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日本ではあまり知られていないスペインのおいしい郷土料理
日本ではもう何年も前からスペイン料理がブームですね。東京に帰ると、あちこちでスペインバルを見かけますが、どこもオシャレな雰囲気で料理も洗練されていて、正直スペインバルという気がしません(^^;)その傾向はスペインにもあり、ひと昔前に比べオシャレなバルやレストラン、カフェが急増。料理も、美しく盛り付けられたモダン・スパニッシュが注目を浴びています。
それでもやっぱり昔ながらの見た目を気にせずドカーンと出てくる、悪く言えば洗練されていないスペイン料理を口にすると、「うーん、おいしい! これぞスペイン料理!」としみじみ思います。
今日は、日本ではあまり知られていないスペインのおいしい郷土料理をご紹介します。
目次
ミガス
ミガスはスペイン語でパンくずの意味。スペイン中央部、西部の羊飼いたちが硬くなったパンを使って屋外で作って食べた料理だと言われています。
カチカチのパンをちぎって水でふやかした後、にんにくと塩、オリーブオイル、少々の具(お好みでチョリソ、玉ねぎ、ピーマンなど地域によって具も変わります)と一緒にカリッと香ばしくなるまでひたすら炒めてできあがり。ちょっと油っぽいからか、ブドウやメロンなどを添えて食べることが多いです。
<アラゴン州の小さな町で食べたミガス。目玉焼きがのって、ブドウが添えてありました>
<大勢で集まって野外ミガスをした時のもの。チョリソとニョラ(乾燥パプリカ)入り>
モルテルエロ
スペイン歴19年、在住歴13年にしてつい最近まで存在すら知りませんでした。モルテルエロは、ラ・マンチャ地方、特にクエンカ周辺で食べられる豚肉とレバー、ジビエ、パン粉、にんにくの煮込みをつぶしてペースト状にした料理です。呼び名こそ違ったものの、なんと11世紀の文献にも登場しているのだとか。重ための料理なので量は食べられませんが、赤ワインと一緒に頂くのにピッタリのお味でした。
アロス・アル・オルノ
パエージャ(パエリア)の本場バレンシアの、特に南部内陸方面でよく食べるお米料理で、素焼きの土鍋を使ってオーブンで炊き上げます。
もともとは、コシード(肉類、腸詰、ひよこ豆、野菜の煮込み)で余った具やスープを使ったそうです。ちょっとお行儀が悪いけれど、トマトや、にんにく、モルシージャ(血のソーセージ)、豚の脂といった具をグチャグチャにつぶしてご飯に混ぜると美味。豚の脂がたっぷりでカロリーの高い一品ですが、一度は食べたい郷土料理です。
ガスパチョ・マンチェゴ
ガスパチョというと南部アンダルシア地方発祥の夏場においしいトマトの冷たいスープを想像しますが、同じガスパチョでもラ・マンチャ地方ではまったく違った料理のこと(ガスパチョ・アンダルスとガスパチョ・マンチェゴと区別します)。
鶏肉やうさぎ肉、ジビエ、作り手によってはカタツムリやキノコをにんにくとハーブで炒め、そこに水分を加えてスープを作り、トルタと呼ばれるクラッカーを細かく割り入れて煮込みます。このトルタが水分を吸いパスタのようになり、またスープにとろみをつけるのです。出来上がったら、お皿のように丸いトルタの上に乗せて「いただきまーす!」 アンダルシアのガスパチョが夏の料理なら、こちらは冬用。ボリュームもあるし、体も温まります。寒さの厳しいラ・マンチャ地方ならではですね。
<このレストランには珍しい魚介のガスパチョ・マンチェゴもありました>
ご紹介したのは私の普段の狭い行動範囲内で食べられる、日本ではあまり知られてない郷土料理です。広いスペインにはまだまだ食べたことがないおいしい物があるのだと思うと、わくわくする食いしん坊のワタクシです。
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田川敬子(Keiko Tagawa)
- 1996年スペインにひとめぼれ。以後何度も渡西し、2002年春に夢がかなってスペインで日系企業に就職。その後現地企業を経て、現在はオリーブオイルソムリエ/テイスターやライターとして活動中。