕上げていきます。完成には3日ほどかかるという、なかなか手の込んだお菓子なのです。
フルッタ・マルトラーナは修道院生まれのお菓子
フルッタ・マルトラーナは、元々はシチリアの州都パレルモにあったマルトラーナ修道院のスペシャリティー(現在修道院はなく、教会が残っています)。ヨーロッパの修道院は伝統的に、お菓子や香料、石鹸、リキュールなどを作って売り、生計を立てていました。当然、原材料はその土地のもの。
シチリアではアーモンドが特産のため、アーモンドを原料として作られるこのお菓子が生み出されたのです。なぜフルーツなのかというと、当時は教会にお供えするためだった、と言われています。見栄えも良いし、日持ちもするフルッタ・マルトラーナはお供え物にピッタリでした。
Photo by Allie Caulfield
Photo by Allie Caulfield(CC BY 2.0)
イタリア版「お盆のお菓子」として定着
現在はイタリア中に広がり、季節も関係なく買うことのできるフルッタ・マルトラーナですが、本来は11月2日の「死者の日」に食べるためのお菓子。
「死者の日」とは、ちょうど日本のお盆のような感覚で、亡くなった親族を偲びお墓参りに訪れます。また、子供がいる家庭ではフルッタ・マルトラーナを家のあちこちに隠し、宝探しのような感覚で楽しみます。お菓子を見つけたら、それは亡くなったご先祖様がくれたものだと子供に言い聞かせてきました。
今でも「死者の日」が近くなると、街にフルッタ・マルトラーナが多く見られるのはそのためです。日本の感覚で言えば、落雁(らくがん)などの「お供え用お菓子」と考えると、イメージが伝わりやすいかもしれません。
エリチェのパスティチェリア「マリア・グラマティコ」
シチリアのエリチェという街で入ったパスティチェリア「マリア・グラマティコ」はフルッタ・マルトラーナを始めとするアーモンド菓子の専門店。
エリチェはシチリアの西の果て、海からそそり立つ断崖のてっぺんにできた小さな街ですが、レトロなショーケースに入った「マリア・グラマティコ」の素朴なアーモンド菓子には、イタリア中にファンがいるのだとか。
Photo by Rodrigo Silva
Photo by Rodrigo Silva(CC BY 2.0)
Photo by Fr?d?rique Voisin-Demery
Fr?d?rique Voisin-Demery(CC BY 2.0)
美味しくいただくには:エスプレッソと共に召し上がれ
Photo by cooldudeandy01
Photo by cooldudeandy01(CC BY 2.0)
同じイタリアのフルッタ・マルトラーナでも、アーモンドの産地シチリアのものは一味違います。けれど日本人の口には少々甘すぎるこのお菓子、食べる時のポイントは薄くスライスしてチビチビかじりながら、濃いお茶やエスプレッソと一緒に頂くこと。ポップでカラフル、そしてキュートなフルッタ・マルトラーナはカフェタイムのお供に最適です。
シチリアのお土産に、ひとつ持って帰ってみてはいかがでしょう。
※注:フルッタ・マルトラーナの価格はお店によってまちまちです。イタリアの通販サイトでも300グラムで6.50ユーロ、500グラムで19.0ユーロとなっているなど、分量やブランドによって変化します。
ぜひ、お店を訪ねながら気になる詰め合わせを探してみてください。
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