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現地レポート!インドのカレーな結婚式で体感したカースト制度のリアル

スパイス香る熱気と感動に満ちたインドの結婚式。本場インドで体験した「恋愛結婚」と「カースト制度」の現実、そして家族の絆。そのすべてがひとつの祝祭に凝縮されていました。
「カレーなる」祝宴に見る、インド文化の奥深さ、その刺激と甘さを、どうぞ召し上がれ。
目次
- インドの結婚式での新郎登場!真っ赤なヴィンテージカーでスパイス全開
- 恋愛結婚でのインド式甘い演出――甘いからってお子様注意!
- カースト制度の"廃止"とインド婚活の階級リアル
- インドの家族文化と「和」の価値観 濃厚でまろやかな魅力
- インドの恋愛結婚からひらめくカーストの意義
- まとめ:カレーなる祝祭で触れた異文化の戸惑いと家族の絆
インドの結婚式での新郎登場!真っ赤なヴィンテージカーでスパイス全開
ナマステ!友だちの結婚式で、なぜか私の席にマラカスが用意されていたことがあるARIECHIKAです。
今回紹介する結婚式は、新郎のお兄さんから招待を受けたもので、インディラ・ガンディー国際空港から車で2時間ほどのハリヤーナ州ソニパッドで行われました。
開催は夜8時と聞いていたけれど、そこはインド。
新郎の登場は、予定より1時間半遅れの夜9時半。しかも「真っ赤なヴィンテージカー」で登場です。
スパイス全開の新郎と親族は、太鼓のリズムに乗って、エアーバズーカを打ち、お金をばらまき、金の紙吹雪をまき散らし、これぞまさにどんちゃん騒ぎ。太鼓奏者がばらまかれたお金をすかさず拾いに行く様子には、思わず目が釘付けでした。
しかも、帰宅後にドレスを脱いだら、胸元から金のテープがヒラヒラと舞い落ち、華麗すぎて、楽しいおまけという、あとひく美味しさに、思わず笑ってしまいました。
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<新郎とDJのオンステージ>
女性DJがビートを刻み始めると、新郎がステージへ。会場はさらに熱気に包まれ、全員が笑顔で体を揺らしていました。新婦の登場を待つ"待ち時間"すら、まるでショーの一部です。
さらには、新婦のおじいさんまでダンスに加わり、私にも「一緒に踊ろう」と声をかけてくるほど!夜の22時とは思えないほど、みんな元気で、世代を超えたエネルギーの渦にただただ引き込まれました。
恋愛結婚でのインド式甘い演出 甘いからってお子様注意!
<新郎と親族が太鼓のリズムで踊り進むバラート>
ついに深夜2時、新婦が会場に近づいているという知らせが!それに合わせて、新郎はお姉さんや妹、親族を連れ立って行進。バラート(Baraat)を続けながら、会場内に入ってきます。
踊ったり、時にはお金を撒き散らしたりしながら進むその姿や、パワフルで元気で賑やかな様子は、とても珍しい光景でした。しかし、さすがに新郎には少し疲れが見えるような...いや、きっと緊張しているのでしょう。
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<スパークラーの中、新婦登場>
その後、新婦は中央ステージに到着。両脇にスパークラーが勢いよく輝き出し、華やかな演出が会場全体をさらに盛り上げました。このきらきらとした火花が、赤いドレスを一層鮮やかに際立たせ、まるで映画のワンシーンのようです。
日本では花嫁衣装といえば白が主流ですが、インドでは赤なんだそうです。
そして、皆が新郎新婦を囲み、新郎がステージ上で新婦に改めてプロポーズするセレモニーが行われました。
太鼓の音が鳴り響き、周りのゲストたちが一緒に踊りながら手拍子やヒューヒュー!と歓声を上げています。
うん、とってもあま~い演出。でも、これは子供向けの甘口カレーとは違います。愛のスパイスたっぷりなので、お子様には、まだまだ刺激が強すぎて...そうですね、あと10年くらい寝かせてからおすすめしたい味ですね。
カースト制度の"廃止"とインド婚活の階級リアル
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<インドの新聞婚活欄には家柄や宗教別に募集相手が掲載されている>
今回の結婚式で印象的だったのは、彼らが「恋愛結婚」を選択したことです。だからこそ、こうしたプロポーズのあま~い演出が盛り込んであったようです。
ただ、インドではまだお見合い結婚が一般的で、そのための新聞広告やオンラインには、ブラフミン(Brahmin)、ジャイナ(Jain)、ジャータヴ(Jatav)、カシャプ(Kashyap)、カース(Kayastha)、カトリ(Khatri)、クシャトリヤ(Kshatriya)、クルミ(Kurmi)、サフ・テリ(Sahu-Teli)、ヴァイシャ(Vaish)、ヤダヴ(Yadav)、アグルワル(Agarwal)等、家柄の情報ごとに掲載されています。
これらのインドにおける歴史的階級は、私たち日本人は社会科の授業で「廃止された制度」として学習してきましたが、実際に暮らしてみると、その伝統が今も多くの場面で受け入れられていることを知り、驚きました。
しかし、この結婚式を通して、その背景にあるコミュニティや家族の絆の大切さを実感したことで、新たな視点を得ることができたのです。
インドの家族文化と「和」の価値観 濃厚でまろやかな魅力
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<結婚式会場のディスコゾーン>
私が感じた「和」は、家族や地域が紡ぐ温かい絆や伝統の調和でした。
日本では、兄弟姉妹は親族として出席しますが、披露宴では招待客のように振る舞うことが一般的です。主催者としての役割はあまり求められず、形式的な参加にとどまることが多い印象です。
この結婚式では新郎新婦のご両親はもちろん、兄弟姉妹も主催者として積極的に関わり、私自身も新郎のお兄さんから招待を受けての参加でした。
このことからも、結婚は個人のものだけではなく、家族の行事だということがうかがい知れます。
新郎のお兄さんは、弟のためにエアーバズーカ砲を打ち、ディスコゾーンでは汗だくで踊りながら場を盛り上げていました。
笑顔で迎えてくれた美しいお母さまや、何度も「食べてる?」「楽しんでる?」と気遣ってくださったユーモラスなおじい様――そのひとつひとつの瞬間に、インドの家族文化のあたたかさを感じました。この「和」こそが、インドの結婚式に濃厚でまろやかな魅力を添えていました。
こうした家族や地域の絆を祝う「和」の姿勢は、私たち日本人が大切にしている価値観とも重なり、インド人の家族や地域との絆の強さを深く感じ取ることができました。
インドの恋愛結婚からひらめくカーストの意義
今回の新郎新婦のように、「恋愛結婚」という、家柄や社会構造に基づかない結婚であっても、伝統を守りながら新しい価値観を受け入れる姿勢には、多様性と調和を追求するヒントがあり、文化を超えた貴重な学びとなりました。
それは、インドの伝統的なスパイスだけでなく、さまざまな具材がじっくり煮込まれて、味が染み込んでいくカレー。それは、まるで日本の家庭のカレーのようです。
インドにいながら、自国のほっとする記憶の味を思い出した時、インドと日本という構図からか、「私にとっては、国際結婚が文化や価値観が混ざり合う"極み"に見えたけれど、実は戸惑いの味なのかもしれないなぁ。」と思った瞬間、ある思いが「すっ」と降りてきたのです。
「ああ、これは国際結婚のそれと似ているのかもしれない」と。そして気づいたのです。安心のより処として存在するカーストの意義に。
インドにおけるカーストの存在は、きっと「価値観の境界」に対する繊細な感覚なのだと。それを越えて手を伸ばすには、周囲の目や習慣に静かに向き合う覚悟が要るのだと。
そうして私は、ずっと心にひっかかっていたものがすっと溶けていくような、穏やかな感覚に包まれたのです。
まとめ:カレーなる祝祭で触れた異文化の戸惑いと家族の絆
この結婚式は、まるで辛さとスパイスの香りが何層にも重なったインドカレーに、文化のエッセンスと家族の温もりが混ざり合い、甘く深い最高の一皿でした。
インドに来た当初、カーストごとに婚活が行われている様子に、少し戸惑いを感じていました。しかし今回の結婚式を通して、新たな気づきを得た今だからこそ、見えてきたものがあります。
それは、異文化に触れるときの戸惑いと、とてもよく似ているということ。私たちが、日本人同士の結婚はすんなり受け入れられても、いざ国際結婚となると、文化や価値観の違いに不安をいだく。これと同じような感覚なのではないかと感じたのです。
もちろん、共通点があるとはいえ、似ているようでやっぱり違う。その違いの深さは、簡単には測りきれないほど複雑で奥深いものなのかもしれません。
文化が違うからこそ、私たちはそれぞれの"懐かしい味"を大切にしたくなる。私にとってそれは、日本の家庭のカレー。煮込まれたその味を思い出した瞬間、国際結婚の戸惑いと、深く似た感覚にそっと触れられたのです。
だから、それを求めてカーストを残しているのかもしれないと、世界が少しだけ優しく感じるようになったのです。
そして、踊って、はしゃいで、みんなで笑って祝福できたことが、何よりも楽しかった。結婚式で過ごした特別な時間は、私にとって一生の宝物となりました。
こうして新たな価値観を得られる機会をいただけたことに、心からの感謝を込めて。"Thank you to "Kamura Family"
Kanak Garden Banquet(開催会場)
- 所在地:インド・ハリヤーナ州ソニパット
- アクセス:インディラ・ガンディー国際空港から車で約2時間
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ARIECHIKA
- これまで「音」で日々を綴ってきた声楽家ですが、今度は「文字」で、インドでの暮らしを奏でてみようと思います。毎日のなんてことない出来事の中に、ちょっとした驚きや発見がいっぱい。笑いと好奇心を添えて、異文化の空気を言葉に乗せてお届けします。日々の小さな旋律――Ariettaのような、ささやかだけど心に残る瞬間を、五感で感じるインドから綴っていきます。ちょっとのぞいてみませんか?




























