インドでデング熱にかかった話【予防と対策も】

インド在住10年目を迎えた田澤ともきです。皆さんデング熱はご存じですか?

インド在住者なら必ず聞いたことがある蚊が原因の感染症です。実は不覚にも罹ってしまいました。

でも、インドにいるなら避けて通れない病気の数々。体験談を書かせていただくことで、どなたかのお役に立てるといいなと思い記事にしました。

目次

インドにおけるデング熱の現状

インドでの感染対策

インドはアジアでも特にデング熱の感染が多い地域の一つです。旅行者にとっても無関係ではなく、現地の気候や医療状況、感染リスクを知ることは非常に重要です。

必要以上におびえる必要はありません。ここでお伝えしたいのは、症状や対処の仕方を知っておくことで早めの対処が行えるという利点があります。

デング熱とは?基礎知識とウイルスの特徴

体温計

デング熱は、デングウイルスによって引き起こされる感染症で、主に蚊(ネッタイシマカなど)を媒介として人に感染します。症状は発熱、頭痛、関節や筋肉の痛み、皮膚の発疹などが代表的で、「骨が砕ける熱」とも呼ばれるほどの激しい痛みが特徴です。

デングウイルスには4つの血清型があり、一度感染しても別の型に再感染すると、重症化(デング出血熱など)のリスクが高まるとされています。感染した人の血液を吸った蚊が他の人にウイルスを運ぶため、特に都市部や人口密集地域での感染が拡大しやすい傾向があるといわれています。

デング熱には特効薬がなく、治療は解熱剤を施しながら代謝によって体のウイルスを排泄する以外にありません。こうした背景から、予防が何より重要とされている感染症です。

インドでのデング熱流行の歴史

高熱で苦しむ人

インドでは、デング熱は毎年のように流行しており、特に雨季とその直後に感染者数が急増する傾向にあります。初めての大規模な流行は1963年のカルカッタで報告され、その後、インド全土で繰り返しアウトブレイクが起こっています。

近年では2023年にも、デリーやマハーラーシュトラ州などで数万人規模の感染が確認されました。都市部の人口密度の高さ、不十分な衛生環境、水たまりの多さなどが感染拡大の要因とされています。

また、各州政府は対策として蚊の駆除や啓発キャンペーンを行っていますが、気候変動や都市化の影響により、感染リスクは依然として高い状態が続いています。こうした背景から、インドではデング熱は国民的な健康課題のひとつと位置づけられています。

医療機関から見たデング熱患者の報告

くすり

インドの医療現場では、デング熱は日常的に対応を求められる疾患のひとつです。多くの都市部の病院では、デング熱が流行する季節になると専用の外来や観察病棟が設けられます。

インド政府の報告によると、感染者の多くは軽症で回復するそうです。子どもや高齢者、免疫力の低下している人は重症化のリスクが高く、入院や集中治療を要するケースもあります。

しかし、インドにいる外国人や旅行者は例外です。特にデング熱は日本ではあまり知られていないこともあり、インフルエンザやコロナと症状がよく似ています。

解熱剤の使用にも特に注意が必要で、アスピリン・抗生物質などの薬剤は出血を助長するおそれがあるため避けてください。 お薬は必ずドクターに問診をして処方してもらうのが一番です。

解熱剤はアセトアミノフェンのみ推奨されています。 薬は簡単に手に入りますし、オンラインでドクターと電話で問診もできます。自分の身を守るためにも必ず専門医に診てもらってください。

デング熱の感染体験について

くすりと体温計

インドではデング熱は珍しくありません。症状には、いくつかの共通点があります。

少なくても実際に羅漢した経験を皆さんにお話することで、期症状の見極め方や注意点を把握できると思い書いています。 とにかく早めの対応が鍵です。

個人差はあると思いますし、あくまで私の場合という事をご了承ください。またくれぐれも体調に不安がある場合は速やかに専門家の診断を受けてください。

デング熱は咳とのどの痛みがない

インドの森林

デング熱にかかると高熱や関節痛・全身筋肉痛はありますが、風邪やインフルエンザと違って、咳やのどの痛みがほとんどなかったです。

これは実際に感染した人も最初に違和感を覚える点で、「風邪っぽいのに、のどや咳には全く異常がない」という症状が特徴的です。しかし、進行スピードがインフルエンザの比ではありません。

実際、私も、午前中、普段通りに過ごしながら「少し体が痛いな」「頭がこってるな」と思っていたのも一瞬でした。2時間も経つと頭痛と全身の関節や筋肉の強い痛みが先に現れ、熱は39度まで一気に上昇しました。

しかし、それだけ熱がでても咳や喉の痛み、下痢も起こっていなかったのです。体は痛かったですが、味覚もあり、食べることができたので助かりました。

アッという間に発熱と全身痛

蚊が人にさしている

デング熱の大きな特徴の一つは、発症のスピードです。 ある日突然、何の前触れもなく体がだるくなり、数時間のうちに高熱と全身の痛みが襲ってきます。

最初は痛みの記憶からコロナを疑いました。しかし1回目のオンラインドクターは「コロナではない」とはっきり否定され、パラセタモールを処方されました。

ここでの教訓として、もしインドで急激な「発熱」に見舞われたら、日本のように自然治癒すると思わないでください。私のような自己分析も無駄です。

一刻も早くドクターに一度見てもらうべきです。 幸運にも、私は発熱があったその日の夜にオンラインドクターを問診しました。

その日の夜から解熱剤を処方してもらったおかげで、比較的軽い症状で回復しました。不幸中の幸いです。

特に「骨がきしむような痛み」「打ち付けられるような頭痛」は、デング熱特有の症状です。発熱とともに体が動かなくなるような感覚に陥いることもあります。

パラセタモールは普段から避けていましたが、今回これを飲まずに我慢はできませんでした。薬が6時間ほどで切れてくると寝返りを打つのもつらくなるほどの痛みに襲われます。

周りも「朝は元気だったのに、午後には寝込んでいた」という人が多く、急激な体調の変化でどうしたらいいか精神的パニックを受ける人も多いようです。 発熱は1日で収まらず7-10日ほど続くため、体力の消耗も激しくなります。

これを縮める特効薬は今のところありません。 とにかく異変には気づくはずですから、早めに病院を受診し、血液検査などで診断を受けることが重要です。

デング熱とマラリアの違い

蚊が人に2匹さしている

最初に誤解のないように言っておくと、インドの蚊にさされたら全部デング熱やマラリアになるわけではありませんので安心してください。蚊にさされた人の体調や免疫力の低さで感染するかどうかも異なります。

デング熱とマラリアは、いずれも熱帯地域で多く見られる感染症で、旅行者にとっては区別が難しい病気です。 しかし、感染経路・症状・治療方法には明確な違いがあります。

まず感染経路として、デング熱はウイルス性で「蚊が人の血を吸うことで広がる」のに対し、マラリアは「原虫」が原因で、蚊を介して体内に入り赤血球を破壊します。

また、マラリアには周期的な発熱(寒気・高熱・発汗の3段階)が特徴で、夜間に症状が強く出ることが多いです。 一方デング熱は、連続した高熱と強い筋肉痛・頭痛が顕著で、出血や皮膚の発疹を伴うこともあります。

治療法も異なり、マラリアには抗マラリア薬がありますが、デング熱には特効薬がなく、対症療法が基本です。

両者を見分けるためには、速やかに病院での検査を受けることが求められます。その時必要な情報として「発熱はいつからか」「薬のアレルギーはないか」を最初にはっきりと話すとスムーズです。

デング熱の予防対策

お茶

デング熱は、治療薬が存在しないため「予防こそ最大の対策」です。とくにインドのように年間を通じて気温が高く、蚊が活動しやすい地域では、事前の準備が感染リスクを大きく左右します。

虫除け対策をはじめ、気候や季節によって注意点も異なるため、旅行前から正しい知識を身につけておくことが重要です。また、現在進行中のワクチン開発についても知っておくと、将来的な安心材料になるでしょう。

虫除け対策と推奨商品

虫除け対策と推奨商品

デング熱は蚊が媒介するため、虫除け対策が最も基本的かつ有効な予防法です。 とくに日中に活動するネッタイシマカという種類の蚊によって感染するため、昼間でも油断は禁物です。

衣服はできるだけ長袖・長ズボンを選び、肌の露出を減らすことが第一歩です。併せて、虫除けスプレーやクリームの使用が効果的です。 日本から持参する場合はクリームタイプのもので「ディート(DEET)」または「イカリジン」配合の製品を選びましょう。

また、宿泊先では蚊帳や蚊取り線香、電気式の虫除けマットなどの併用もおすすめです。その際は、くれぐれも変圧器をお忘れなく。

屋外での活動が多い場合は、携帯型の蚊よけ器具やティ-ツリーのアロマオイルも効果があります。 これらの対策を日常的に意識することが、感染リスクを最小限に抑える鍵です。

もちろんインドで現地調達するのもありですよ。ODOMOS(オドモス)はスプレー・クリームタイプでインド中どこにでもある虫よけアイテムです。

写真は、パパイヤの葉のシロップ。パパイヤの葉には血小板を回復する作用があり、甘いのでお子様でも飲めます。

季節ごとの予防法と注意点

季節ごとの予防法と注意点

インドでは6月から9月の雨季(モンスーン)にかけて、デング熱の感染が最も増加します。 これは、雨水が溜まって蚊の繁殖地となる場所が増えるためで、都市部でも注意が必要です。

2025年は例年になく雨が各地で4月からたびたび降り始めました。その影響で蚊の発生もいつもより警戒されています。 雨季には道路や空き地に水たまりができやすく、そこから蚊が大量に発生します。

屋外での活動はできるだけ避け、肌の露出を減らす服装と虫除け対策を徹底することが重要です。 一方、乾季(11月〜2月)は比較的リスクが低くなるとはいえ、完全に安心はできません。暖かい地域では蚊が一年中生息しているため、通年を通した予防意識が求められます。

写真はパパイヤの葉のジュース。さきほどのシロップと異なり薬のように苦い味ですが、効きそうです。

ワクチンの開発状況

カプセル薬の写真

近年、デング熱ワクチンの開発は世界的に注目されており、特に感染リスクが高い地域では実用化が進んでいます。 現在、代表的なワクチンとして「デングワクシア(Dengvaxia)」が存在し、一部の国では使用が許可されています。

ただし、このワクチンは過去にデング熱の感染歴がある人にのみ推奨されており、未感染者に投与すると重症化リスクが高まる可能性があると報告されています。

そのため、一般的な旅行者に対してはまだ十分に普及しておらず、日本国内では未承認です。 一方、2022年には日本の製薬企業「武田薬品工業」が開発した新たなデング熱ワクチン「QDENGA(キューデンガ)」が欧州やインドネシアで承認されるなど、前向きな動きも見られています。

2025年3月の日経新聞の記事によると、武田製薬工業が日本企業発のデング熱ワクチンの販売を開始するというニュースがありました。今までは特効薬もワクチンも限られていたのでこれは嬉しいニュースです。

まとめと今後の対策

デング熱は、インド旅行において避けては通れない感染症の一つです。現地では毎年のように流行が報告されており、特に雨季を中心に多くの感染者が発生しています。

ウイルスを媒介する蚊の活動は日中にもおよび、都市部でも油断できないため、渡航前から正しい知識と対策が必要です。虫除け製品の使用や長袖の着用、水たまりの近くを避けるといった基本的な予防法は、誰でもすぐに実践できます。

ワクチンの開発は進展しているものの、まだ日本では接種が一般的ではないため、現段階では「かからない努力」が最も重要です。今後、インドへの旅行や滞在を計画する際には、季節や地域ごとのリスクを確認し、常に最新の感染症情報をチェックすることが、安全な旅への第一歩。

くれぐれも安全なインド旅行を楽しんでください。

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田澤ともき

アーユルヴェーダがきっかけでインド在住。ハイテクから古代伝統まで、100人100色楽しめますよ。インドならではの出来事や、インド生活についてお届けします。

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