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【栃木県】天空の楽園・鬼怒沼へエキスパートコースを行く(後編)

こんにちは!たびこふれライターの中尾です。
山岳雑誌で『鬼怒沼(きぬぬま)』を見て尾瀬の近くにこんな高層湿原があるんだ...と言っていたのが2025年6月のこと。まだまだ知らないところがあるものだ...それなら実際に行ってみようと思い、あれよこれよと計画して7月上旬に行くことになりました。せっかく行くのなら尾瀬から鬼怒沼へ縦走しようということになり、登山道の状況を調べるも、ほとんど誰も登らない登山道であることが判明。出発前はまだ見ぬ天空の楽園にワクワクドキドキ。しかし、実際に行ってみると上級者向けのエキスパートコース。朝5時から11時間半歩きっぱなし、けもの道、崖っぷち、不明瞭な登山道、激しいアップダウン。沼地で足を取られ身動きできなくなり、挙句の果てに途中遭難しました...。それでもその先にたどり着いたところは。
ここまでの道のり(前編)はこちら
目次
- 最初に鬼怒沼のこと
- 尾瀬沼への登山道
- 尾瀬沼畔から鬼怒沼への縦走のこと
- ①【2025年7月5日】鬼怒沼へ(尾瀬沼畔から小淵沢田代)
- ②【2025年7月5日】鬼怒沼へ(小淵沢田代から黒岩山)
- ③【2025年7月5日】鬼怒沼へ(黒岩山から鬼怒沼へ)
- ④【2025年7月5日】鬼怒沼に到着!
- ⑤【2025年7月5日】鬼怒沼から奥鬼怒温泉郷の加仁湯へ
- 最後に
最初に鬼怒沼のこと
鬼怒沼の概要
鬼怒沼山の南麓、標高2020m前後の高層湿原に位置する大小48個の泥炭層にできる池塘(ちとう)を浮かべた沼。チングルマやヒメシャクナゲなどが生息する高山植物の宝庫としても知られています。6月中旬頃、沼の水芭蕉が咲き出すと鬼怒沼に遅い春がやって来ます。7月は高山植物が次々と開花し、8月下旬には草紅葉がはじまり、9月中旬には紅葉で湿原全体が真っ赤にもえるような色彩に移り変わります。紅葉も終わり11月になると、草木がうっすらと雪化粧をし、沼面には薄氷が張り、渡り鳥の飛ぶ姿も見ることができます。<日光市公式WEBより引用>
鬼怒沼への登山道
鬼怒沼への登山口は①栃木県の女夫渕から往復するのが一般的です。登山道も整備されていますので一番歩きやすいコースになります。他には②群馬県の大清水からの往復するコースもありますが、途中川を渡渉するところもありますので初級者には厳しいかもしれません。①②共に8時間を超え、距離も10kmを超えるので決して簡単なコースではありません。エキスパートコースとして福島県の尾瀬沼畔からの縦走コースもあります。
①【往復】女夫渕から奥鬼怒温泉郷経由で鬼怒沼へ登るコース
YAMAPによるコース定数:33(きつい) 所要時間:8時間50分(休憩なしの場合) 距離:17.4km のぼり:1,185m くだり:1,185m
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②【往復】大清水から物見山経由で鬼怒沼へ登るコース
YAMAPによるコース定数:32(きつい) 所要時間:8時間37分(休憩なしの場合) 距離:12.8km のぼり:1,204m くだり:1,204m
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③【縦走】大清水から物見山経由で鬼怒沼へ登り、そこから奥鬼怒温泉郷経由で女夫渕へ下るコース(※または逆コース)
YAMAPによるコース定数:31(きつい) 所要時間:8時間31分(休憩なしの場合) 距離:14.4km のぼり:1,143m くだり:1,222m
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④【縦走】尾瀬沼畔から赤安山・黒岩山・鬼怒沼山経由で鬼怒沼へ登り、そこから奥鬼怒温泉郷経由で女夫渕へ下るコース
YAMAPによるコース定数:41(きつい) 所要時間:11時間40分(休憩なしの場合) 距離:22.6km のぼり:1,266m くだり:1,819m
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尾瀬沼畔から鬼怒沼への縦走のこと
前述の通り、僕は前日に御池(福島県)からシャトルバスで沼山峠登山口へ移動。沼山峠登山口から大江湿原まで下り、尾瀬沼畔の山小屋へ宿泊。翌日、尾瀬沼畔から小淵沢田代、赤安山(山頂へは未登頂)、黒岩山(山頂へは未登頂)、鬼怒沼山(山頂へは未登頂)を経由して、鬼怒沼へ。鬼怒沼から奥鬼怒温泉郷の加仁湯(かにゆ)までを縦走しました。
★前編はこちらをご覧ください⇒11回目の尾瀬は天空の楽園への前泊地として訪問 (前編)
今回の行程
●2日目:2025年7月5日
●YAMAPによるコース定数:35
●所要時間:9時間55分(休憩なしの場合)※尾瀬沼畔を5:00に出発し加仁湯に16:27に到着しましたので11時間30分(休憩あり)かかりました。
●距離:18.5km
●高低差:のぼり:1,161m、くだり:1,487m
●難易度:上級者向け
●天候:曇りのち雨のち曇り
●宿泊地:加仁湯(奥鬼怒温泉郷)
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①【2025年7月5日】鬼怒沼へ(尾瀬沼畔から小淵沢田代)
★小淵沢田代へはこちらをご覧ください⇒11回目の尾瀬は天空の楽園への前泊地として訪問 (前編)
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尾瀬沼畔の長蔵小屋を5:00に出発。5:56に小淵沢田代を横断します。ベンチは1ヶ所のみ。前日に強い雨が降ったので木道は水没していました。
②【2025年7月5日】鬼怒沼へ(小淵沢田代から黒岩山)
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小淵沢田代を過ぎると本格的な山道になります。人がほとんど通らないのですが、このあたりでは道迷いの心配はなさそうです。
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【6:24通過(出発から1時間24分経過)】只見幹線と呼ばれる送電線がありました。こんな山奥まで送電線があるなんて驚きです。
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深い林の中をアップダウンを繰り返しながら歩きます。時々、片側が崩れたところもあります。
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【7:25通過(出発から2時間25分経過)】赤安清と呼ばれる分岐点です。鬼怒沼まであと5時間10分...。このあたりから雨が降り始めましたので、雨具を着ました。
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登山道には倒木がたくさんあります。カットしているものもありますが...。
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ほとんど倒木はそのままの状態で登山道をふさいでいます。
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ギンリョウソウが咲いていました。白いこの姿から幽霊茸とも言われています。
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【9:26通過(出発から4時間26分経過)】黒岩山への分岐点です。時間がないので黒岩山には登らず鬼怒沼へ進みます(往復1時間くらいかかります)。
③【2025年7月5日】鬼怒沼へ(黒岩山から鬼怒沼へ)
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倒木を乗り越えながら進みます。実はここで登山道を見失い遭難します。道に迷った理由は倒木をよけながら進んだせいで少しずつ道から外れていったみたいです。
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遭難し始めたところです。登山道も分かりづらく不明瞭です。YAMAPのGPSを確認しながら進みますが道をどんどん外れていきます。
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え、ここはどこ?と思ったところで遭難していることに気がつきました。本来の登山道は尾根を進むのですが、沢に下りてしまっています。YAMAPのGPSを確認しながら尾根に向かいますが、深い笹や沼地に足を取られ、さらにぐるぐると沢の中をさまよってしまいます。
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小一時間ほど、沢をさまよい何とか登山道に戻りました。登山道に戻れたと分かったのはピンクリボンが見えたから。この時点で10:54。下半身と靴はドロドロです。
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はるか彼方に燧ヶ岳(標高2,356m)が見えます。
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登山道に戻っても行く手に倒木が続きます。
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【12:54通過(出発から7時間54分経過)】鬼怒沼山への分岐点です。ここも時間が押していましたので、通過します。(往復30分程度で登れます)
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鬼怒沼山(標高2,141m)です。
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鬼怒沼までもうすぐ!樹林帯を下っていきます。
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【13:31通過(出発から8時間31分経過)】緊急時のみ使用可能な避難小屋です。
④【2025年7月5日】鬼怒沼に到着!
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【13:32到着】尾瀬沼から朝5時に出発して8時間32分かかって鬼怒沼に到着しました。
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後方には尾瀬にそびえる燧ヶ岳(標高2,356m)が見えます。左奥には至仏山(標高2,228m)も見えます。
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そして前方には日光白根山(標高2,578m)が見えます。
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誰もいない...。秘境の天空の楽園です。
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金沼と呼ばれる大きな沼が鬼怒沼の中央にあります。
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鬼怒沼には大小約250の池塘(ちとう)が点在しています。後方は鬼怒沼山(標高2,141m)です。
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緑と池塘のコントラストが美しいです。
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鬼怒沼も高山植物が咲いていました。
⑤【2025年7月5日】鬼怒沼から奥鬼怒温泉郷の加仁湯へ
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【14:16出発(出発から9時間16分経過)】鬼怒沼で約30分の昼食休憩を取り、奥鬼怒温泉郷へ下山を開始します。
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登山道は少し荒れていますが、整備されていますので鬼怒沼への登山道のような道迷いがありません。
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登山道はドロドロの沼地が多いです。すでにこれまでに登山靴もドロドロになってしまっていますので、びちゃびちゃと沼地を進みました。
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【15:07通過(出発から10時間07分経過)】このあたりから急な下り坂になりました。
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片側が崖になっています。補助ロープが設置されています。
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階段を下り、一気に高度を下げていきます。
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この階段のところだけ携帯の電波がつながるみたいです。
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【15:33到着(出発から10時間33分経過)】オロオソロシの滝が見える展望台に到着しました。
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下り坂はほぼ終わり渓谷沿いを進みます。途中、1ヶ所川を渡ります。増水時は注意が必要です。
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奥鬼怒歩道を進みます。整備されているのですが、ところどころ崩れてしまっています。通過に注意が必要です。奥鬼怒歩道は道幅が狭く急こう配のところもあるので、落石などの危険があります。
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【16:10通過(出発から11時間10分経過)】おさおと橋を渡ると奥鬼怒温泉郷最奥の日光澤温泉に到着です。
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【16:12通過(出発から11時間12分経過)】日光澤温泉です(手前は温泉神社)。ひなびた感じの秘湯感あふれる一軒宿です。ここは送迎をやっていませんので、女夫渕から約2時間歩いてこないといけません。
日光澤温泉の公式HPはこちらから⇒http://www.nikkozawa.com/
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日光澤温泉から加仁湯までは車も通れる林道を歩きます。(一般車両の通行はできません)
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【16:27到着】約11時間30分の行程を経て、奥鬼怒温泉郷の加仁湯(かにゆ)に到着しました。
加仁湯の公式HPはこちらから⇒http://www.naf.co.jp/kaniyu/
最後に
登山道の特徴
●尾瀬沼畔から小淵沢田代
・最初から山道が続きます。途中、峠を越えると木道になりますが雨天時、雨天後は滑りやすいので注意が必要です。
●小淵沢田代から黒岩山
・登山道は分かりやすく道迷いはありませんが、途中、崖があり、道が狭くなりますので、滑落に注意が必要です。
●黒岩山から鬼怒沼へ
・倒木が多く、途中からピンクリボンが見えなくなり、道に迷いやすくなります。GPSで自分の位置を確認しながら登山道を外れていないか常に確認が必要です。
●鬼怒沼から奥鬼怒温泉郷の加仁湯へ
・登山道は分かりやすいですが、足元の状態が悪く、途中から一気に下り坂になります。
登山の際の注意点
●単独登山は非常に危険です。
●スマートフォンでYAMAPなどのGPSを起動して進みましょう。ただし、GPSに頼りすぎず、人が歩いた跡やピンクリボンを探しながら進みましょう。
●全体的にスマートフォンは繋がりません。遭難しないように十分注意してください。
●尾瀬沼を出発して弁当など飲食できる広いスペースは鬼怒沼までありません。途中、さっと食べられる行動食を持参してください。
●山内にはトイレがありません。携帯トイレを持参してください。
●山内には売店がありません。飲食物は多めに事前に用意しましょう。
●雨天時および雨天後の木道は足を滑らせないように気をつけてください。
●悪天候および悪天候の予報が出ている時は入山しないようにしましょう。
●登山届を必ず提出しましょう。
●山岳保険は必ず加入しましょう。
●ゴミは必ず持ち帰りましょう。
鬼怒沼登山のためのリンク集
【鬼怒沼】
【国立公園】
【天気】
※僕は山岳天気予報に「てんきとくらす」を使っています。登山指数がABCと3段階あり、A予報なら登る、B予報は検討、C予報は中止するようにしています。
【登山情報】
※僕は登山の際、「YAMAP(ヤマップ)」を使っています。GPS機能がついているので濃霧でも迷いにくいです。おすすめします。
※当記事は2025年7月4日~5日に登山した時のものです。登山の際は常に最新情報を入手して危険な目に遭わないようにご注意ください。
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中尾勝
- 旅が大好き!国内海外を問わず飛び回っていますが、海外へは2011年に渡航して以来、出国していません。今は原点に戻り国内を旅しながら日本の良さを体感中。




























