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エーベンアルプ Ebenalp ― みんなで楽しめる東スイスの絶景ハイキングコース
東スイスの内アッペンツェル準州(Appenzell Innerrhoden)にあるエーべンアルプ(Ebenalp)は、ハイキングのメッカのひとつ。海外からの旅行者はもちろん、地元スイス人にも大人気だ。エーベンアルプとは直訳すると「平らなアルプ」(アルプというのはいわゆる山のアルプスのことではなく、夏に家畜を放牧する高原の牧草地・高地牧場のこと)となるが、これは実は地名というか場所の名前。
エーベンアルプはヨーロッパアルプスの一部である東スイス地方のアルプシュタイン山系(Alpstein)で最も人気があるハイキング&トレッキング目的地のひとつで、「エーベン(平らな)」の名前が示す通り、標高1,644メートルにある平らで開けた台地だ。
レベルや目的に合わせて選べる、豊富なハイキングコース
スイスハイキングの魅力とはそもそも何だろうか?きれいな空気、美しい景色、色とりどりの高山植物などはもちろんだが、ハイキング初心者や子供連れの家族から経験豊富なトレッキング上級者まで各自のレベルに合わせて距離や難易度が選べる豊富なハイキング&トレッキングルートも魅力のひとつだろう。
ほとんどの景勝地にはケーブルカーやリフトが整備されているので、初心者や子供連れの方はケーブルカーで往復して山頂付近でのんびりとハイキングやピクニックが楽しめる。そして、同じ場所で上級者の方はケーブルカーを使わずに(もしくは片道だけ使って)本格的な山登りをエンジョイできる。今回ご紹介するエーベンアルプも、みんなが楽しめるハイキング目的地の好例。どのハイキングコースを選んでも、スイスならではの美しい自然や景色を満喫することができる。
エーベンアルプでのハイキングの出発地は、麓のワッサラウエン(Wasserauen)。鉄道駅の向かいにケーブルカーの麓駅があり、このケーブルカーでエーベンアルプまでの高度差723メートルを約6分の乗車時間で昇ることができる(11月までの大人夏期料金:片道20スイスフラン、往復31スイスフラン。半額カードやGA、スイス・トラベル・パス所有者は半額)。
もちろん、ケーブルカーを使わずにワッサラウエンからエーベンアルプまで登るハイキングルートもある(あまり危険ではないが、足場が不安定な個所が多く勾配もかなり急なので、やや健脚家向け)。
エーベンアルプの頂上では、360度の素晴らしい景色を楽しみながらピクニックや簡単なハイキングが楽しめる。ハイキング中級・上級者や健脚家の方には、ここを出発点として周囲のアルプシュタイン山系の岩山をトレッキングしたり、センティス山(Säntis)登頂を目指したり(注:上級者・経験者向け!)と、様々な難易度のハイキング&トレッキングが可能だ。
エーベンアルプはパラグライダー飛行に最適な場所としても知られている。道中では、上空からふわりと降りてくるパラグライダーに何度も遭遇するだろう。
神秘的な洞窟と岩壁からの絶景
ハイキングの合間に是非立ち寄って頂きたいのが、エーベンアルプの山頂駅から徒歩で約15分下った所にあるウィルドキルヒリ(Wildkirchli)という場所。ここには洞窟があり、この洞窟からはホラアナグマの骨や、また紀元前3万年ごろにネアンデルタール人が洞窟を使用していたことを証明する石器などが出土している。
1621年にはここに教会が設けられ、1658年から1853年までは僧侶が隠匿生活をしていたとのこと。隠匿生活者たちは祈りの時間に教会の鐘を鳴らし、また洞窟の中を「たいまつ」を持って登山者を誘導したりもしたのだそうだ。彼ら隠匿生活者たちが暮らした家は1972年に再建され、現在は洞窟からの先史時代の出土品などを展示する小さな博物館になっている。
18世紀の終わりごろからは、隠匿生活者や山岳農夫たちが洞窟近くのアルプ・エッシャーで簡単な食べ物や飲み物などの販売を開始。当初はアルプ小屋での「営業」だったが、これが徐々に本格的になり、19世紀初頭には山小屋レストラン「エッシャー・ウィルドキルヒリ」(Berggasthaus Aescher-Wildkirchli)に発展した。
この山小屋レストランは、スイスで最も古くから存在する山小屋レストランのひとつ。岩壁に貼りつくような特異な立地とそこからの絶景は、数年前に発行された世界的に超有名な某高級月刊誌の特集号で表紙に抜擢され、スイス国内のみならず全世界で有名になった。
山に登らなくても楽しめる!
山登りにはあまり興味がないけど、簡単なハイキングをしながら周囲のきれいな景色を楽しみたい...という方には、ワッサラウエンからゼーアルプ湖(Seealpsee)という湖を訪問する周遊ハイキングコース(約7キロメートル、初心者向け)もお勧めだ。湖までの道のりはなだらかで整備も行き届いているので、小さな子供連れのご家族にも安心。湖畔のレストランで休憩したり、草を食む牛を眺めたり、楽しみ方は色々。ちょっと登って、青く美しいゼーアルプ湖を上から眺めてみるのもいい。
チューリッヒ方面からワッサラウエンへのアクセス:
スイス鉄道SBBのIC(インターシティ)かIR(インターレギオ)のザンクト・ガレン(St. Gallen)行きに乗って、ゴッサウ(Gossau SG)で下車。下車後同駅でアッペンツェル鉄道に乗り換え、終点駅で下車。チューリッヒからゴッサウまでは片道約1時間、ゴッサウからワッサラウエンまでは片道約50分。
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Asami AMMANN-HONDA
- スイス東部トゥールガウ州の農村在住。元書店員、現在は兼業主婦(介護補助士&日本語教師&日独英通訳)。趣味はスポーツ・園芸・料理、専門は音響映像技術。