アルジェリア紀行 ムザブの谷に迫る!

「能ある鷹は爪を隠す」という諺があるが、「女性たちはその美しさを隠す」というのはイスラム教の大きな特徴のひとつだろう。

髪を隠し、肌を隠し、さらに既婚者は片目を隠し(すごく歩きにくそう!)、白装束"ハイク"に身を包んでひっそりと暮らす女性たちがいる。

それが、ムザブの谷だ。

科学やインターネットの発達した現代において一体彼らはどのように暮らしを営んでいるのか。アーミッシュのごとく電化製品を完全に拒否した畑作か、はたまたマサイ族のごとくスマホを使いこなして牧畜をしているのか?

実際に訪れる機会に恵まれた今回は、ムザブの谷のリアルな様子や、現地で得た感想を書いてみよう。

目次

ムザブの谷とは?


「イスラム教の清教徒」と呼ばれるイスラム教イバード派の人々が、迫害から逃れてたどり着いた涸れ谷に、井戸を掘って築いたオアシス。厳しい戒律と伝統を守りながら密やかに暮らす5つ(現在は7つ)の村の総称、ムザブの谷。谷とは言うが、標高300〜800mの岩だらけの丘の上である。ムザブとは水路の意味で、その巧みな灌漑設備に因む。
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世界的建築家ル・コルビジェにも影響を与えた、箱型(キューブ型)の建物が建ち並ぶキュビズムの街並みは実に圧巻だ。

なぜ箱型の建物が多いのかについては、サハラの北縁に位置するムザブにおいて
(1)暑く乾燥した砂漠気候に適応するべく、厚い壁と小さな窓で日差しを遮って室内温度を安定させるため
(2)直線的な構造で日干しレンガを用いて作りやすいため。また屋上は夜に涼んだりする生活空間として利用するため
など様々な理由がある。

隣国との比較


パッと見が少し似ている、両隣の国の街と比べてみよう。

【1】モロッコ/アイトベンハッドゥとの比較
イスラム王朝が長く繁栄し職人文化が保護されていたことから、賑々しい装飾を持つリヤド等が多いモロッコ。元は要塞だった茶色い街という点では共通点があるが、アイトベンハッドゥの土は赤茶色で、様々な映画のロケ地にもなった観光地の雰囲気がある。
一方でムザブの土は白っぽいし、イスラムの教義による秩序が感じられる街並みだ。"ハイク"にすっぽり身を包んだ女性たちは写真に映り込みそうになるとサッと隠れ、買い物袋を提げて足早に通り過ぎる。実際の生活の様子が感じ取れるのだ。

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【2】チュニジア/マトマタと、ムザブの谷
ベルベル人がアラブ人等から身を隠すために掘ったマトマタの穴倉住居は、漆喰により通年心地よい室内環境が保たれる。蟻塚のようにぽこぽこと沢山の部屋があるので、1つ1つの部屋は狭く天井が低い。
ムザブでは、家々は互いを支え合うようにひしめき合う。平等思想により1つの家に柱は4本までと決まっているため、言わばゲルのような内部に仕切りのない広々とした空間になっている。

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暮らしぶりは?


ムザブ人がかつて何十年もかけて掘った数々の井戸は現在は既に使われておらず、水道が通っている。村には電線が張り巡らされ、冷蔵庫やテレビもある、結構今風の暮らしぶりのようだ。

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彼らがどうやって生活の糧を得ているのかというと、男性たちの多くは出稼ぎに出たり、村内で豊富に採れるデーツを売ったりしているとのこと。ムザブ人は商売上手としても知られているのである。

市場へ行ってみよう


近世(18世紀以降)のムザブは、サハラを行き来するキャラバンの中継地として重要な役割を果たしていた。そんな、商業都市としての側面も感じられるのが、ムザブの谷で最も大きなガルダイアの市場だ。

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かつてラクダのキャラバンたちが運んだ積荷は、ひとつぶで1日分の栄養を得られるデーツ(ナツメヤシ)の実や、塩、象牙、銃などの武器。

現代の観光客の私たちの目に入るのは、何種類ものデーツ、色とりどりの民族衣装や瑞々しい果実、デーツの葉で編まれた籠バッグ、シロップやハーブティー、民芸品、その他色々。
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ジェスチャーと電卓とGoogle翻訳でなんとか食べ方と値段を突き止めて支払う。お釣りを両替しに店員さんが消えてしまうのは日常茶飯事。試食したデーツの種は、ゴミ箱が無いのでその辺にポイ捨て(ちなみに住民たちが食べるデーツの種は取っておいて、すり潰してヤギに与えるらしい)。サッカーの試合が始まる時間になると、そそくさと店仕舞いが始まる。

異国情緒に溢れた市場での買い物は、人情味に富んでいて、やはりスーパーには無い面白みがあると改めて感じたのだった。

最後に


ムザブを訪れる人々の交通手段はラクダから自動車へ、そして飛行機へと少しずつアクセスしやすくなっている。世界遺産にも登録され、徐々にその謎めいた魅力に惹かれて訪れる観光客も増えて来ている。
しかし今回の旅では、想像していた以上に、まだまだ良い意味で観光地化されていない、素朴な雰囲気に触れることが出来た。もっと観光客は敬遠されると思っていたが、子供達は興味津々で私たちを見て手を振ってきたし、「オハヨウ」と話しかけてくる人もいた。

ムザブ、情熱と悠久の大地。長い歴史の中で育まれた、太陽に愛される街並みと風景は、どこか懐かしく、私たち旅人の心を震わせてくれる。

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