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東京/日本橋を川から見上げる船の旅
東海道五十三次の始点であり、パリ、ロンドンより巨大都市だった江戸の中心地、日本橋。
この橋のたもとから運航するクルーズに乗船しました。
「日本橋クルーズ」は日本橋川などの運河を通って、隅田川・東京湾をめぐるクルーズ。45分と60分の2コースが定期運航されていますが、今回は60分コースを体験しました。
日本橋のたもと、日本橋川に設けられた桟橋。コレド日本橋や日本橋三越本店など商業施設も近いので、乗船前後の買い物や食事にも便利な場所。桟橋の向かいには、社会実験のため、川にせり出すテラスを備えることを許されたレストラン「豊年萬福」もあります。
クルーズ最大の見せ場は冒頭に用意。桟橋を離岸したボートはまず日本橋をくぐります。
橋の上にいる観光客の視線を浴び、水面から日本一有名な橋を見上げる。優越感とともに、特別な体験をしている高揚感にいきなり包まれました。
日本橋をくぐるボート。冬はトイレを備えた屋根付きタイプも運行。ボートの前後には撮影に適したデッキ席もあり、ひざ掛けのブランケットを貸してくれます。
クルーズ中、終始、船長さんが橋の歴史や船上から見えるスポットの解説をしてくれます。軽妙なトークは興味深く、江戸時代と現代を行き来するトリップ感を味わえます。
たとえば日本橋では、橋を護る獅子像が片側に16体(獅子4×4)、両側(左右)で合わせて32体(橋8×4)あるそう。
橋の北詰と南詰の欄干端部に両側1体ずつ、計4体の獅子像が鎮座。
この4体は容易に確認できるのですが、残りの28体は目を凝らして探す必要があります。そうしても、最後の4体だけはなかなか見つけることができません。
この4体、実は橋の側面に隠れていて、ボートからは正面で間近に見ることができます。
水上の視点ならではの嬉しい発見でしょう。
<ボートから見上げる日本橋。橋の側面、アーチ中央に「隠れ獅子?」が彫られています>
日本橋をくぐると、橋の裏側を見ることができます。裏側には石が崩れている箇所があるのですが、それは関東大震災の爪痕。
あえてそのまま残しているのだとか。江戸のシンボルだった橋を襲った震災。その激しさを船上から肌で感じることができました。
<関東大震災の痕跡が橋の下に隠れています>
かつて魚河岸があった日本橋。大川こと隅田川から食料品などの物資を運びこむため、江戸時代に徳川家康は周辺を流れる河川を整備させ、運河がめぐらされました。その運河のひとつが日本橋川。下流域には食料品関連の会社社屋が並んでいます。
江戸の息吹が今も残ることを感じました。
日本橋川はやがて日本橋をふくめた6つの橋をくぐって隅田川の河口に出ます。河口は淡水と東京湾の海水が入り混じるエリア。
その河口とつながる日本橋川もまた海の影響を受けています。
たとえば、川にはユリカモメやセグロカモメなどの水鳥が羽を休めて浮かび、川に敷設された首都高速の柱にはフジツボが付着。
川の水位も満潮時には2mほど上昇。そのため、日本橋川は亀島川という浅い運河と交差しますが、水面と橋までが近い小さな運河のため、屋根付きボートは運航できません。
また、屋根なしボートでも、満潮時には船長判断でこの運河には入らないとのことです。
<日本橋川から亀島川へ抜ける水門>
<亀島川には江戸時代と同じく葦(あし)が茂り、情緒漂います>
狭い運河を抜け隅田川、東京湾へと進むと、空が高く視界が広がり、開放感に包まれます。運河と大きな川、さらには海との風景のコントラストが日本橋クルーズの大きな魅力です。
東京湾から隅田川の水域まで戻るとき、この広がりある風景に2020年のオリンピック、パラリンピックで選手村が設けられ、多くの競技場が設けられる。その未来像を想像してワクワクしました。
水上から今はまだ広漠とした埋め立て地を眺めていると世界中から人が集まり、多くの巨大建築物が建つシーンが目に浮かんできます。
同時に、自分の人生で体験したことのない、大きなイベントにおいて水上ルートの交通手段も重要視されていくだろうと実感したのでした。
<佃島、月島、勝どきの朝潮運河を抜けると、東京湾のパノラマ風景が視界を占めます>
東京湾から隅田川に戻る海と川の境界に架かる未開通の環状第2号線・築地大橋は豊洲市場へと続く。東京オリンピックでは晴海の選手村と各競技会場を結ぶ重要な橋となります。
というわけで、東京の旬の情報を拾い上げていきたいと思います。
*日本橋クルーズ(運営/株式会社 東京湾クルージング)
http://www.ss3.jp/nihonbashi-cruise/
(記者/ ヤスヒロ・ワールド)
※この記事の情報は2017年3月当時のものです。最新情報は公式サイトなどでご確認ください。
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ヤスヒロ・ワールド
- 東京佃島生まれ育ちの江戸っ子。旅行ガイドの編集者。
フェイクは苦手ですが、ケイク(ケーキ)は大好物。