【ギリシャ】メテオラの魅力を徹底ガイド 天空に浮かぶ世界遺産の修道院群

ギリシャといえば、青いエーゲ海に白い街並みのサントリーニ島や、アテネのアクロポリスなどの古代遺跡が有名ですが、内陸の山間部にも実は素晴らしい世界遺産があるのです。

テッサリア地方のメテオラ、巨岩の上に建つ修道院群の不思議な景観は圧巻!是非、ギリシャに来たら訪れてほしいところです。

今回は、メテオラについて、歴史やアクセス方法、修道院の観光ポイント、注意点など、詳しくご紹介します。

目次

メテオラの基本情報

アテネから北西に約350㎞、中部テッサリア地方にそびえ立つ巨大な修道院群「メテオラ」。メテオラ(Μετεώρα)という言葉は、ギリシャ語で「空中に浮かぶもの」「宙に浮いた」を意味します。

海抜600メートルの岩山の上に建つ修道院は、まさに空中に浮かんでいるかのような独特の風景です。ギリシャ人は、ほとんどがギリシャ正教徒。

ギリシャ正教会はキリスト教の一派で、東方正教会の中でも特にギリシア文化と言語に根ざした教会です。メテオラは、ただの観光名所ではなく、ギリシャ正教の信仰と修行の歴史を今に伝える神聖な場所。

メテオラは、自然の奇岩と、人間が築いた宗教建築が見事に調和している稀有な場所で、1988年にユネスコの世界遺産(文化・自然の複合遺産)に登録されました。

現役の修道院として厳かな雰囲気は今も健在。現在一般公開されている6つの修道院内には、15世紀の壁画や礼拝堂、宗教画が残っており、ギリシャ正教の伝統を感じられるでしょう。

周辺のハイキングコースも充実しており、歩くと修道院を別の角度から眺められ、トレッキング好きの人も楽しめます。

スリル満点の階段を上っていくと、色んな景色が楽しめる
<スリル満点の階段を上っていくと、色んな景色が楽しめる。>

歴史と修道院のはじまり

メテオラに行けば、誰でも不思議に思うでしょう。「なぜ、こんな変な形の巨大な岩山ができたのか?」「なぜ、あんな危険極まりない断崖絶壁の岩の上に、わざわざ修道院を建てたのか?」

この地形がどのように形成されたかは、今もはっきりとした確証はないようですが、太古の時代、このテッサリア地方は海の底にあり、その海底が何らかの理由で隆起し、自然現象で今のような奇岩が形成されたという説が有力です。

その奇岩の上に修道院を建設した理由は、信仰の追求と安全の確保にあります。13〜14世紀のギリシャは、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)の衰退と、オスマン帝国の勢力拡大という不安定な時代。

修道士たちは、外敵からの侵入を避け、静かに祈りに集中できる場所を求めて、アクセス困難なメテオラの岩山にたどり着きました。

メテオラで最初に組織的な修道院を建てたのは、アサナシオス修道士(Athanasios the Meteorite)。彼は、14世紀にメガロ・メテオロン修道院を創設しました。この修道院が、現在も残る6つの修道院の中で最も大きく、最も歴史があるものです。

メガロ・メテオロンの美しい中庭
<メガロ・メテオロンの美しい中庭>

アサナシオス修道士は、アトス山(現在も女人禁制のギリシャ正教の聖地)で修行したのち、メテオラへ移住し、巨岩の上に建物を築くことで、俗世との距離を最大限に確保したのです。

他の修道士たちも彼の影響を受け、続々と修道院を設立し、15世紀には20以上の修道院が岩の上に築かれたと伝えられています。

今でもこんな旧式のリフトで物資や人を運んでいる
<今でもこんな旧式のリフトで物資や人を運んでいる。>

当時の建設技術では、岩山に修道院を築くのは至難の業でした。現在のような道路やエレベーターはもちろんありません。修道士たちは、縄ばしごや滑車で物資を運搬し、人間自身もロープなどで吊り上げられて上り下りしていたのです。後には手掘りの階段やトンネルが造られるようになりましたが、信仰の力とは、すごいものですね。

自然の作り出した岩の裂け目が、修道士たちの修行場になった
<自然の作り出した岩の裂け目が、修道士たちの修行場になった。>

この困難を乗り越えてでも、神に近づこうとした修道士たちの信仰の強さが、メテオラの建造物からは伝わってきます。岩の裂け目の穴で暮らし、黙想をして一生を終えた苦行者もたくさんいたそうです。

信仰と文化の中心地としての役割

修道院では、単に祈るだけではなく、聖書の写本や文献の保存、学問の研究も行われていました。これは、ギリシャ文化と正教信仰がオスマン帝国の支配下で失われないようにするための抵抗の一環でもありました。

外敵の支配や迫害が続いたギリシャで、ギリシャ正教会は地下に秘密の学校などを作り、ギリシャ語と宗教というギリシャのアイデンティティを守るのに貢献していました。

現在でも、メテオラの修道院には貴重な文書や宗教画、聖具が保存されています。

現存する6つの修道院

メテオラにはかつて20以上の修道院が存在していましたが、オスマン帝国支配下や近代にかけて、多くの修道院は放棄され、現在残っているのは6つのみです。

しかし、観光客の増加とともに、文化遺産としての価値が再認識され、修道院の修復・保護が進められ、1988年には世界遺産として登録されました。

現在では、これら6つの修道院はギリシャ正教の修道士・修道女によって維持されており、祈りの場としての役割も継続しています。

それぞれの修道院には独自の歴史や魅力があります。ここでは、旅行者が実際に訪問できる6つの修道院をご紹介します。

カランバカの街にあったメテオラの周度院の地図
<カランバカの街にあったメテオラの周度院の地図>

1. メガロ・メテオロン(メタモルフォシス)修道院(The Great Meteoron Monastery)

幅広い岩という意味のプラティ・リソスの上に建てられた大規模な修道院
<幅広い岩という意味のプラティ・リソスの上に建てられた大規模な修道院>

  • 設立年:14世紀(アサナシオス修道士によって創建)
  • 特徴:規模は最大、最古の修道院。宗教博物館も併設。アトス山の建築様式を受け継ぐ16世紀の教会。
  • 見どころ:ビザンティン様式のフレスコ画、聖具、古文書、ワイン貯蔵庫、修道院創設者アサナシオスとイオアサフの墓

修道院の中でも最大規模を誇り、内部には小さな博物館が設けられており、中世ギリシャ正教の世界を肌で感じることができます。ここはメテオラ観光の出発点として最もおすすめです。

メガロ・メテオロン修道院

2. ヴァルラーム修道院(Varlaam Monastery)

アトス山にある教会と同じ十字架の構造をしたヴァルラーム修道院 
<アトス山にある教会と同じ十字架の構造をしたヴァルラーム修道院>

  • 設立年:1517年(修道士ヴァルラームの後に建設)
  • 特徴:メテオラで2番目に大きい。大ドーム型の礼拝堂が美しい。
  • 見どころ:16-17世紀のフレスコ画、滑車による古いエレベーター機構の再現展示

この修道院は景色も美しく、周囲の岩山を望むテラスからは息をのむパノラマが広がります。内部には、当時の修道士たちが使っていた食堂や生活用品も保存されています。

ヴァルラーム修道院

  • 所在地:Meteoron, Kalampaka 422 00 ギリシャ
  • 電話:+302432022277

3. ルサヌ修道院(Roussanou Monastery)

こじんまりして落ち着けるルサヌ修道院には修道女が静かに暮らしている
<こじんまりして落ち着けるルサヌ修道院には修道女が静かに暮らしている。>

  • 設立年:16世紀(女性修道士によって復興)
  • 特徴:現在は女性修道女によって運営されている
  • 見どころ:花々に囲まれた中庭、落ち着いた内装とフレスコ画

ルサヌ修道院は、比較的アクセスしやすく、女性修道女による手入れが行き届いているため、清潔で美しいのが特徴です。中庭やテラスには四季折々の花が咲き、癒しの空間となっています。

ルサヌ修道院

  • 所在地:Μετεώρων, Kalampaka 422 00 ギリシャ
  • 電話:+302432022649

4. アギオス・ニコラオス修道院(St. Nicholas Anapausas Monastery)

ルサヌーのビューポイントから4つの修道院が見える一番左がアギオス・ニコラオス
<ルサヌーのビューポイントから4つの修道院が見える一番左がアギオス・ニコラオス>

  • 設立年:14世紀
  • 特徴:小規模だが、芸術性が高い壁画がある
  • 見どころ:有名画家テオファニスによる壁画

この修道院はメテオラの中では小規模ですが、壁画は特に評価が高く、宗教画ファンには必見のスポットです。

アギオス・ニコラオス修道院

  • 所在地:Kalabaka 422 00 ギリシャ
  • 電話:+302432022375

5. アギオス・ステファノス修道院(St. Stephen's Monastery)

唯一階段がなく、橋をわたってすぐ行けるのが有難いアギオス・ステファノス修道院 
<唯一階段がなく、橋をわたってすぐ行けるのが有難いアギオス・ステファノス修道院>

  • 設立年:15世紀
  • 特徴:断崖に橋で渡れる唯一のアクセスの良い修道院。現在は女性修道院。
  • 見どころ:大きな聖堂、広々とした敷地と博物館

聖ステファノス修道院は、階段を使わず橋で渡れる唯一の修道院で、足腰に不安がある旅行者にもアクセスしやすいのが特徴です。敷地が広く、展示内容も充実しています。

アギオス・ステファノス修道院

  • 所在地:ΑΓΙΑ ΜΕΤΕΩΡΑ, Kalampaka 422 00 ギリシャ
  • 電話:+302432022279

6. アギア・トリアダ修道院(Holy Trinity Monastery)

白い十字架が映えるアギア・トリアダ修道院
<白い十字架が映えるアギア・トリアダ修道院>

  • 設立年:15世紀
  • 特徴:断崖の孤高の地に建ち、映画『007』のロケ地にも
  • 見どころ:断崖絶壁の景観、静寂な祈りの空間、外にある白い十字架

聖トリニティ修道院は、アクセスがやや難しい反面、景色が素晴らしい修道院として知られています。映画『007 ユア・アイズ・オンリー』(1981年)でのロケ地にも使用されました。

ここから見下ろす赤い屋根のカランバカの街の眺望は素晴らしい
<ここから見下ろす赤い屋根のカランバカの街の眺望は素晴らしい。>

アギア・トリアダ修道院

  • 所在地:Kalabaka 422 00 ギリシャ
  • 電話:+302432022277  

修道院見学の際の注意点

メテオラの修道院は、現役の宗教施設です。観光客であっても、最低限のマナーが求められます。

服装の注意点

宗教施設のため、露出の多い服はNG。女性はスカート、男性は長ズボンが推奨されます(入口で巻きスカートの貸出あり)。

聖ステファノス修道院以外は、階段がたくさんあるので、歩きやすい靴で。

観光時のマナー

  • 写真撮影:内部の撮影は禁止の場所も多いので、サインを確認して指示に従ってください。
  • 静粛:内部では声をひそめ、敬意を払うこと
  • 喫煙禁止:敷地内全体で厳禁です

持ち物

売店はあまりないので、水を持参。女性でスカートを借りたくない人は、自前の大判のストールなど。

入場料と休館日・開館時間

修道院によって異なるため、事前に確認を。参考サイト:修道院ごとの訪問ガイド(Visit Meteora)

各修道院は、開館時間や休館日が違うので注意が必要 
<各修道院は、開館時間や休館日が違うので注意が必要。>

メテオラへのアクセス方法

メテオラの観光の拠点はカランバカという街です。中部の山岳地帯に位置し、ギリシャの首都アテネからは約350km、電車やバスで5~6時間かかります。

カランバカの街からも、岩山の上に修道院が見える
<カランバカの街からも、岩山の上に修道院が見える>

公共の交通機関だと乗り換えやロス時間が多く、遅れなどの心配もあります。また、ギリシャの長距離鉄道は最近大事故を起こし、安全面であまり評判が良くないので、アテネからのツアーがおすすめです。

ラリッサ駅周辺は、スリが多発している危険地帯。持ち物には十分注意しましょう。

バスツアー

1日バスツアーは、だいたいラリッサ駅前から出発で、乗り継ぎや遅れの心配、ロス時間が少なく、おすすめです。全部の修道院には入場できず、入場する修道院は自分では選べないので、お任せとなりますが、ガイドがつき、写真映えのするビューポイントなどにも連れて行ってくれるのが良いですね。

参考サイト:バスツアー

公共交通機関

電車とバス

2025年5月現在、鉄道工事中のため、途中でバスに乗り換えが必要です。また、アテネ ラリッサ駅周辺ではスリが多発しているので注意!

長距離鉄道の駅、地下鉄の赤ラインで行ける。
< 長距離鉄道の駅、地下鉄の赤ラインで行ける。>

  • 出発地:アテネ ラリッサ駅(Larissa Station)→カランバカ(Kalambaka)
  • 所要時間:片道約5~6時間(Paleofarsalos駅でバスに乗換)
  • 運行会社:Hellenic Train(旧 TrainOSE)
  • チケット予約サイト(英語)

バス(長距離バス/KTEL)

  • KTEL(ギリシャの長距離バス会社)で、アテネやテッサロニキからの移動も可能。
  • アテネ→トリカラ(乗換)→カランバカ
  • 所要時間:約6時間 運行サイト 時刻表

カランバカの街から見えるメテオラの奇石
<カランバカの街から見えるメテオラの奇石>

カランバカ駅周辺には、ホテル、レストランがあり、ローカルバス、タクシー、レンタカー、現地ツアーなどで修道院へアクセス可能です。

レンタカーの場合、パーキングが難しいので注意。修道院の近くにはパーキングできず、結局、遠いところに駐車して長い距離を歩かなければならないリスクもあります。カランバカからメテオラまでのバス時刻表で確認ください。

レンタカー、タクシー、プライベートツアー

ギリシャは、道が良くないのでレンタカーはあまりおすすめしません。タクシーやプライベートツアーは、カランバカから使うのも良いでしょう。

観光のベストシーズン

メテオラは年間を通して訪問可能ですが、時期によって風景や混雑状況が大きく変わります。

季節 特徴

  • 春(4〜 6月) 気候が穏やかで花が咲き始めるベストシーズン
  • 夏(7〜 8月) 非常に暑く、観光客も多いため混雑注意
  • 秋(9〜10月)紅葉と柔らかい光で写真映え◎
  • 冬(11〜2月)雪景色が幻想的。閑散期でゆっくり観光できるが寒さ対策必須

春は緑もみずみずしく花も咲いてコントラストが美しい季節
<春は緑もみずみずしく花も咲いてコントラストが美しい季節。>

滞在する場合の拠点は、カランバカ か カストラキが良いでしょう。カランバカ(Kalambaka)は、ホテルやレストランも豊富で交通の便が良いため初めての旅行者向けです。

カストラキ(Kastraki)は、岩山のふもとにある小さな村で雰囲気抜群。落ち着いた環境で、トレッキング拠点としても最適です。

個人で、1日で全ての修道院を回るのは体力的にも時間的にも大変です。1泊すれば、疲労が少なく、神秘的なサンセットビューも楽しめて理想的です。

半日観光例

訪問修道院:メガロ・メテオロン、ヴァルラーム、ルサヌ(またはアギオス・ステファノス)

階段なしでアクセスできるアギオス・ステファノスなら、体力に自信がない方でもOK!
<階段なしでアクセスできるアギオス・ステファノスなら、体力に自信がない方でもOK!>

1泊2日のゆったり観光例

  • 1日目:午後に到着後、ルサヌ修道院やサンセットビューポイント
  • 2日目:朝から修道院巡り(3〜4ヶ所)、昼食後に移動

ハイキング・トレッキングが好きな方なら、カストラキに宿泊がおすすめ。カストラキからヴァルラーム修道院へのハイキングや、サンセットを見るコースなど、現地ツアーに参加すると安心です。

カランバカのおすすめタベルナ

アルホンダリキ(Archontariki Restaurant)は、カランバカのメイン通りにあるギリシャ伝統料理のカジュアルレストラン。

骨付のラムチョップ(ギリシャ語ではパイダキャ)は、脂の乗った肉の炭火焼の香ばしさと肉の旨味がたまらない一品。手づかみで、豪快にかじってください。山間部ならではの、キノコのソテーも絶品です。

ギリシャに来て大ファンになったラムチョップ
<ギリシャに来て大ファンになったラムチョップ>

見た目は地味だけど絶品のキノコのソテー
<見た目は地味だけど絶品のキノコのソテー>

Archontariki

  • 住所:Trikalon 13, Kalampaka, 42200
  • 電話:+30 2432022449
  • 公式サイト:Archontariki

まとめ

メテオラは、単なる観光地ではありません。断崖に築かれた修道院群は、厳しい自然と共存する、人間の信仰の力と強さを教えてくれます。

修道院内で描かれた壁画の名作を見ると、修行や祈りによって神の啓示を受けたのではと思える芸術性を感じます。

他民族の破壊や略奪を免れて生き残ってきた宗教画のイコン、福音書、十字架、盃、香炉などの展示を見ると、時代を超えて受け継がれてきたギリシャ正教の精神性、神秘性に心を動かされます。

これらは、報酬のためではなく、神への畏敬と忠誠のしるしとして、無償で作られてきた聖なるものなのです。静かに祈る修道士や修道女たちの姿を見ると、心の奥に何か温かい火がともる──そんな「魂のリトリート」になる場所、それがメテオラです。

アテネやサントリーニとはひと味違う、静寂・信仰と絶景のギリシャを体験したい方には、ぜひおすすめしたい旅先です。ぜひ、ギリシャ旅の一環として、日常を離れてこの「空中の聖地」を訪れてみてください!

メテオラ

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サラサ

ギリシャ人と国際結婚後、2000年からアテネに移住。趣味は旅行と食べ歩き。フリーランスでウェディングコーディネーター、通訳アテンド、折紙講師、ライターなどをしています。サントリーニウェディングの「グリークメモリー」運営、著書「太陽とエーゲ海に惹かれて きらめきの国ギリシャへ」(イカロス出版)

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