スクリーンの記憶を歩く|香港映画ロケ地巡礼

<TOP画像:香港島を背景に、尖沙咀のアベニュー・オブ・スターズに立つブルース・リーの銅像>

映画の中の香港

香港はアジア映画の中心地として数々の名作を生み出してきました。ウォン・カーウァイの美学、ブルース・リーの哲学は、形を変えて、現在の香港映画にも受け継がれています。そして、その舞台となった街並みは、今も映画の記憶を宿しています。

今回は、日本ではあまり知られていない映画も含め、香港映画の名シーンを追体験できるロケ地を巡る旅にご案内します。

目次

『恋する惑星』の世界を歩く

ウォン・カーウァイ監督の映画『恋する惑星(重慶森林)』は、都市に生きる人々の孤独と記憶を、詩的な映像美で描き出します。彼の作品に登場する場所は、単なる背景ではなく、登場人物の感情を映し出す鏡。空間そのものが、物語の語り手となっています。

1. ヒルサイド・エスカレーター(中環)

フェイ・ウォン演じるヒロインが警官633号の部屋を覗き込むシーンで登場。このエスカレーターは、世界最長の屋外エスカレーターとしても知られています。中環の喧騒と映画の静けさが交差する、象徴的な場所でもあります。

ヒルサイド・エスカレーター(中環)
<傾斜を貫いていくヒルサイド・エスカレーター>

ミッドレベルへと続くヒルサイド・エスカレーター
<ミッドレベルへと続くヒルサイド・エスカレーター> 

ヒルサイド・エスカレーター

  • 所在地:Jubilee St, Central

2. 重慶マンション(尖沙咀)

映画の前半で、金城武演じる警官223号が金髪の麻薬密売人と出会う舞台。それが、尖沙咀にある重慶マンション(重慶大厦)です。現在も多国籍な文化が入り混じる雑居ビルとして知られ、映画で描かれたアンダーグラウンドな雰囲気を肌で感じることができます。

重慶マンション(尖沙咀)
<重慶マンションの正面入口>

さまざまな国の雑貨店がひしめくグランドフロア
<さまざまな国の雑貨店がひしめくグランドフロア>

館内にはインド料理をはじめとするエスニック料理店が軒を連ね、食の冒険も楽しめるスポットです。

エスニック料理店が軒を連ねる2階
<エスニック料理店が軒を連ねる2階>

重慶マンション(重慶大厦)

  • 所在地:Chungking Mansion, 36-44 Nathan Rd, Tsim Sha Tsui

アクションの魂-ブルース・リーの聖地へ

1. 青山禅院(屯門)

映画『燃えよドラゴン』の冒頭、ブルース・リーが弟子に「Don't think. Feel!(考えるな、感じろ)」と語る名シーン。その舞台となったのが、屯門の山腹に佇む青山禅院です。

静寂に包まれた山寺の空気は、まるで映画の世界に入り込んだかのよう。敷地内には、あの名場面を再現したパネルも展示されています。青山禅院は香港三大古寺のひとつであり、仏教発祥の地とも言われる由緒ある寺院。

歴史と映画の両方を感じられる特別な場所です。アクセスはライトレイル(軽鐵)の青雲駅で下車後、約1キロの坂道を30分ほど歩いて山の中腹へ。静けさと荘厳さに包まれた空間が、訪れる人を待っています。

青山寺(青山禅院)の方角を示す道標
<青山寺(青山禅院)の方角を示す道標>

青雲観(道教の施設)の石像の後方に見えるのが青山禅院の入口
<青雲観(道教の施設)の石像の後方に見えるのが青山禅院の入口>

青山禅院の入口
<青山禅院の入口>

青山禅院(青山寺)

  • 所在地:Tsing Wun Rd, Tuen Mun

2. 香港文化博物館(沙田)

ブルース・リーの銅像といえば、尖沙咀のアベニュー・オブ・スターズが有名ですが、沙田にある香港文化博物館の銅像も見逃せません。市街地から少し離れていますが、躍動感あふれるポーズと精巧な造形は圧巻です。彼の精神を感じられるこの銅像は、ファンならずとも一見の価値があります。

映画の名場面を再現したパネル 残念ながら写真部分が剥がれ落ちてしまっていますが
<映画の名場面を再現したパネル(残念ながら写真部分が剥がれ落ちてしまっていますが)>

香港に仏教を伝えた杯渡禅師を祀った洞窟「杯渡岩」
<香港に仏教を伝えた杯渡禅師を祀った洞窟「杯渡岩」>

香港文化博物館の躍動感あふれるブルース・リー
<香港文化博物館の躍動感あふれるブルース・リー>

伝説の武道家であり俳優、ブルース・リー。彼の映画は、香港の街並みとともに世界中のファンの記憶に刻まれています。

香港文化博物館

    • 住所:1 Man Lam Rd, Sha Tin

香港ロマンス-『LOVE IN A PUFF』の記憶を辿る

1. 金鐘・太古広場横の小路

主人公の春嬌と志明が初めて出会い、煙草を通じて距離を縮めた場所。金鐘駅から太古広場へ向かい、政府合署との間にある細い路地が舞台です。映画の象徴的なシーンがここで撮影されました。

金鐘・太古広場横の小路
<金鐘・太古広場横の小路>

太古広場(Pacific Place)

  • 所在地:88 Queensway, Admiralty

2. 志明橋(Jimmy Bridge)

志明が春嬌にメールアドレスを聞いた場所。その後、地元の人々から「志明橋」と呼ばれるようになりました。九龍湾にあるこの天橋は、ピンクとブルーの配色が特徴的で、SNS映えするスポットとしても人気があります。

パステルカラーが特徴的な志明橋

パステルカラーが特徴的な志明橋

香港の街角で偶然に出会い、煙草を通じて恋が芽生える――そんなリアルで等身大のラブストーリーを描いた映画『LOVE IN A PUFF(志明與春嬌)』。この作品は、香港という都市のリアルな空気とそこに生きる人々の生活を背景に、恋愛の機微を繊細に描いています。

香港の地下鉄をモチーフにした独特なデザインとパステルカラーが特徴的な志明橋>
<香港の地下鉄をモチーフにした独特なデザインとパステルカラーが特徴的な志明橋>

志明橋(Jimmy Bridge)

      • 所在地:Wai Yip St

『The Way We Talk』-話し方の風景

香港の手話を扱った映画として近年注目を浴びた作品が 『The Way We Talk(看我今天怎麼說 )』 です。この映画は、聴覚障害を持つ3人の若者の友情と葛藤を描いた青春ドラマです。

彼らはそれぞれ異なるコミュニケーション手段(人工内耳、口話、手話)を使っており、聴覚障害者の中にも多様性があることをリアルに描いています。映画では、ここで紹介するレストランや屋台が手話を使う登場人物たちの生活感や人間関係を描くうえで重要な舞台となっています。

1. 德如茶餐廳(灣仔)

映画の中で登場人物たちが語り合うシーンが撮影された、昔ながらの香港スタイルの茶餐廳(大衆レストラン)です。レトロな雰囲気の中で、ここの家郷炒飯(Home-style Fried Rice)をぜひ試してみて下さい。

德如茶餐廳の外観
<德如茶餐廳の外観>

德如茶餐廳の店内
<店内の様子>

德如茶餐廳のチャーハン
<家郷炒飯>

德如茶餐廳

  • 所在地:Wan Chai, St Francis Yard, 17-18

2. 強記大排檔(深水埗)

香港らしい屋台文化を感じられる場所、大排檔(ダイパイドン)。手話での会話シーンが印象的に描かれています。深水埗というローカルな街の活気と、その賑わいのなかで、映画のリアリティを感じることができます。

強記大排檔の外観
<強記大排檔の外観>

強記大排檔の店の様子
<店の様子>

強記大排檔

      • 所在地:219 Ki Lung St, Sham Shui Po

まとめ|『トワイライト・ウォリアーズ』が呼び起こす香港映画の新たな魅力

近年稀にみる大ヒットを記録した香港映画『トワイライト・ウォリアーズ(九龍城寨之圍城)』。今回、ここでは紹介しませんでしたが、その世界観を忠実に再現した映画セットが、九龍寨城公園(Kowloon Walled City Park)に常設展示されています。

この作品をきっかけに、香港映画が再び注目を集めています。実は香港には、まだあまり知られていないローカル映画が数多く存在し、最近では日本でも少しずつ公開され始めています。

ぜひこの機会に、自分だけのお気に入りの一本を見つけてみてください。そして、映画の舞台となった街角を実際に歩いてみれば、スクリーンの物語と現実の風景が重なり合い、香港という都市の新たな魅力がより鮮やかに浮かび上がってくるはずです。

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H.Kawa

香港在住15年の駐在員。変化の狭間にある香港のローカルな情報をお届けできたらと思っています。ちなみに老後はバリ島に住むのが夢です。

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