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【フランス】南仏リュベロン地方の小さな村たち~その1

<TOP画像:メネルブからの見晴らし ©Kanmuri Yuki>
南仏のプロヴァンス地方は、国内外ともに人気の高い旅行先です。
地中海とアルプス山脈に挟まれ、国立公園や自然公園も数多く、それぞれに美しく多様な風景を目にすることができます。
今年の初夏、筆者は2週間半ほどかけてこの地域を探訪する機会を得ました。
どこもそれぞれに良かったのですが、個人的に最も気に入ったのが、リュベロンと呼ばれる地域の村たちです。
感動の薄れぬうちに、このリュベロンの魅力を数回に分けてご紹介したいと思います。
目次
- リュベロン地方ってどこ?
- 『南仏プロヴァンスの十二か月』の世界
- ピーター・メイルが描いたプロヴァンス:メネルブ
- サド侯爵の城:ラコスト
- ホテルやレストランが複数:ボニユー
- 観光客が少ないのが逆に魅力?:グルト
リュベロン地方ってどこ?
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<5月頭はひなげしの季節 ©Kanmuri Yuki>
リュベロンは、アルプスと地中海の間あたり、距離にするとマルセイユから50kmほど北に連なる山の名前です。東西に約60km横たわる山地で、西側の「小リュベロン」の最高峰は727m、東側の「大リュベロン」の最高峰でも1,125mとそれほど高くありません。
この地域は、1977年には「リュベロン地域圏自然公園」に指定され、1997年からはユネスコの「世界生物圏保護区ネットワーク」にも登録されています。
『南仏プロヴァンスの十二か月』の世界
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<大抵の村に残るかつての共同洗濯場、写真はメネルブのもの ©Kanmuri Yuki>
1990年代に世界的ベストセラーとなった『南仏プロヴァンスの十二か月』をご存じでしょうか。
著者であるピーター・メイルが実際に住んだのも、このリュベロンです。
リュベロン地方には、他にも魅力的な村や町が点在していて「フランスの美しい村」に名を連ねる村も少なくありません。
それらの有名どころは、旅行会社のツアーの行き先に必ず組み込まれていますし、ガイドブックにも記載されています。
とはいえ、実際に旅してみると、必ずしも有名な場所=(イコール)自分にとっての一番気に入る場所とは限らないと気が付くのではないでしょうか。
今回、私も同じことを感じました。そういうわけで、この記事で紹介する村は、個人的な好みで選んであります。
まず第一回となるこの記事では、小リュベロン近くの村を取り上げます。
ピーター・メイルが描いたプロヴァンス:メネルブ
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<メネルブの周囲 ©Kanmuri Yuki>
イタリアのトスカーナを思わせるような風景の中に、細長く伸びる村メネルブはあります。
見晴らしの良い狭い丘の上に張り付くように広がるその村は、人口が1,000人にも満たないにもかかわらず、観光客用の駐車場もあれば、数軒のレストランやカフェが並び、村の中には清潔な公衆トイレまで備わっています。
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<右手にバゲットの看板があるパン屋で、この地方のお菓子ナヴェットを買いました ©Kanmuri Yuki>
メネルブという名前は、古代ローマの知恵と芸術の女神ミネルウァから来ています。
その名の由来から芸術家が訪れることも少なくなく、例えば、ピカソや、画家のニコラ・ド・スタールが滞在したことで知られます。
また、一時期ピカソのミューズだった写真家のドラ・マールは、1944年にメネルブに建つ18世紀の邸宅を購入し、その後半世紀以上毎夏メネルブに滞在したそうです。
ちなみに、このドラ・マールの館は現在、世界から足を運ぶアーティストを受け入れる滞在施設として利用されています。
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<パン屋のショーウィンドーに並ぶナヴェット ©Kanmuri Yuki>
メネルブは、「フランスの美しい村」のひとつでもあります。ただし、国際的な人気が高まったのは、ピーター・メイルの本『南仏プロヴァンスの十二か月』出版後のことだったようです。
メネルブ
サド侯爵の城:ラコスト
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<どの村も駐車場近くに詳しい地図や説明が掲げてあります ©Kanmuri Yuki>
メネルブから約6km東に位置するラコストは、メネルブよりも小さな村です。
この村の大半はアメリカの美術学校SCADによって美しく整備されています。
石畳の坂道沿いは整えられ、美術ギャラリーが並ぶ向かいには綺麗な展望台。
すれ違う人のほとんどがアメリカ人という環境で、思わずどこに来たんだっけ?と不思議な気分になります。
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<ラコストの展望スペース ©Kanmuri Yuki>
坂を登り切ったところには、サド侯爵が18世紀に所有した城跡が残っています。
サド侯爵といえば、言わずと知れた「サディズム」の語源となった人物です。
城は夏季しか見学できませんが、城前の広場からの見晴らしは一見の価値があります。
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<ラコスト、城へと上る道 ©Kanmuri Yuki>
実は、この城は2001年にデザイナー、ピエール・カルダンが購入し、修復工事を施しました。
そのため、現在、内部にはサド侯爵の時代を偲べるものは何も残っていないそうです。
サド侯爵の城
- 所在地:Chem. du Château, 84480 Lacoste, フランス
- 開館時間:月~金曜 10:00~13:00 14:00~18:00 日曜 14:00~18:00
- 入館料金:大人 8ユーロ、10~17歳 5ユーロ、学生(学生証が必要)5ユーロ、10歳未満 無料
ホテルやレストランが複数:ボニユー
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<ボニユーからはラコストがこんなによく見えます ©Kanmuri Yuki>
ラコストからさらに4kmほど東にあるのがボニユーで、小リュベロンの東の端にある村です。
人口は1,100人強とそれほど大きくはありませんが、ホテルやレストランの選択肢も多く、リュベロン観光の拠点に選ばれることも多い場所です。
また、私たちが訪れた時はちょうどマルシェ(市場)の立つ日だったため、近隣の住民も押し寄せ、かなり賑わっていました。
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<ボニユー高台からの見晴らし ©Kanmuri Yuki>
これはボニユーに限ったことではありませんが、どの村もマルシェがある日の混みようは、普段の静けさからは想像できないほどです。
車で訪れる場合、駐車場所を見つけるのも困難ですから、マルシェ自体が目的でない限り、マルシェがある日の観光は避けることをおすすめします。
ご旅行の際は、観光局や土地の人に、どの町で何曜日にマルシェがあるのか、あらかじめ聞いておくとよいでしょう。
ボニユー
ジュリアン橋
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<紀元前3世紀につくられたジュリアン橋 ©Kanmuri Yuki>
ボニユーの北方約5kmを流れるカラヴォン川には、紀元前3世紀につくられたジュリアン橋が今もしっかり掛かっています。私たちが通りかかった時は、水遊びに興じる人が河原に何人かいました。
観光客が少ないのが逆に魅力?:グルト
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<グルトの街角>
上述のメネルブとラコストを結ぶ線を底辺にして正三角形を書いたとき、上の頂点にあたる場所にあるのがグルトです。
メネルブやボニユーのように知名度の高い村ではありませんが、とても魅力的な場所でした。
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< 岩の上に積まれた石壁 ©Kanmuri Yuki>
教会の前の広場からなだらかな坂を上ると、岩の上に立つ城が見えますが、この城は個人所有のため見学することはできません。
リュベロンではどこの村もそうですが、壁をつたう植物と一体になったような玄関先、壁の石組み、そして扉の色など、どこを切り取ってもそのままポスターにできそうな町並みを楽しみながらの散策は、実に気持ちの良いものでした。
グルトの坂を上りきると、古い城壁の跡があり、そこをくぐると17世紀末のものと見られる風車が立っています。
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<甘い香り漂う門扉 ©Kanmuri Yuki>
グルト
リュベロンの魅力的な村々の紹介、まだまだ続きます。(冠ゆき)
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冠ゆき
- 山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。




























