中国・北京で二重国籍が意味するところ
記事投稿日:2015/04/06最終更新日:2018/02/16
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ここ最近も中国人妊婦の米国出産ツアー関連ニュースで再び人々の耳目を集めている、中国における二重国籍取得問題。中国はもともと二重国籍を認めていない国なので普通の中国人は中国籍しか持っていないのですが、米国など出生地主義の国で生まれた中国人の子供は他国の国籍の取得が可能だったりします。そのような二重国籍を持つ中国人の子弟は将来米国に移住する際に中国籍しか持たない両親を一緒に連れて行ける等の機会に恵まれるため、その手の二重国籍には一種の投資また時にステータス的な意味があるわけです。
一方で中国人と結婚したわたしのような日本人の子供は、生まれる時点で三つの選択肢のうちの一つを選ばなければなりません。つまり日本で生まれて日本人になるか、中国で生まれてから日本でも出生届をして二重国籍を持つか、あるいは中国で生まれてから日本で出生届をせず中国人になるかのいずれかです。この場合の二重国籍は投資でもステータスでもなんでもないのですが、もし二重国籍であれば中国公民でもあるわけなので中国での各種手続がより簡便ですし、日本国籍も持っているため日本への帰省がよりスムーズかつリーズナブルです。
たとえば中国・北京で生まれた日本と中国の二重国籍を持つ子供が日本に帰省する場合、二つの方法があります。一つの方法は北京市公安局出入境管理処で「通行証」(有効期限3ヶ月)を発行してもらい、日本旅券(パスポート)とこの通行証で帰国するというもの。もう一つは中国旅券(パスポート)および日本の戸籍謄本を提出し「日本人の子供という査証」(つまり特殊ビザ)を取得(有効期限最長3ヶ月)するというものです。
わたしたちは中国が生活の拠点となっているため2番目の方法を採用したのですが、子供の日本旅券取得のための費用が合計8500円程度であるのに対し中国旅券(5年有効)取得のための費用は合計300人民元以内(約4500円)とよりリーズナブルでした。
(中国の出生証があれば中国旅券を日本旅券よりリーズナブルに取得可能)
査証つまりビザの取得も、二重国籍の子供の場合は戸籍謄本一通でスムーズに済みます。一方で中国人の妻はの場合はそうもいきません... 中国はご存知の通り欧米とは異なる政治的経済的政策のゆえに、一般人の出入国をビザという制度により管理しています。つまり中国公民はおしなべて出入国にパスポート+αの費用と手間とがかかってしまうのです...
たとえば中国人であるわたしの妻が日本に行こうとする場合、居住証を取得して1年未満のわたしが夫として直接連れ帰るわけにはいかないため、日本にいるわたしの父親に招聘人また保証人となってもらいビザを申請します。結果としてわたしの妻である旨の記載がある戸籍謄本(取得後3ヶ月間のみ有効)以外に、わたしの父親の保証人としての在職証明書(または退職している旨を記した様式任意の理由書)や総所得記載書類(課税証明書・納税証明書・確定申告書のいずれか)等各種書類が必要です...
(中国人のビザの取得には招聘人また保証人関連の各種書類が必要)
本当は妻の田舎の青島で妻のビザを取得する予定だったのですが、大使館指定の旅行社側によれば別途さらに公証人による証書が必要(!)とのことで思い直し北京の日本大使館まで出向きました。
(いつもお世話になっている北京の日本大使館)
最初に二重国籍を持つ子供の特殊ビザを、大使館で直接入手します。所要時間1時間弱のスピード発行で、3年間有効のマルチビザにかかった費用は400人民元(約6000円)。もし1次ビザ(1回のみ有効)であれば200人民元で済みます。
(二重国籍を持つ子供の特殊ビザ)
その後に大使館の隣にある大使館指定の民間代理機関を通して妻のビザの手続をしたのですが、手続が終了してビザが張られたパスポートが郵送され手元に戻ってくるのは2週間後と相場が決まっています... 種別は1次ビザのみで費用は400人民元少し...で領収書を見るとビザ本体は200人民元なので代理機関の手数料が全体の半分を占めているんですね... もっとも青島の日本大使館指定の旅行社は「600人民元かかります」と言っていました...
そんなわけで日本人と中国人との間に生まれた二重国籍を持つ子供は、中国のパスポートとビザで日本に帰省する場合でも普通の中国人に比べれば格段に優遇されています。中国で生活しながらも今回のように家族揃っての帰省や将来的に日本にいる年老いた両親の世話のための帰国の可能性等を考えると、子供の二重国籍取得はだんぜん有利です。
- この記事を書いた人
ぺきんせいかつ - IT屋として中国・北京に長期出張中。結果、ライター業や現地コーディネーター業がいつの間にか生業に。現地にいないと分からない中国人視点から見た中国の真相を、日本の皆さんにお届け中。
記事投稿日:2015/04/06最終更新日:2018/02/16
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