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美食の街リスボンの新店と今をつくる人たち|ポルトガル

ポルトガルの首都、リスボン。海のすぐそばにあるこの街には海鮮料理が多く、日本人にとっても親しみやすい味が揃っています。リスボンにやってきた私も例に漏れず「伝統料理を堪能するぞ!」なんて意気込んでお店を探していました。
けれどいざ街を歩いてみると目に留まるのは、驚くほど洗練されたレストランやカフェの数々。古い建物をモダンに改築し、独自の発想を注ぎ込んだ姿は、想像していたよりもずっと軽やかで、トレンド感にあふれていました。
今回はそんなリスボンの「今」を体現する、最近オープンしたばかりのお店を紹介。
自分たちの根っこを大切にしながらも、新しい風を面白がるリスボンの人たちのスタンスも、同時に紐解いてみたいと思います。
目次
ガレージから始まったベーカリーカフェ
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<朝のリスボン>
旅のなかでもっとも好きなひとときは、朝の澄んだ空気を感じながら散歩をすることです。私がリスボンを訪れたのは、春の初め。日が昇ってすぐの街は空気が冷たく、日差しも穏やか。
この街の大部分は丘陵地で、道路は心臓破りレベルの急坂ばかり。日中に歩き回るのは体力勝負という街でも、朝の爽やかな時間帯ならせっせと歩いても汗ひとつかかないのが良いところです。
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<カフェ「doBeco」の外観>
少しお散歩するだけで「朝から良い運動をした」という気になったので、ベーカリーカフェ「doBeco」で朝食を取ることにしました。
扉を開けると、そこには自然光が優しく注ぐクリーンな空間が広がっていました。漂うエスプレッソの香り、カウンターにはおいしそうなペストリー。清々しい朝にぴったりで、これだけで良い1日が始まる予感がします。
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<「doBeco」の店内>
天井に走るむき出しの配管や赤レンガのアーチが今のリスボンらしさと言えるかもしれません。この街では今、古い倉庫や工場をギャラリーやカフェに再生させるという動きがひとつの潮流になっているのだそう。
あえて工業的な過去のデザインを残しながら、都会的に仕上げる。街を歩いていると、そんなリノベーションされた店舗をいくつも見かけます。
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<さまざまなペストリーやプレートがいただけます>
このお店は、ポルトガル人オーナーのアントニオさんがパンデミック中に自宅のガレージでパン作りを始めたのがきっかけなのだとか。IT業界から転身し、独学でパン作りを学んだというから驚きです。
テーブルはバスルームのようなミントグリーンのタイル張り。レトロな色合いで、手仕事の温もりが伝わってきます。かつてガレージでパンを売っていたという、アントニオさんの飾らない美学が反映されているのかもしれません。おしゃれな空間ながら、とても居心地が良かったです。
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<手前からオニオンロール、ピスタチオクロワッサン、チョコデニッシュ>
注文したペストリーはどれもすごくおいしかったです。なかでも印象に残ったのは「オニオンロール」。
日本でもカルダモンロールを筆頭に、生地にスパイスや具材を練り込んでねじるタイプは近年のトレンド。パン屋さん巡りが好きな人なら、きっとピンとくるはずです。
「doBeco」で出会ったこれは、まさにその進化系と言えるかもしれません。
醤油でキャラメリゼした玉ねぎを生地に練り込み、仕上げには蜂蜜、オイスターソース、そしてチャイブ。甘塩っぱさがまるで日本のお食事系パンのようで、どこか馴染み深いものを感じました。
「旨味のあるパンって、ヨーロッパでは珍しいかも」そんな疑問が浮かび、このお店のことを少し調べてみました。
公式サイトを覗いてみると、経営規模を広げるタイミングでブラジル人パティシエのディエゴさんが合流したのだとか。
彼はフランスやアメリカの製菓にも精通しているらしく、多国籍な技法で遊び心の効いたメニュー開発をしているようです。
doBeco
- 所在地:R. de São João da Mata 18, 1200-849 Lisboa, ポルトガル
- 電話:+351938225291
- 営業時間:8:00〜18:00
- 定休日:無し
- 公式サイト:doBeco
街をアップデートする、クリエイティブな移民たち
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<リスボンの街>
ここ数年、ポルトガルはITやデザインといった専門職の移住を優先的に受け入れてきました。その結果、他国でセンスを磨いたクリエイターたちがリスボンに流れ込み、感度の高いお店が次々と生まれている。そんなポジティブな変化を感じます。
移民のなかでも、3割ほどを占めるのがブラジル人です。母国語が同じポルトガル語ということもあって、彼らは街の風景にすっかり溶け込んでいるよう。ショップやレストランで出会う彼らは、いつも人懐っこい笑顔で話しかけてくれて、何気ないおしゃべりが私の旅を彩ってくれていました。
海鮮ブリオッシュサンドが絶品のバルへ
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<バル「Pinch Seafood Bar」の外観>
ベーカリーカフェ「doBeco」のように、ポルトガルの伝統に自由で活気あふれるエッセンスを加えたお店は数多くあります。そのひとつが「Pinch Seafood Bar」。
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<手前から、マグロタルタルのブリオッシュ、タコロール>
ここで食べた「マグロタルタルのブリオッシュ」が最高でした。ポン酢漬けのマグロにチャイブを散らした、ちょっぴり日本を思い出す味。そこに別添えのトマトのサルサをかけると、一気に異国感が立ち上がります。
ブリオッシュはほんのり甘く、外側はオリーブオイルでカリッと揚げ焼き。マグロは中トロのような脂と口溶けで、満足度の高い一品でした。
ブラジル人のバーテンダーとの会話も、このひとときをより豊かなものにしてくれました。
日本やブラジル、そしてポルトガルの魅力について話すなか、彼が「リスボンではここが絶品だよ」と一軒のレストランを紹介してくれたのです。
写真を確認すると、なんとそこは私が明日の夜に予約しているお店。「彼が推すなら、私の審美眼も間違っていなかったかな」なんて、つい自惚れてしまう瞬間でした。
Pinch Seafood Bar
- 所在地:R. Andrade Corvo 27D, 1050-008 Lisboa, ポルトガル
- 電話:+351938672809
- 営業時間:12:00〜0:00(金・土曜 12:00〜2:00)
- 定休日:月・火曜
イタリアの技法でポルトガル食材をアップデートするレストラン
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<夜のリスボン>
期待を胸に、予約していた「Bar Alimentar(バル・アリメンタール)」へと足を運びました。この日はリスボンで過ごす、最後の夜です。
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<人気の一皿、タコのフレゴラとサフランアイオリソース>
ここはイタリアで8年間の修業を積んだポルトガル人シェフが手がけるお店。掲げているコンセプトは「ポルトガルの食材にイタリアの感性を適用すること」だそう。
伝統的な調理法に縛られず、イタリアの技術を掛け合わせた料理は、まさに今のリスボン・ガストロノミーを体現していると感じました。
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<ポルトガルの地魚を、イタリアの技法「クルード」で>
『ポルトガル人は、素材そのものの力を強く信じている』この旅の間、何度か耳にした言葉です。
新鮮な魚介や香り豊かなオリーブオイルなど、素材への敬意は保守的ともいえるほど強いと感じます。
しかし、調理法に関しては寛容なのではないでしょうか。ポルトガルには大航海時代から、ブラジルやアフリカ、インドなどの要素を柔軟に取り込んできたハイブリッドな性質があります。
日本の天ぷらのルーツがポルトガルにあるという話も、彼らが新しい調理法を各地へ運び、また受け入れてきた歴史の象徴といえるかもしれません。
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<ポルトガルで定番のバカリャオ(塩漬け干し鱈)が入ったカンノーリ>
どの料理も絶品でしたが、とりわけ衝撃を受けたのが「バカリャオのカンノーリ」でした。
カンノーリといえば、甘いクリームが詰まったシチリア生まれの伝統菓子。通常はデザートとして親しまれているものです。
ところが目の前に運ばれてきたのは、遊び心あふれる"お食事系"。パリッと香ばしい生地の中には、ホイップされた滑らかなクリームとともに、ほろほろとほぐれるバカリャオ(塩漬け干し鱈)が潜んでいました。
見た目はお菓子なのに、一口かじれば広がるのは、凝縮された魚の旨み。そこにピスタチオの香りが重なり、その意外性と完成度の高さに思わず言葉を失いました。
食べ進めるうちに「ああ、終わってしまう......」と名残惜しくなるほど。ポルトガルのソウルフードがイタリアの装いをまとった、最高の一皿でした。
Bar Alimentar
- 所在地:R. Nova da Piedade 62, 1200-299 Lisboa, ポルトガル
- 電話:+351927932885
- 営業時間:18:00〜0:00
- 定休日:日・月曜
最後に
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<リスボンの街>
坂道を登り、タイル張りの家が並ぶ路地を抜け、黄色の路面電車とすれ違う。リスボンの街を歩いていて最初に感じるのは「歴史の深さ」です。
けれど一歩踏み入ってみると、そこには古い建物を改築したアートセンスの光るカフェや、異国のエッセンスを加えたレストランが数多く立ち並んでいました。
そこにはポルトガルの人々の、地元を守る気持ちと、時代をアップデートしていく軽やかさが反映されている気がします。
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<ポルトガルの家庭料理>
ある日、ポルトガルの方のお家でディナーをいただいたときのこと。
「私たちにとって食事は、ただ食べるだけのことじゃないの。テーブルを囲む人たちがどんな道を歩んできたか、そして今、目の前にある一皿がどんな物語を持っているのか。それを分かち合うことが、ポルトガルの文化なの」
そんなことを、まるで宝物の話をするように教えてくれました。彼らに根付くその信念こそが、この街の"おいしい"を支えている。
伝統を愛し、同時に変化も楽しむ。その絶妙なバランスこそが、私がこの旅で出会った、今のリスボンの姿なのだと思います。
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maryo
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