クリシュナ寺院で思う「日本人の宗教観とは」|インド

インドを旅していると、驚くほど多くの場所でクリシュナ神の姿を目にしませんか?

寺院だけでなく、街角のポスターや家庭の祭壇、さらには歌やダンスのモチーフとしても登場し、人々の生活に深く溶け込んでいます。

その親しまれ方は、日本で言うところの「推し」に近い感覚ともいえるでしょう。絶対的な存在でありながら、どこか身近で、物語性があり、感情移入しやすい点が特徴です。

今回はクリシュナという神の魅力を軸に、なぜこれほどまでに多くの寺院が建てられ、人々に愛され続けているのか考察します。

※あくまで筆者の個人的な感想です。団体の趣旨などは含まれていません。

 目次

クリシュナとは何か?その魅力を探る

クリシュナとは何か?その魅力が芸術で表されている

クリシュナはヒンドゥー教の中でも特に人気の高い神様の一人で、最高神ヴィシュヌの化身とされています。ただし、難解で近寄りがたい存在というより、親しみやすさが際立つ点が大きな特徴です。

笛を吹きながら人々や牛を導く牧童の姿や、悪を倒す勇敢な英雄、恋多き青年としての一面など、多彩な物語が語り継がれています。こうしたエピソードは叙事詩や聖典だけでなく、演劇や音楽、映画にも取り入れられ、世代を超えて共有されています。

そのため、信仰という枠を超え、キャラクターとして心をつかまれる人も少なくありません。日本人がアニメやアイドルに親近感を抱く感覚と重なる部分があり、「崇拝」と「応援」が自然に共存している点が、クリシュナの魅力といえるでしょう。

インドのクリシュナ寺院とその文化的背景

インド各地にクリシュナ寺院が多く存在する背景には、地域ごとに異なる物語と信仰の広がりがあります。北インドでは生誕地とされるマトゥラや、少年時代を過ごしたと伝えられるヴリンダーヴァンが特に有名です。

一方、南インドでも王朝の庇護を受けながら寺院文化が発展し、現在まで大切に守られてきました。寺院は単なる礼拝の場ではなく、祭りや音楽、舞踊が行われる地域コミュニティの中心でもあります。

年に一度の大祭では、神像が街を巡り、多くの人が集まって祝います。こうした文化的役割があるからこそ、寺院は増え続け、人々の生活と切り離せない存在になりました。信仰と日常が自然につながっている点が、インドらしい特徴ですね。

クリシュナ神の信仰とご利益について

クリシュナ信仰でよく語られるのが、愛と献身の象徴とされるラーダーとの関係です。ラーダーはクリシュナの最愛の存在とされ、二人の物語は「無条件の愛」や「魂の結びつき」を表すものとして大切にされています。

このため、クリシュナ寺院では恋愛成就や夫婦円満を願う参拝者の姿も多く見られます。また、人生の選択に迷ったときの導きや、心の平安を求めて祈る人も少なくありません。

善悪の葛藤に向き合いながら人として成長する姿が物語に描かれているため、自分自身を重ねやすい点も信仰が広がる理由でしょう。厳格な戒律よりも、心の在り方を重視する姿勢は、日本人にも理解しやすく、共感を呼びやすい信仰といえます。

クリシュナ寺院での体験はプライスレス

クリシュナ寺院の中の様子

クリシュナ寺院は、参拝するだけの場所ではなく、信仰が日常に溶け込んでいることを体感できる空間です。祈りや歌、食事、奉仕といった行為が自然につながり、初めて訪れる人でも温かく迎え入れられます。

ここでは、実際に筆者が足を運んで感じたISKCON寺院(クリシュナ意識国際協会の寺院)での体験と、インド各地に広がるクリシュナ寺院の多様な姿について紹介します。観光では見えない、信仰のリアルな一面を知るきっかけになるでしょう。

ISKCON(クリシュナ意識国際協会)寺院にいってみた

ISKCON寺院を訪れてまず印象に残るのは、参拝者や運営スタッフがとても親切で、訪問者を「お客さん」としてではなく仲間のように迎えてくれる点です。寺院内では掃除や配膳、案内などを自発的に行う人の姿が多く見られますが、これらはすべて「セワ」と呼ばれる行為です。

サンスクリット語の「セワ」とは、神や人に仕える・奉仕することを意味し、「お世話する」という言葉の語源ともいわれています。信仰とは特別な修行ではなく、誰かの役に立つ行動そのものだという考え方が根底にあります。

家族で来ている人が大勢いて、老若男女楽しそうに「セワ」をしています。クリシュナ信仰がいかに一般家庭に根付いているか伝わってきます。

ISKCON寺院を訪れるなら観光ではなくぜひ事前に連絡をしてお寺の住職に話を伺う機会を作ってください。お寺に纏わるエピソードや内部を案内してくれます。

筆者が訪れたISKCON寺院はここ

ISKCON NVCC Pune

  • 所在地:SKCON TEMPLE AND NVCC, Katraj - Kondhwa Rd, Tilekar Nagar, Kondhwa Budruk, Pune, Maharashtra 411048
  • 営業時間:4:30~13:00、16:30~20:45
  • 入場料:なし(お賽銭は気持ちで行います)

カレンダーや真鍮の置物、インテリアやクリシュナのお土産や本が売っているショップがあります。Bhushanさんという日本に在住経験のある方がいらっしゃいます。

インドのISKCON寺院巡り:「牛の餌やり」

インドのISKCON寺院巡り:「牛の餌やり」

ここでは、牛の餌を購入し直接与えることができます。

インド各地を巡ると、同じクリシュナ寺院でも呼び名や姿が大きく異なることに気づきます。北インドでは少年神としてのクリシュナが強調される一方、南インドでは王として威厳ある姿で祀られることもあります。

像の色や持ち物、装飾の雰囲気も地域ごとに違い、それぞれの土地の文化や歴史が反映されています。これは、クリシュナが一つの固定された存在ではなく、人々の暮らしや価値観に寄り添いながら受け継がれてきた神である証ともいえるでしょう。

寺院を巡ることで、インドという国の多様性を実感できるだけでなく、信仰が画一的でないことも理解できます。同じ神でも表現が違うからこそ、旅の中で発見する楽しさが生まれます。

体験:ISKCON寺院のお食事をいただいてみた

ISKCON寺院のお食事

ISKCON寺院で提供される食事は、すべて菜食で構成されています。肉や魚、卵を使わないのは、命を大切にするという教えに基づいているためです。

この食事は「プラサード」と呼ばれ、神に捧げた後に分け与えられるものとされています。実際にいただいてみると、素朴ながらもスパイスの香りが豊かで、満足感の高い内容でした。

特別な味付けというより、体にやさしく、心まで落ち着くような素朴な味です。宗教施設の食事と聞くと構えてしまうかもしれませんが、誰でも受け入れてもらえる雰囲気があります。

食を通じて信仰に触れる体験は、寺院訪問の記憶をより深いものにしてくれるでしょう。この日の朝ごはんをいただきました。

左上からウプマ、タロイモのフライ、ヨーグルトのライタです。どれも軽くてまだ温かくおいしい味でした。

大きな鍋に揚げたチップス

特別に裏の台所を見学させていただきました。ちょうど朝ごはんを作り終わった後でしたが、大きな鍋に揚げたチップスが入っていました。

ここでは1回6000人分の食事を3回作るのだそうです。

大きな釜のある台所 

ここでの「セワ」もきちんと担当者が決まっていて、食材のロスがないかきちんと管理されていました。貴重な寄付で賄われているお食事は全て無料でふるまわれています。

インド人と日本人の宗教観の対比

寺院内の売店の店員

日本人にとって宗教は、生活と少し距離のあるものとして捉えられがちです。一方でインドでは、宗教は日常そのものに溶け込み、個人の生き方や価値観と深く結びついています。

インドを訪れると、その違いがとても自然な形で見えてくるのです。ここでは、日本とインドの宗教に対する考え方の違いからクリシュナ寺院が私たちに与えてくれる新しい視点について考えていきます。

寺院内の売店にて、日本語で声をかけられました。彼女はこれから日本で働くのだそうです。キラキラした目で日本語を一生懸命話していました。こうした若者に出会えるのは本当にうれしい事です。

道徳の代わりとして、クリシュナの教えから学ぶ

クリシャナ寺院の像

インド人にとってクリシュナの教えは、人生の岐路に立ったときや、迷いを感じたときだけではありません。大人になって今更聞けない話や、生きるうえで本当に大切な姿勢を、教えてくれる存在ともいえるでしょう。

インドの学校には「道徳」という授業がありません。その代わりこうしたお寺がその代わりを担っているのでしょう。

クリシュナの思想は善悪を単純に分けるのではなく、自分の立場や状況を受け入れたうえでどう生きるかを問いかけてくる点が特徴です。

クリシュナの聖典「ヴァガバットギータ」を通して、現代を生きる私たちが学べることを整理していきます。

インド人がほとんど知っているヴァガバットギータとは

ヴァガバットギータのポスター

ヴァガバットギータは、今からおよそ5000年前に成立したとされるインドの代表的な聖典です。最古の叙事詩「マハーバーラタ」の一部でありながら、宗教書という枠を超え、人生哲学として世界中で読まれています。

戦いを前に迷う主人公アルジュナに対し、クリシュナが語りかける対話形式で進むのが特徴です。その内容は、行動の意味、執着との向き合い方、心の在り方など、現代人にも通じるテーマばかりです。

成功や失敗に一喜一憂するのではなく、自分の役割を果たすことの大切さが語られており、年齢を重ねたからこそ理解できる深みがあります。一度だけではなく、時を経て繰り返し「気づき」が得られる一冊といえるでしょう。

主人公「アルジュナ」との関係に見る人生の教訓

ヴァガバットギータの中心にいるアルジュナは、迷い、恐れ、葛藤する等身大の人間として描かれています。クリシュナは彼に対し、逃げることでも無理に戦うことでもなく、自分の本分を見つめ直すよう諭します。

この対話から生まれた考え方は、後にヨーガやアーユルヴェーダの理論にも大きな影響を与えました。心と体、行動と意識を切り離さず、調和させるという発想は、すでにこの経典の中に示されています。

結果に執着せず、今なすべきことに集中する姿勢は、仕事や人間関係に悩む現代人にもそのまま当てはまります。クリシュナとアルジュナの関係は、人生の指針を示す師と弟子の象徴ともいえるでしょう。

クリシュナ信仰と現代社会への影響

クリシュナ信仰の根底にあるのは、多様性を認め合う価値観です。人それぞれ役割や個性が異なり、その違い自体に意味があるという考え方は、「みんな違ってみんないい」という現代的な感覚にも通じます。

他人への批判や無理強いが当たり前な社会の中で、クリシュナの教えは、自分らしさを肯定する視点を与えてくれます。誰かと同じである必要はなく、自分の場所で最善を尽くすことが尊いというメッセージは、国や宗教を超えて支持されています。

クリシュナ信仰は古代の思想でありながら、現代社会に生きる私たちに、柔軟で寛容な生き方を思い出させてくれる存在です。

インドで知る精神的な教訓と新しい価値観

クリシャナ寺院の祭壇

私はインド各地を旅すると、「観光をした」という感覚よりも、「考えさせられた」という印象を強く持ちます。寺院や街、人々の生き方に触れる中で、これまで当たり前だと思っていた価値観が静かに揺さぶられるからです。

効率や成果を重視する日常から少し離れ、何のために生き、どう在りたいのかを考える時間が自然と生まれます。特に今回ご紹介したISCKON寺院では、ただ観光するのではなく、そこで働く人やお坊さんとつながってください。

インドに来ることで得られるのは、知識や写真だけではなく、自分の価値観が変わる貴重な体験なのです。

インド旅行は「観光」から「自分の光に気づく」旅へ

「観光」から「自分の光にきづく」旅へ インドの人形

インド旅行の魅力は、有名な建築物や観光地を巡ることだけではありません。人との距離感や、日常の中に宗教や祈りが自然に溶け込んでいる様子に触れることで、価値観そのものが更新されていきます。

そこには、今の日本では失われつつある「昔ながらの日本」を思わせる感覚があります。地域のつながりを大切にし、目の前の人を思いやる姿勢、目に見えないものを敬う心などは、日本人にとってどこか懐かしく感じられるでしょう。

インドは異文化でありながら、遠い存在ではなく、むしろ自分たちの原点を思い出させてくれる場所です。旅を終えたあと、ものの見方が少し変わっていることに気づくはずです。

クリシュナの教えを体験する旅

クリシュナの教えは、特別な人のための思想ではなく、長い歴史の中で人々の生活に寄り添ってきた先人の智慧です。寺院での祈りや歌、食事の提供といった日常的な実践を通じて、その考え方は今も生き続けています。

正しさを押しつけるのではなく、それぞれの立場や役割を尊重する姿勢は、現代社会においても大きな示唆を与えてくれます。クリシュナの教えに触れる旅は、信仰を持つかどうかに関係なく、自分の生き方を見直すきっかけになります。

インドでの体験は、帰国後も心の中に残り、日々の選択や考え方に静かに影響を与えてくれるでしょう。

クリシュナ寺院で思う「日本人の宗教観とは」まとめ

インドのクリシュナ寺院の外観

インドのクリシュナ寺院を訪れる体験は、観光ではなく新しい価値観の創造です。日本人の宗教観を考えるきっかけになるでしょう。

インドでのクリシュナは信仰の対象であると同時に、日々の暮らしや価値観の中に自然に溶け込む存在です。寺院で出会う信者の言葉や行動は、教義を強く語るというより、どう生きるかを穏やかに示してくれます。

その姿は、日本人が子どもの頃に昔話や道徳的な物語から学んだ「思いやり」や「正直さ」と重なります。祈りや奉仕、食事の体験を通して、信仰が特別なものではなく、人として大切にしたい姿勢そのものだと感じられるでしょう。

クリシュナの教えに触れるインドの旅は、知れば知るほど日本人の原風景に似た景色を思い出させてくれます。

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田澤ともき

アーユルヴェーダがきっかけでインド在住。ハイテクから古代伝統まで、100人100色楽しめますよ。インドならではの出来事や、インド生活についてお届けします。

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