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ユニバーサルツーリズム検証の旅 in 群馬県みどり市

群馬県みどり市で、ユニバーサルツーリズムの検証モニターツアーが実施されましたので参加しました。
私がバリアフリーについて抱いていた認識が大きく変わり、気づきと学びがありましたのでご紹介します。
モニターツアーで訪れるみどり市の観光スポットをメインにご紹介する記事もご覧ください。↓
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目次
ユニバーサルツーリズムとは
高齢や障がいのあるなしに関わらず、誰もが分けへだて無く旅行を楽しめるよう設備やサービスを整備することを目指す旅行形態。
今回は車椅子を利用しているお二人が検証者としてツアーに参加されました。
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群馬県のユニバーサル状況を精力的に発信されている「ココフリ群馬(群馬バリアフリー観光情報局)」の代表 木暮奈央(きぐれなお)さん(左)とインフルエンサーの鳥居百舌(とりいもず)さん(右)。
お二人とも若く元気いっぱいでした。
車椅子使用者から見たユニバーサルツーリズム検証ポイント
ツアーでは、主に以下のポイントがチェックされていました。
- ユニバ―サルトイレ
- 段差
- 高さ
- 角度
- 情報案内
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トイレ内部の状態をチェック
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車椅子で回れる広さはあるか(方向転換)
配置されているものの高さは使いやすいか
跳ね上げ式のバーも障がいによっては使いにくいこともあるそう。
実際に車椅子に座った目線は私とは違い「へえ~なるほどそうなのか」の連続でした。
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鏡もこのように角度がないと、車椅子に座っている状態では映らないんですね。
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踏切は神経を使います。線路の溝にタイヤがはまると大変ですから慎重に進みます。
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階段でもこのようにスロープが設置されていると車椅子でも助けを借りずに移動できます。(ながめ余興場)
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神社(神明宮)の境内では砂利が大変です。特に小さな粒の砂利はタイヤが埋まりやすい。
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今回のツアーでは土の道、木の根っこがある道なども行きました。ゆっくり進めば思ったより大丈夫でした。
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わたらせ渓谷鐡道に乗車。介助の方がスロープを持ち込んでの乗車でしたが、スロープが急で「ちょっと怖かった」。
大間々駅は跨線橋ではなく、スロープで向かいのホームにも車椅子で移動できる体制が整っていました。
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車内の運転席近くに2台分ほど車椅子のスペースがありました。
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車椅子にとって一番大きな難題は段差です。
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このようにスロープが設置されていると入るのにスムーズです。ちなみにこのスロープは3Dプリンターで作られたのだそうです。
木暮さんは「設備も大切ですが、情報(案内)もとても大切です」と仰っていました。
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このように公園内は犬連れ禁止だけれど(盲導犬、介助犬は除く)としっかり書いてあること。
これが明記されていないと「中に入れないんだな」と思ってしまいます。
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美術館でも音声ガイドを借りられたら自分のペースで鑑賞できるので、きちんと情報の案内が提示されていること。
案内、明記がないと鑑賞を諦めてしまう可能性があります。
みどり市のユニバ―サルツーリズム度は?
今回の検証ツアーで、全般的にはみどり市のユニバ―サルツーリズムはかなりの部分に於いて整備されていることがわかりました。
・ユニバ―サルトイレの数、各施設の対応、人的な対応体制など。
木暮さんは旅行好きで、あちこち出かけていますが、情報の少なさに困ることが多いそうです。
WEBや他の案内にも載っていないので電話して聞くこともしばしば。
トイレはあるか、あるとしたらどういうトイレか、段差は?それらの状態がどうであるかわからないと安心して旅行できないと。
上述の公園内に立ち入れる犬の制限、美術館での案内なども安心できるかできないかの大事な情報です。
「もっと情報を明らかに、具体的にわかるように外に出して表してもらえると安心して出かけられます。」と。
今回のツアーで感じたこと
今回、木暮さん鳥居さんと実際に歩いてみて感じたことを書きだしてみます。
車椅子利用者にとっては、①段差、②トイレが特に重要
この2つが整っていないと車椅子旅行はかなり困難(充分な時間と手助けする人手が必要)になります。
ハードだけ整っていてもだめ
バリアフリーイコール段差が無い(フラットになっている)だけでは不十分なことを知りました。
トイレの例のように、鏡の角度、設置されたもの(洗い場等)の高さが使いやすい位置にあるか、は障がいのある人の目線で設置しないと便利とは言えない部分もありました。
障がいの違いにより必要とされることも違う
例えば、歩道にあるこの点字歩道(視覚障がい者誘導用ブロック)。
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これは、視覚障がいのある人には助けとなりますが、車椅子にとっては進みにくいものになります。
よってすべての障がいをお持ちの人に快適な状態を整えることは困難だと知りました。
障がい者といってもひとくくりにできないこと
ひとくちに「障がい」といってもいろいろあります。
障がいの種類、重度により必要な対応は大きく異なります。
また例えば「24時間テレビ」などに対して「障がい者を見世物にしている」と言われる人たちがいます。
でも逆に障がいを持っていても目立ちたい、積極的に世の中に関与していきたい、という人もいます。
障がいを持った人(その家族も含めて)の考え方、志向もそれぞれなのです。
「障がいを持った人」とひとくくりにすることはおかしいということを教わりました。
障がい者と健常者の境目はなに?
障がいを持っている人は日常生活に支障があってかわいそう、と憐れむ人がいます。
障がい者と健常者は別の世界の人たちだと。
しかし健常者であっても老齢化によって将来車椅子のお世話になる可能性は高いです。
木暮さんも鳥居さんもこう言っていました。
「車椅子は障がい者だけのものではありません。乗り物なんです。ぜひ一度乗ってみてください。」と。
私は初めて電動車椅子に乗ってみました。
確かに、障がい者用器具ではなく、乗り物だと感じました。
彼女たちはこうも言いました。
「重い荷物を持っている人を見るとその人の荷物を車椅子で運んであげることもありますよ。」
車椅子はかわいそうな人たちが乗るものではないのです。
私たちにもできるスマートな対応とは
彼女たちのこの言葉がとても印象に残りました。
「エレベーターの前に着きました。通りすがりの人がエレベーターのボタンを押してくれました。『あ、ありがとうございます』と言おうとしたらその人はもう、いなくなっていました。」
こういうスマートな対応、できるようになりたいと思いました。
まずできることは?
私は、街で障がいを持った人を見かけるとどう対応したらよいのか、まごつくことが正直あります。
その気持ちに対して今回彼女たちから良いことを聞きました。
それは「声をかけてもらうと嬉しい」ということです。
「なにかお困りですか?」
「お手伝いしましょうか?」
助けが必要なら「●●してもらえませんか」と言うし、必要でなければ「大丈夫です」と言う。
私もこれで、今までよりももっと気軽に自然に声がかけられるような気がします。
最後に、印象に残ったエピソード
これはガイドの富所さんから聞いた2つのエピソードです。
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富所さんは、群馬住みます芸人、ぐんま特使、みどり市観光大使、レクリエーション介護士など多彩な肩書をお持ちのガイドさんです。
まずひとつめ。
10秒に一度くらいの頻度で奇声を発する男性がいました。
いわゆるトゥレット症候群です。
彼はウーバーイーツの配達の仕事をしていました。
やはり奇声を発すると周りから奇異に見られることも多かったようです。
そこで彼は、料理を運ぶ前にお客さんにメールを打つことにしました。
「私は10秒に一度くらいの頻度で奇声を発する病気を持っています。ですが、美味しい料理を時間通りに届けますので楽しみにお待ちくださいね。」と。
そのメールを打つようになってから、お客さんの対応がとても優しくなったそうです。
ふたつめはスーパーでのエピソード。
そのスーパーには認知症の老人がよくやってきました。
レジで自動支払い機の操作方法がわからず、尋ねるので店員さんは教えました。
数日後、その老人がやってきましたが操作方法を忘れてしまい、店員さんはまたやり方を教えました。
何度かそういうことが続き、店員さんは思いました。
「もう勘弁してくれないかな、毎回同じこと訊いてきて。いいかげんこっちも嫌になるよ」と。
ある時、スーパー内で「認知症の症状、原因、対応の仕方」の勉強会が開かれました。
その時以降、店員さんは何度でもその老人に操作方法を教えるようになりました。
その店員さんに「最近どうですか?」と訊いたらこう応えました。
「あのおじいちゃんから毎回、新鮮なありがとうをもらって、仕事が楽しくなりました。」と。
まず、障がいや症状を知ること。
知ることによってどう対応したらいいか、共生していく道が見えてくることがあります。
今回、学びと気づきの多いモニターツアーに参加できて嬉しかったです。
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シンジーノ
- ローマと北京に駐在歴あり。海外渡航歴は36か国。日本は47都道府県踏破。「お客さんが”笑顔”で買いに来る商品」を扱う仕事がしたいと旅行会社に入って三十余年。今はその経験を基により多くの人に「旅の魅力」を伝えるべく“たびこふれ”にいます。モットーは「その土地の温度が伝わるような血の通った記事を書く。」旅はカタチには残りませんが生涯忘れられぬ宝物を心に残してくれます。たびこふれを通じて、人生を豊かに生きる力を秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきます。




























