西沢渓谷で感じた、登山やハイキングでは味わえない「森林セラピー」の魅力【山梨市】

山梨県山梨市で森林セラピーを体験してきました。

私は登山をやるのですが、同じ山道を歩くのにも、登山と森林セラピーとでは感じ方がずいぶん違いました。
登頂を目指す登山では味わえない、山や森の秘めたパワーを五感で感じ、とても気もちよくなりました。
ガイドさん曰く「それは気分的なものではなくちゃんと理由があるのです。」とのこと。
この記事では私が体感した「森林セラピーの持つ驚くべきパワー」をご紹介します。

どうぞ最後までおつきあいください。

目次

森林セラピーとは?

科学的に裏づけられた「森林浴効果」を活かし、森林を散策しながら心身の健康維持・増進や疾病の予防を目的とする活動です。
森林浴に科学的根拠を与え、ストレス解消に役立てる試みで、森の香り、鳥のさえずり、自然に触れるといった五感を通してリラックス効果を得ることを目指します。
(森林セラピーソサエティの公式サイトより一部引用)

森林セラピーはなぜ気持ちいいのか

森林セラピーガイドさんに「気持ちいいですね~」と言ったらこう返ってきました。

「その気持ちよさの素となる主たるものが2つあります。"フィトンチッド"と"ゆらぎ"です。」と。

フィトンチッドとは?

フィトンチッドとは、木々が発する香り成分です。

「フィトン」とは "植物"、「チッド」とは"殺す"という意味です。
やや物騒な言葉ですが、フィトンチッドとは、自身は動くことができない木々が、有害な菌や害虫から身を守るために発している物質です。

森の中には動物の死骸や排泄物等が堆積します。本来ならば臭気が気になるはずですが、フィトンチッドには消臭、脱臭、殺菌効果など空気を浄化する力があります。それらによって森や山は清潔に保たれているのです。

近年、研究・実験が行われて、フィトンチッドは人間にとって良い効果をもたらすことが徐々にわかってきるのだそうです。

例えば、

  • 脳内α波の発生を促し、精神を安定させる
  • 自律神経を安定させる
  • 交感神経の興奮を押さえ、快適な睡眠をもたらす
  • 血圧をおさえ、怒り、緊張を和らげる
  • ストレスを減少させ、免疫力を強化する

などです。

詳しくはこちらをごらんください。

>>森林・林業学習館サイト

ゆらぎ

ゆらぎとは、森から聞こえてくる風のそよぎ、鳥のさえずり、小川のせせらぎといった音の不規則な動きを指し、人間に安らぎや快適さを与えると言われています。
また木漏れ日や、木の枝、葉っぱのゆらぎ等も人間に気持ちよさや癒しを与えてくれます。

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<木漏れ日のゆらぎ>

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そよぐ木々のざわめき、葉のきらめきなどが人間に心地よさや安らぎを与えてくれます。

西沢渓谷とは

西沢渓谷は、秩父多摩甲斐国立公園内に位置する日本屈指の渓谷美を誇る景勝地です。
巨大な花崗岩(かこうがん)を清流が浸食してできた渓谷は、天然の芸術のごとく、原生林を流れる渓流がいくつもの滝を作り、神秘的な魅力に満ちあふれています。
「日本の滝百選」にも選ばれた名瀑・七ツ釜五段の滝を筆頭に三重の滝、竜神の滝、恋糸の滝、貞泉の滝などさまざまな滝が織りなす渓谷美は、まさに圧巻です。
西沢渓谷内には遊歩道が設けられ、渓谷ならではの四季の変化が楽しめます。特に5月のシャクナゲや秋の紅葉の時期には、多くの観光客が訪れます。
また、西沢渓谷は森林浴のリラックス効果が実証され、森林セラピー基地に認定されているほか、「平成の名水百選」「森林浴の森100選」「水源の森百選」などにも選定されています。

(山梨市観光協会公式サイトより引用)

森林セラピーってどんな風にやるの?

今回、西沢渓谷の入り口手前にある「道の駅みとみ」を出発地点とし、西沢渓谷の三重の滝までの往復を約4時間半かけて歩きました。

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<出発地点の道の駅みとみ>

まず開始前にセラピー参加者の状態を確認するためにガイドさんと「導入面接」。こちらの質問票に記入します。

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<森林セラピー導入用紙>

お医者さんにかかる時、最初に問診票を書くのに似ています。

森林セラピーは皆に画一化された内容を提供するのではなく、参加者の状態、特徴、希望、潜在的ニーズなどを聞き取った上で、セラピーガイドさんが参加者にあったコース内容を選び提案してくれます。

そして森林セラピーが終わった後、終えてみてどうだったか、体調や気分に変化があったかなどを参加者にヒアリングします。

これら一連のヒアリング、調整、実施後の検証が、単なる観光プランと大きく違う点です。

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今回同行していただいたセラピーガイドの四十物 治夫(あいものはるお)さんです。

歩行前にしっかりストレッチをします。

それも定型ではなく、参加者の状態、体力に合わせて、肩、首、肩甲骨周りなどをほぐしていきます。

自分の中で血の巡りがよくなっていき、体がぽかぽかしていくのがわかります。さぁアイドリングOKです。

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西沢渓谷の木々のトンネルはとても爽やか。真夏でも涼しく、甲府市内と比べると気温が10度ほども違うことがあるのだとか。

森林セラピーは、登山、ハイキングのように、時間を競って山頂を目指すという意識はありません。

歩く道中で木々や風を五感で感じ、川のせせらぎに耳を澄ませ、ゆっくり森を味わいながら歩いていきます。

途中立ち止まって意識的に深呼吸をしたり、葉っぱをちぎって香りを嗅いだりします。

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葉っぱから発する香りを嗅ぐと「あ~自分は今、自然の中に居るなぁ」と実感します。

このコースはずっと渓谷沿いを歩くので、川の流れる音をBGMに進みます。それもゆらぎのひとつで気持ちが落ちつき、軽くなってゆきます。

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四十物さんは登山愛好家で、西沢渓谷に魅せられ、森林セラピーに出会って山、森の楽しみ方を知り、山梨に移住して森林セラピスト・ガイドに転身されたそうです。

今回歩く道はハイキングコースと一部同じですが、進め方、歩き方は登山、ハイキングと森林セラピーとでは大きく違いました。

木につかまる.jpg

木々に抱きついたりもします。木によっては暖かく感じたり、ひんやり感じたりと、木の体温を感じます。

木に抱きつくとパワーをもらえるなんてよく言われますが、木が生きていることがわかり、本当にパワーをもらえるような気がします。

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途中で原っぱに腰をおろし、セラピー弁当を食べました。このお弁当はセラピーツアーに含まれており、ガイドさんの所属する「山梨市森林セラピー推進協議会」が準備してくれました

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<セラピー弁当>

メニューはつくね、豚肉、卵焼き、かぼちゃ、ゴーヤ、きのこの天ぷら、炊き込みご飯。

薄めの優しい味つけで素材の美味しさをしっかり感じました。自然の中で食べるお弁当としては満点だと思いました。

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折り返し地点の「三重の滝」です。滝が三段に流れ落ちています。渓谷に囲まれているのでマイナスイオンを浴びまくっているのがわかります。

三重の滝付近のマイナスイオンは1立方cm当たり約17,000個/年平均もあるそうです。(甲府駅付近は200個くらい)

また西沢渓谷は、エメラルドグリーンの水が見られる場所として有名です。

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<三重の滝がエメラルドグリーンに輝く。写真提供:四十物治夫さん>

復路、歩くコースを少し外れ、静かで平な場所にシートを引いて寝ころびます。

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周りは360度ほぼ森の中です。

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四十物さんが、森、山、木々、の話をしてくださいます。

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杉やヒノキの葉を実の匂いを嗅ぎ、寝ころんで10分~15分くらいぼーっとします。

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寝ころんで見える景色がこれです。

森でこういう見方をすることは登山、ハイキングではあまりないのではないでしょうか。

木々が風で揺れ、風のざわめき、雲の流れを、何も考えず、ただぼーっと眺めているとストレスがほどけていくのがわかります。

"ゆらぎ"が与えてくれる心地よさを感じました。

木々のわずかなゆらぎが動画で伝わるでしょうか。。。目で見ると微妙なゆらぎに溶けていく感覚がありました。

4.5時間の森林セラピーもあっという間に終わりました。

終えた後、心地よさと気持ちが落ちついているのを感じました。

「始めた時より顔色が良く、明るくなりましたね」と四十物さんから言われました。

道中のあちこちで葉っぱの香りを嗅ぎましたが、始まる前と終える時とで香りがしっかり感じられるようになった気がします。

五感が研ぎ澄まされたからかもしれません。

森林セラピーに適した季節とは?

森林セラピーで得られる気持ちよさの素は「フィトンチッド」と「ゆらぎ」だと言いましたが、木々が発するフィトンチッドの量が一番多いのは新緑の季節だそうです。5~7月あたりでしょうか。新緑の若葉、なんかわかるような気がします。

私は10月の終わりに行きましたが、それでも充分森のパワーを感じました。
(冬季は西沢渓谷は閉鎖されます。)

森林セラピーをする時の服装、準備物は?


本格的な登山の装備は不要ですが、歩きやすい靴、脱ぎ着できる動きやすい服装、帽子などハイキング用のスタイルがおすすめです。
また森林を存分に味わうには、専門のセラピーガイドさんに付いてもらい、森や木々の話を聴きながら歩くのがおすすめです。

西沢渓谷へのアクセス

公共交通機関利用の場合

JR山梨市駅前から市営バスの[西沢渓谷線]で、西沢渓谷入口まで約60分で行くことができます。

JR塩山駅南口から運行しているバスも約60分で西沢渓谷入口まで行けますが、季節運行のため運休期間や土日祝のみの運行期間がありますのでご注意ください。

東京方面からのアクセスでスムーズなのは、JR新宿駅から中央線特急あずさ・かいじに乗る方法で、JR塩山駅まで約1時間30分・JR山梨市駅まで約1時間35分です。

自家用車利用の場合

中央道勝沼ICから約60分。

西沢渓谷入り口 市営駐車場(60台)と道の駅みとみ北側駐車場(200台)があります。

>>山梨市観光協会公式サイト

まとめ

「森に入るとなんか気持ちいい」というのが単なる気分の問題ではなく、ちゃんとした理由があることを教えてもらいました。
私は山登りをやりますが、山登りは登頂が主目的で、道中の森や木々を素通りしてしまう傾向があります。
森林セラピーでは森の木々に目を凝らし、耳を澄ませ、香りを嗅ぐことで森をたっぷり感じることができました。

自身の五感が研ぎ澄まされていくのがわかるようです。

日ごろ溜まったストレスがほどけていき、疲れを感じず、まるでお風呂上りのような、頭がすっきりして体が軽くなったように感じます。

「森林セラピーの医学的、科学的な証明は、研究、実験を積み重ね、今後ますます明らかにされていくでしょう。」と四十物さんも仰っていました。

都会のコンクリートジャングルに住み、満員電車に揺られ、1日ビルの中で過ごすことの多い現代人に森林セラピーはぴったりです。
ぜひ一度体感してみてください。

※感じ方は人それぞれで森林セラピーはそれらを保証するものではありません。

>>今回体験した西沢渓谷森林セラピーの詳細、参加申し込みは山梨市公式サイトから

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シンジーノ

ローマと北京に駐在歴あり。海外渡航歴は36か国。日本は47都道府県踏破。「お客さんが”笑顔”で買いに来る商品」を扱う仕事がしたいと旅行会社に入って三十余年。今はその経験を基により多くの人に「旅の魅力」を伝えるべく“たびこふれ”にいます。モットーは「その土地の温度が伝わるような血の通った記事を書く。」旅はカタチには残りませんが生涯忘れられぬ宝物を心に残してくれます。たびこふれを通じて、人生を豊かに生きる力を秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきます。

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