公開日:
最終更新日:
スイスで愛される物語「ウルスリのすず」
「アルプスの少女ハイジ」のお話はスイスを代表する物語として大変有名だが、スイスには実はこの「ハイジ」と同じぐらい愛されているお話がもう一つある。それが、今回の記事タイトルに挙げた「ウルスリのすず」だ。
名前はあまり耳慣れないかもしれないが、「ウルスリのすず」はスイスのみならず世界的に著名なお話。アロイス・カリジェAlois Carigietによる美しい絵本の挿絵を見れば、「あ、これ知ってる!」と思われる方も多いのではないだろうか。私自身はるか昔(多分幼稚園時代)に、これがスイスのお話だと特別に意識することなく絵本を読んだ記憶がうっすらとある。
(写真は数年前に蚤の市で購入した手のひらサイズの「ウルスリのすず」絵本)
お話の内容についてはネタバレになるのであまり触れないが、日本語タイトルにある「すず」というのはいわゆる日本人が想像するところの鈴ではなく、放牧されているヤギなどが付けるごくごく小さいベル(風鈴のようなチリンチリンという音がする)を指す。
原題はシェレン・ウルスリSchellen-Ursliという名前で、物語の舞台はスイスのグラウビュンデン州(エンガディン地方)にあるグアルダGuardaという小村。そこで毎年3月1日に行われる地方独特の春迎えのお祭り「チャランダマルツChalandamarz」が題材になっている。
チャランダマルツのお祭りでは、子供達のグループが様々な大きさのカウベルを持ち、大きな音でカウベルを鳴らしながら村を行進するのが慣わし。カウベルの音で冬を追い払い、春を迎え招くという訳だ。こちらの写真は、グアルダの隣村・アルデツArdezで行われているチャランダマルツの様子。
子供達にとっては、その時に持つカウベルの大きさはとても重要だ。大きくて立派であれば誇らしいし、例えば小学校の高学年になっても小さいベル=鈴しか持たせてもらえないのは恥ずかしいのだ。
絵本に描かれている家などはかなりメルヘンチックな印象を受けるが、これは全くもって事実通り。その証拠に、こちらの写真はグアルダに実際にある石造りの伝統家屋。
上部が丸い木の入口扉や奥行きが深い小窓、そしてスグラフィトSgraffitoと呼ばれる漆喰画の装飾が特徴的だ。
そして先日、この「ウルスリのすず」が実写映画化された。映画監督はアカデミー賞の受賞経験もあるスイス人映画監督のクサヴィエ・コラーXavier Koller。スイス以外ではまだ公開されていないが、スイス国内では公開されるや否や記録的な大ヒットになっている。
(映画館の前に貼られたポスターより)
そして何と、「ウルスリのすず」公開の数週間後には新しい「アルプスの少女ハイジ」の映画も公開され、こちらもまたまた大ヒット中。日本でこれらが公開されるかどうかはまだ分からないが、公開となった時にはぜひ見てみて頂きたい。
「スイス」に興味わいてきた?あなたにおすすめの『スイス』旅行はこちら
※外部サイトに遷移しますRelated postこの記事に関連する記事
Rankingスイス記事ランキング
-
Asami AMMANN-HONDA
- スイス東部トゥールガウ州の農村在住。元書店員、現在は兼業主婦(介護補助士&日本語教師&日独英通訳)。趣味はスポーツ・園芸・料理、専門は音響映像技術。