長期滞在・海外移住のリアル|現地で感じたメリット・デメリットとは?

先日、ふとGoogleフォトを開くと「思い出」にパラグアイへ移住した日の写真がアップされていた。

「そうか、もう8年になるのか」としみじみと考える。アメリカに8年、その後パラグアイに8年。さらに幼少期に過ごした香港での4年間を合わせれば、人生の半分以上を海外で過ごしてきたことになる。

最近、大学卒業後に就職したものの、さまざまな理由で「会社を辞めて海外に出たい」「長期で海外生活をしてみたい」という人の声をよく聞く。

それで今回、そんな方に向けて、著者が考える海外移住・長期滞在をしてよかったこと、正直大変だったことをまとめてみようと思う。

目次

海外移住・長期滞在してよかったこと

1. 実際に見て、体験できる

最近はYouTubeやその他のソーシャルメディアなどテレビ以外で現地の情報を入手できるチャンネルは増えたものの、自分で体験するのと、人から見聞きするのでは大きな違いがある。

その国特有の文化や食事を実際に楽しみ、現地の人と実際に交流するのは楽しいだけでなく、自分の視野を広げる助けにもなる。

パラグアイでのんびりとピラニア釣りを楽しむ著者
<パラグアイでのんびりとピラニア釣りを楽しむ著者>

アクセス数を稼ぐためか、テレビでもソーシャルメディアでも、現地の風習や文化を誇張して面白おかしく伝える傾向があり、事実を正確には反映していないことがある。

例えば「南米のパラグアイっていう国に住んでいる」と話すと、周りの人から「南米って危ないんでしょ?」「貧しい国でしょ?」とよく言われたし、今でもよくそう言われる。

他にも「メキシコは危ない」「トルコは危ない」「アフリカは貧しい」と海外と言えば「危ない」とか「貧しい」とか、ネガティブワードのオンパレードだ。しかし実際に訪れて、自分で体験することで印象が変わることもある。

南アフリカ・ヨハネスブルグ 街並み
< 南アフリカ・ヨハネスブルグ ここを見てアフリカだとすぐにわかる人はあまりいないだろう>

私たちがアフリカに対して持っているかもしれない偏見」に関してはこちらを参照。さまざまな都市や文化や季節を自分で体感すればカルチャーショックを感じることもあるだろうが、自分がこれまで持っていた偏見を打破して、広い視野を持つチャンスにもなるはずだ。

2. 外国語に触れる機会が増える

私が以前住んでいたアメリカ・シカゴにはメキシコ系移民が多い。

「自分もスペイン語が話せて会話には入れれば楽しいだろうな」と思い、Duolingoでとりあえずスペイン語レッスンをダウンロードしてみたものの、仕事を終え疲れて家に戻った後にスペイン語を学習する気にはとてもならない。

そもそもDuolingoを毎日十数分した程度では、簡単な単語は覚えられても、日常会話をこなせるレベルには到底なれない。

ニューヨーク・タイムズスクエアの喧騒
<ニューヨーク・タイムズスクエアの喧騒 ここには世界中から移民が集まる>

それがパラグアイ移住後からは、ほぼ100%スペイン語オンリーの環境に。日本語はもちろん、英語を話せる人もほとんど周りにいない。そういう環境下でスペイン語を学習した結果、2、3年で「まあまあ」スペイン語が話せるようになった。

もちろん「まあまあ」であり、8年たった今でも、会話中に意味が解らず聞き返してしまうことはある。言語学習には個人差があるので、もっと早く話せるようになる人もいれば、もっと時間がかかる人もいる。

それでも、英語やその他の外国語を習得したいと思う人にとっては、長期滞在がコミュニケーション能力を飛躍させる助けになることは間違いない。

3. 時間と心の余裕ができる

学業で多忙な留学生や駐在員の方には当てはまらないかもしれないが、ある程度の貯金を持って長期の旅やワーホリを楽しむ人は、日本の超多忙な仕事生活をいったん離れることで、一度リセットする時間を持てるかもしれない。

南米パラグアイでは時間が特別ゆっくりと過ぎる
<南米パラグアイでは時間が特別ゆっくりと過ぎる>

私もアメリカでフルタイム勤務をしていた時は、しばらく仕事と家を往復するような生活だったが、パラグアイ移住後は、しばらく時間にゆとりある生活を楽しめた。

空いた時間を使って新しい趣味を始めることもできる。例えば、車の修理、家の修理、木工仕事など、以前は他の人にお金を払って頼んでいたことを自分で勉強して行う時間も持てるようになった。

ひとつ後悔していることは、初めの2年間を効率的に使って将来のキャリアアップにつながる技術をもっと早めに習得していればよかったということ。

人それぞれ才能は異なるので、向き不向きはあるにせよ、デザインやプログラミングなどオンラインコースで新しいスキルを習得できるかもしれない。貯金はいずれは尽きるものなので、将来のことも考えて計画的に行動しよう。

海外移住・長期滞在で大変だったこと

1. 孤独感とメンタルヘルス

海外で生活しているからと言って外国語がすぐに話せるようになる訳ではない。

なかなか向上しない自分の言語力にイライラしたり、周りの人とコミュニケーションがうまく取れず孤独を感じたり。

中にはメンタルに支障をきたしてしまう人もいる。

著者が最も長く住んだ町シカゴ 冬は長くて寒いため気分もふさぎ込みがちに
<著者が最も長く住んだ町シカゴ 冬は長くて寒いため気分もふさぎ込みがちに>

日本からの駐在員の中にも、英語が話せないままアメリカに来て一年でうつ病を発症して帰国した人がいたし、かくいう私自身もアメリカでの独身生活の間に孤独感と劣等感から精神的に落ち込んでしまったことがある。

現地の人と積極的に交流して外国語を磨きたいと考えるのはわかるが、自分の言語でコミュニケーションを取る時間も大切。

「海外生活って大変だよね。自分もそうだったよ」と理解してくれる友人がひとり周りにいるだけでもだいぶ違うものだ。

2. 健康管理と医療

慣れない環境に身をおくことで当然病気になるリスクも高まるわけだが、この健康管理が意外と大変。

先進国の医療費は超が付くほど高額な場合が多いし、後進国では適切な治療を受けられる病院が近くにあるとも限らない。

私自身は幸い今まで大きな病気をしたことはないが、アメリカに住んでいた時、保険を持っていなかったために、小さな虫歯を治すのに200ドル、3本治して計600ドルも費やしてしまった。盲腸の手術に200万円かかった!という話も聞く。

パラグアイの医療費はそれほど高くないが、公立病院なら治療費が基本無料である反面、設備が不十分なうえに衛生的に問題がある場合も多い。腕のケガで一度公立病院で治療を受けたことがあるが、ロビーに野良犬が寝ているやら、廊下で吐いている患者がいるやら、野戦病院のような有様だった。

私立の病院であれば、設備も充実していて清潔だが、一回の診察料が4000円程度と少し割高になる。
長期で海外生活をする場合は保険に加入しておこう。

3. 人種差別

外国で生活するうえで避けて通れないのが「人種差別」。あからさまな人種差別を受けることはないとしても、「目を吊り上げるしぐさ」であったり、日本語訛りの外国語に対する冷笑であったり、周りからの冷ややかな態度によって徐々に自信を無くしてしまうことはある。

海外移住直後の高揚感は徐々に冷め、次に沸き上がってくるのは周りと比較して「自分は劣っている」という卑屈な感情かもしれない。人種差別とは「白人対黒人」という単純な構図とは限らない。

体の大きなアメリカ黒人の中には、華奢なアジア人を嘲笑している人もいたし、聞き取りにくいアジア人の英語をあからさまに嫌がる白人女性にも会った。

ラテンアメリカの中にも、伝統文化に誇りを持ち、かつてのコンキスタドール(征服者)・スペイン人を敵視する国もあれば、パラグアイのように逆に「金髪で青い目」という白人的な容姿に憧れる傾向の強い国もある。

海外生活を楽しむには、メンタルを強く持って小さな差別はあまり気にしないのが一番だが、日本を離れて自分がマイノリティの立場に置かれることで、さまざまな感情的な葛藤を経験しなければいけないのは確かだ。著者が海外で経験した差別に関してはこちらのブログを参照されたい。

まとめ

海外生活は正直楽しいことばかりとは言えない。言語の壁から来る孤独感や人種差別、医療の問題や経済的な問題もある。それでも、ここには書ききれなかった「海外移住してよかったこと」もたくさんある。

世界中に友だちができたし、言葉が不自由な中で人生経験を積めたので、その後の自信にもつながった。何より海外移住していなければ、妻と出会うこともなかった。海外に行ってみたいと思う理由は人ぞれぞれだが、まずは「行ってみる」ことをおすすめしたい。

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Shinji Muto

一人旅・海外勤務を経て、現在は南アフリカ人の妻と共に南米パラグアイに在住。3カ国の永住権を持ち、日本語・英語・スペイン語を操る日系アメリカ人が各地の名所を解説します。コトバラウンジ(journal.kotobalounge.com)にてウェブサイトやアプリのローカライゼーション・翻訳も承っています。

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