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まるで絵本の世界?とんがり屋根がひしめく世界遺産「アルベロベッロ」
絵本の中に出てきそうな、かわいらしいお家が連なる町「アルベロベッロ」。イタリア南部に佇む、世界遺産に登録された地域です。
これらは現在も住居やレストランなど、日常の建物として機能しています。
世界遺産に登録された、アルベロベッロの「トゥルッリ」とは
「美しい木」という意味がある世界遺産アルベロベッロ。この町の特徴は、三角の帽子をかぶったような屋根の「トゥルッリ」と呼ばれる家々です。
ここには1,500軒ほどのトゥルッリがひしめき合い、まるでおとぎの国のような町並みが広がっています。
写真:にょきにょきとトンガリ屋根が続きます。
このとんがり屋根の建物「トゥルッリ」は、16世紀半ば頃から存在しています。17世紀前半に入ると製粉所ができ、パン屋や宿屋が作られ、少しずつ町は栄えていきました。
写真:当時はほんとうにおとぎの国のような風景だったのかも......。
とんがり屋根はただの飾り?不思議なカタチに隠された驚きの理由
トゥルッリはなぜ、このような独特のカタチをしているのでしょうか。それは過去の徴税制度と関係しています。
当時、この町の領主は、治めている土地の家屋の数に対してナポリ王国に税金を納めなければならず、重い税制から逃れるために、「壊しやすく再建しやすい」簡素な建物を作るように指定してあったそうです。
写真:日本と比べると洋風なカカシ。これも絵本の中に出てきそう
「トゥルッロ(トゥルッリの単数形)」は「屋根ひとつ部屋ひとつ」という意味。ナポリの徴税官が1664年に執筆した書物に、「徴税を妨害するための家屋解体が行われていた......」という記述を残しています。
写真:かわいらしい形ですが、深い歴史によって生み出された形ともいえます
また、このトゥルッリは、税制逃れ以外の理由でも壊されることがありました。このカタチを利用した「懲罰制度」です。反抗的な農民と戒めるために解体を行うのです。
いくら壊しやすく建てやすいといっても、一から住居を作りなおすのは一苦労。村の統率をとるためにはルールが必要だったのでしょうね。
気になる屋根の模様。その意味は......?
さて、アルベロベッロのトゥルッリを見ているときっとココが気になる人が多いはず...。とんがり屋根に様々なマークが入っているのです。ハートや十字架、中には一見すると何か分からないものもあります。
「IHI」と書かれたものはギリシャ語で「神」を表します。太陽の図柄はキリスト、ハートはキリストやマリアの心臓、三日月に抱かれた十字架は魔除けなど、色々な図柄があります。
写真:この模様も、おとぎ話のイメージをかき立てます
基本的には全て呪術的な意味合いがあり、いわば「おまじない」というところです。積み上げられた石に図柄を書くので、シンボル化されたシンプルな図案のバリエーションが増えたのでしょうね。
ひとつひとつ味わい深く、想いが込められているので、散策の際にはぜひ屋根のマークにも注目してみてくださいね。
写真:この建物に泊まってみませんか?
トゥルッリは住居としてだけ使われているわけではありません。現在では、お土産屋さんやレストラン、ホテルとして営業しているトゥルッリもあるので宿泊も可能。中には屋根の上に上げてくれるお店もあります。
アルベロベッロの町は細い路地が入り組んでいて、その中を歩いていると、本当に現実世界から離れていくような感覚におそわれます。ぜひ、町の奥の方まで探索してみてください。
写真出典:2000ピクセル以上のフリー写真素材集
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