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フレンチバスクの美味しい旅!|フランス

フランスの大西洋岸南端、スペインとの国境をまたいで、両国に存在するバスク地方。「バスク地方」と呼ばれるけれど、フランスの地方行政区地図には存在しない、元来バスク語を原語とするバスク民族地域の総称です。
豊かな大西洋とピレネー山脈、海山陸の恩恵を受けるバスク地方は、独特の文化を持つ美食の地域としても有名です。そこで今回は、フランス側バスクの旅を、食べ物に視点をおいてレポートしてみました。バスクグルメ旅にようこそ!
目次
バスク地方とは
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「バスク地方」とは、フランス南西部とスペイン北西部に国境を挟んで存在する、歴史概念的にバスク語を原語とする民族の故国であった地域です。
フランス側はペイ・バスク(Pays basque)、スペイン側はパイス・バスコ(Pais vasco)と呼ばれています。バスク語は、今日も学び継がれ日常で使用されている生きた言語で、バスク地方では地名、建物名、レストランメニューなど、さまざまな場所で二言語表記が目につき、異国情緒を感じます。
大西洋岸とピレネー山脈を有したバスク地方は、独特の文化が継承されている美しくエキゾチックな場所として、人々を魅了するのです。
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私が旅したフレンチバスクは、地方行政区分類では、アキテーヌ地方(首都ボルドー)ピレネー=アトランティック県(県庁バイヨンヌ)に属し、この県の西側約半分がペイ・バスクです。フランス側の代表都市は、歴史ある県庁地バイヨンヌ、大西洋岸の高級リゾート地ビアリッツ、情緒ある港町サン=ジャン=ド=リュズ。
どの街にも小さな村にも美味しいものがいっぱい!
バスクの食材
まずは、マルシェや街中で見つけた郷土料理の鍵となる食材をご紹介しましょう。
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ピカピカ輝く新鮮は魚たち!魚、海老、蟹、貝など種類も豊富です。中でもシピロン(chipirons)という小さなイカは、バスクを象徴する人気食材で、柔らかく弾力に富み開眼的な美味しさ!近海で漁獲されたマグロも有名です。
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生ハムを筆頭に乾燥ソーセージ、パテなどの加工肉もバスクの食卓に欠かせません。生ハム販売店は沢山あり、スペイン産セラーノやイベリコ、フランス産バイヨンヌなど、世界に誇る生ハムが、吊るされてデコレーションとなっています。
塊は長期保存可能なので、一本丸ごと調達を目的にバスクを訪れる人も多いとか。
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バスク野菜といえば、ピーマンと唐辛子。料理名の「バスク風」とは、赤青ピーマン(またはパプリカ)と玉ねぎをトマトで煮たもの。オリーブオイルとニンニク、唐辛子がアクセントです。
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料理界に名を馳せるエスペレット唐辛子(Piment d'Espelette)は、香り高く、口に入れた瞬間は甘みを感じ、追って辛さが広がります。生産地であるエスペレット村は、建物の外壁に唐辛子が吊し干しされている風景が大人気。唐辛子を求めて、世界中から観光客が訪れます。
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バスクチーズは、羊乳で作られたハードタイプが代表格。バスクチーズは、特産品さくらんぼを煮詰めたものと一緒に食べるのが伝統。驚きの組み合わせですが、甘~い果実とまろやかなチーズの相性はバッチリ!伝統って素晴らしい。
バスクのタパス・前菜・主菜
では実際に、バスクで食した郷土料理をご紹介します。到着した初日の夕暮れは、スペイン発祥の小皿料理タパスで乾杯!居酒屋風スタイルで、少量で何種も気軽に食べられるのが楽しい。タパス文化が定着しつつあるフランスでも、ここは本場!
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セラーノ生ハムと羊乳チーズ オッソ・イラティの盛り合わせ。赤青キューブは有塩無塩バターで、ハム類と一緒に食べるのがフランス風。黒いペーストがブラックチェリーを煮詰めたもので、チーズと共にがバスク風。コルニション(フランスピクルス)ではなく青唐辛子のピクルスというのもバスクならでは。
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バスク地方で絶対食べてほしい、柔らかくて美味しいシピロンイカ。
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タパスメニューで人気のミニクリームコロッケ。シピロンイカ墨風味と、イベルコ豚ハム入りベシャメルで、大満足!
これに地元ワインとデザート一品を追加して完了。料理の種類が豊富という訳ではありませんが、素材のブランドにこだわった美味しさは抜群!スタッフもにこやかで(フランスでは貴重!)、初日早々にお腹も心もバスクの虜となったのでした。
Erdiko Tapas & Gourmandises
- 所在地:Pl. Maurice Ravel, 64500 Saint-Jean-de-Luz, フランス
- 公式サイト:Erdiko Tapas & Gourmandises
郷土料理とおすすめの創作料理
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バスクを代表する郷土料理アショア(axoa)は、仔牛挽肉のトマト煮。フランス人なら誰もが知っている「鶏肉のバスク風(poulet basquaise)」は、レストランメニューには見かけなかった謎。もはやフランス家庭料理として定着しているから?
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お惣菜屋で調達したナスの肉詰めピペラードソース添え。ピぺラード(piperade)は、トマトとピーマンやパプリカを炒め煮したもので、南仏ではラタトゥイユと対をなす定番野菜料理。肉魚料理の付け合わせ、ソースとして、卵や生ハムを加えてメインに、と大活躍。赤ピーマンの中に魚のすり身を詰めたのも味見に!
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人気のバカンス地ビアリッツでは、地元食材を使ったお洒落な創作料理にトライ。波間に立つ「聖母の岩」を正面にを臨む屋上のテラス席でいただいたお料理は、シピロンイカのパン粉焼き、鴨胸肉のグラブラックス、タコのバターナッツソース。
どのお料理も丁寧に工夫されていて美味!レストランの階下は同経営のバーで、こちらもいい感じ。場所はビアリッツ水族館の横、予約なしでOK。
Rooftop Olatua Biarritz
- 所在地:Pl. Maurice Ravel, 64500 Saint-Jean-de-Luz, フランス
- 公式サイト:Rooftop Olatua Biarritz
バスク料理のデザート、お菓子
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可愛いバスク伝統柄のお皿の上にあるのは、ガトーバスク!サブレクッキーのようなサクサク生地に、さくらんぼコンフィチュールやクリームを入れて焼き上げた素朴な伝統菓子。
パン屋さんや菓子屋さんにも、マルシェにもレストランにも、「自家製」と強調されて用意されているバスクのハート的存在。食べ比べも楽しい!
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老舗メゾンアダムの元祖マカロン(マカロン・バスク)は、1660年ルイ14世とスペイン王女マリア=テレサの婚礼の際に招待客に配られたお菓子。ベルサイユ宮殿を造った太陽王の結婚式が、サン・ジャン・ド・リュズの小さな教会というのは驚きだけれど、スペインとの戦争を終わらせるという当時の事情を知れば、国境付近での式が行われたのも納得。
誕生時のレシピのまま継承されているという元祖マカロンは、外側がさっくり、中はアーモンドとバターの風味でしっとり重めの味わい。バスク十字が描かれた缶入りは、自分の思い出のために持ち帰りたい。
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フランス産チョコレートの発祥地バイヨンヌ。16世紀の大航海時代に持ち帰られたカカオ豆を使ったチョコレートの歴史は、飲み物から始まり固形へと進化。
チョコレートの製造方法がフランス伝わったのは、知識あるユダヤ人がイベリア半島から迫害されてバイヨンヌに住み着いた時らしい。
1854年創業のチョコレート店カズナーヴでは、創業当時の手法でチョコレートが製造されていて、併設の喫茶室では、昔風ホットチョコレートが体験出来るので、トライしてみてはいかが?
- 公式サイト:カゼナーヴチョコレート
バスクのお土産
メゾンアダムのガトーバスクや元祖マカロンは大人気だけれど、賞味期限が1週間と短いのが厳しいかも。バスク産ブラックチェリーのコンフィチュールで、手作りバスクケーキに挑戦?濃厚でパンに塗るだけで、バスクの太陽を感じられます。
私のおすすめNo.1は、エスペレット唐辛子!料理に振りかけるだけでアクセントになるし、パプリカ・トマトと煮込めば一気にバスク風!内緒だけれど、エスぺレット唐辛子はフランス全土、大きめの食料品店のスパイスコーナーで、かなりの確率で入手できます。Piment d'Espelette AOP(AOC)を探してね。
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バスク織として知られる、太さの異なるストライプを組み合わせた厚めの布地もバスクの特産品。いろんな商品が作られているので、お土産選びも楽しくなるでしょう。好みの色柄のフキンを自分のために選んで持ち替えれば、台所に立つのが楽しくなること間違いなしです。
さいごに
Goxoaゴショア!(バスク語で美味しい)バスクグルメの旅、いかがでしたか?
フレンチバスクの旅を体験して私は、バスク地方の大自然の美しさと厳しさ、文化の独自性と豊かさ、人々の人懐っこさ暖かさ、そしてもちろん美味しい郷土料理の素晴らしさに、すっかり心奪われてしまいました。
別の記事で、今度はバスクの街や村の魅力をお伝えしたいと願っています。ではまた、次の旅路でお会いいたしましょう。それまでお元気で!
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原田さゆり
- 旅・文化・猫を愛する、フランスの田舎在住者。フランス中を旅しています。




























