南仏リュベロン東部:観光客が少なく地元の暮らしがよく見える村々【フランス】

<TOP画像:夕陽に輝くセーニョンの岩と村 ©Kanmuri Yuki>

美しい自然に恵まれた南仏プロヴァンスのリュベロン山地周辺には、他では見られないユニークな観光スポットがあるだけでなく、額に入れて飾りたいくらい可愛らしい村々が点在しています。

今回はその内リュベロン山地の東部と南部から、私が個人的にとても気に入った選りすぐりのスポットを紹介します。

目次

ミシュランにすら載っていない村ヴィアン

ヴィアンからの眺め
<ヴィアンからの眺め ©Kanmuri Yuki>

ヴィアンは、リュベロン山地のうち東側の大リュベロンの北方に位置します。

人口は600人余りとかなり小規模な村で、ミシュランのガイドブックにすら載っていません。

観光客がほとんどいないこの村の美しい佇まいに、私たちはすっかり魅了されてしまいました。

ヴィアン旧市街にて
<ヴィアン旧市街にて ©Kanmuri Yuki>

高台にある旧市街の入り口は時計塔とも呼ばれるサラジネ塔です。

入り口前には、昔の共同洗い場も残っていて、いまは村の連絡板などが置かれています。

古い家々が身を寄せ合うかのように建つ旧市街は、塀、壁、屋根などいたる所に緑が溢れ、そぞろ歩くだけで満たされた気分になりました。

ヴィアンでいただいた羊料理
<ヴィアンでいただいた羊料理 ©Kanmuri Yuki>

小さな村ですがレストランも数軒あり魅力的な料理を供しています。

上はル・プティ・ジャルダンというレストランでいただいた羊料理です。

ヴィアンの旧市街には、12世紀に起源をもつロマネスク様式の教会や、ルネサンス様式の家屋が並んでいます。

見学はできませんが16世紀に建てられた城なども残っています。

次にリュベロンへ行くことがあれば、必ず寄りたい村のひとつです。

ヴィアン旧市街入り口
<ヴィアン旧市街入り口 ©Kanmuri Yuki>

ヴィアン(Viens)

絶景の中のハイキングコース:オップデット渓谷

ヴィアンから約5キロメートルほど北方にはオップデット渓谷があります。

カラヴォン川を挟んで東西に高く岩山がそびえたつ約2.5キロメートルの渓谷には、3種類のハイキングコースがあります。

それぞれ所要時間は1時間、2時間、2時間半から3時間。

石がゴロゴロとした道が多いので、しっかりとしたハイキングシューズが必要ですし、小さなお子さんには適しません。

オップデット渓谷を望む展望ポイント
<オップデット渓谷を望む展望ポイント ©Kanmuri Yuki>

有難いことにオップデット村の近くにある無料駐車場からは、この壮大な渓谷を見下ろすことのできる展望ポイントがあります。

上の写真はその展望台から撮ったものです。

向かい側の岸壁の上から三分の一ほどのところに白い道が走っているのが見えるでしょうか。

これは一番長いハイキングコースの一部です。

展望台自体も崖の上
<展望台自体も崖の上 ©Kanmuri Yuki>

オップデット渓谷

※上の地図は、展望台のある駐車場のものです。ハイキングする人は、渓谷の北側か南側の駐車場を使ってください。商業施設ではないので、営業時間や入場料などはありません。

大きな岩を頂く村セーニョン

夕陽に輝くセーニョンの岩と村
<夕陽に輝くセーニョンの岩と村 ©Kanmuri Yuki>

セーニョンは西の小リュベロンと東の大リュベロンの境近くに位置する、人口1000人足らずの村です。

大きな岩を頂く姿は遠くから見ても印象的です。この岩はこの地が約2千万年前は海中にあったことを示しています。

その証拠に、よく見れば岩には、ムール貝やホタテ貝、時にはサメの歯の化石が残っています。

セーニョンの岩
<セーニョンの岩 ©Kanmuri Yuki>

岩の階段部分
<岩の階段部分 ©Kanmuri Yuki>

自然が作ったこの高台は、その後歴史の中で常に格好の見張り台として使われてきました。

この岩には今も登ることができます。ただし、階段にも岩のてっぺんにも、手すりや欄干のような防御は何一つありません。

岩の上、最も高い部分
<岩の上、最も高い部分 ©Kanmuri Yuki>

階段の下には、自治体の名において「上るなら自己責任で」「ここで起こったいかなる事故の責任も市は負わない」と明記されています。お子さんや高所が苦手な方はもちろんのこと、風の強い日、雨で岩が滑る日などは、上るか否か、くれぐれもよく考えるようにしてください。

噴水の広場
<噴水の広場 ©Kanmuri Yuki>

個人的にセーニョンは私にとってリュベロンで1、2を争う好きな村となったのですが、その理由は岩と見晴らしだけではありません。ロマネスク様式のシンプルで美しいノートルダム・ド・ピティエ教会、そこだけ時が止まっているような噴水広場に、ツタの絡まる共同洗い場。このままずっとここで時が過ぎるのを見ていたいと思わせる場所でした。

セーニョンの岩

※入場料なし。上る時は自己責任で!

番外:カミュも暮らしたルールマラン

ルールマランの街角
<ルールマランの街角 ©Kanmuri Yuki>

最後に、東部ではなく大リュベロン南側にあるルールマランにも触れておきます。

フランスの美しい村のひとつに選ばれているルールマランの人口は1000人余り。

小さいながら、レストランやカフェ、アートギャラリーやハンドクラフトのお店が軒を連ね、お土産探しにも向いていて、ハイシーズンは混雑するスポットです。

ルールマラン城
<ルールマラン城 ©Kanmuri Yuki>

旧市街の外に建つルールマラン城は、15世紀から16世紀にかけてこの地方に建てられた最初のルネッサンス様式の城です。

見学可能なのは主に16世紀の建築部分で、16世紀から19世紀にかけての家具や美術品が展示されています。

見どころのひとつである階段
<見どころのひとつである階段 ©Kanmuri Yuki>

この城には、ノーベル文学賞を受賞した作家カミュも滞在したことがあります。

若い頃のカミュに大きな影響を与えた作家アンドレ・ド=リショーと哲学者ジャン・グルニエは、両者ともこの城と縁の深い人物でした。そうした影響もあり、カミュはルールマランに居を構えたいと願い、1958年にそれを実現しました。

ルールマラン城

  • 所在地:2 Av. Laurent Vibert, 84160 Lourmarin, France
  • 開城時間:5~9月 10:30~18:45、4・10月 10:30~17:45、11~3月 10:30~12:45 14:30~17:15(入場は閉館時間45分前まで)
  • 閉城日:12月25日、1月1日、1月初頭
  • 入城料:大人8ユーロ、学生6.5ユーロ、6~12歳3.5ユーロ、6歳未満無料
  • 公式サイト:ルールマラン城 (英語)

さまざまな自然の造形に恵まれ、個性的で魅力的な村が多く点在するリュベロン地方。数日かけてゆっくり探訪するのに適した旅先です。(冠ゆき)

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冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。

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