【メキシコ】テキーラ発祥のテキーラ村へ!蒸留所やアガベ畑を巡る

メキシコ第二の都市、グアダラハラ。その郊外には、テキーラ発祥の地として知られる小さな村「テキーラ村」があります。蒸留所が点在するせいか村にはほのかに甘い香りが漂い、のんびりとした時間が流れていました。

ひとたび街を出れば、彼方まで広がるアガベ畑。強い日差しが隅々まで照らし、乾燥した風が爽やかに抜けていきます。
今回はそんな土地で育まれたテキーラの魅力をお届けします。

目次

テキーラってどんなお酒?

テキーラの原料はブルーアガベ。どこで育てたものでもOKというわけではなく、指定された産地での栽培・収穫が必須です。

さらに蒸留の回数、アルコール度数、添加物の制限――。細かな条件をクリアして、初めて「テキーラ」として世に出ることができます。

そんな厳しい基準のもと、メキシコでは多種多様なテキーラが生まれ、そのどれもが個性を光らせています。

テキーラ蒸留所の様子
<テキーラ蒸留所の様子>

テキーラと聞くとどんなイメージを持っているでしょうか。メキシコを訪れる前の私にとって、それは「強くてチャラいお酒」。

正直なところ、お酒に詳しくない私はあまりいい印象を持っていなかったのです。きっと同じように感じている人も少なくないはず。

バラエティ番組で、可愛らしいアイドルが「好きなお酒はテキーラです」と言ったとき、スタジオがざわ...とした光景を今でも覚えています。その時は特に疑問も抱かず、「この人、酔うのが好きなんだな。」と思っただけでした。

しかしメキシコに来てそんなイメージは見事に覆されました。テキーラは"酔うため"のものではなく"味わうため"のもの。ごく当たり前のようでいて、あまりお酒を楽しんでこなかった私には新鮮な考え方でした。

他のお酒と同じようにテキーラの質は幅広く、手早く酔えることを目的としたものもあります。けれどメキシコで味わうこだわりのテキーラは格別。


お酒に酔いやすい私でも楽しむことができたのも驚きです。ちびちびと味わいながら、水をはさみ、またひとくち。こんなふうにゆっくり楽しめるお酒が私には合っていたのかもしれません。

蒸留所で感じた"生きている"お酒の力

テキーラ村を訪れた私は、まず蒸留所の見学へ向かいました。実際に作業をしている人たちの様子を見ながらスタッフの説明に耳を傾けます。

ちょうど収穫したアガベをカットして、加熱する機械へ投入する作業の真っ最中。使うのは、外に広がる葉ではなく根っこだというから驚き。

テキーラの作業の様子
<作業の様子>

見学しながら転がっているアガベをじっと見ていると「食べてみる?」とスタッフが声をかけてくれました。ひとかじりしてみると、ほんのり青臭さはあるものの、ほとんど無味。

これを加熱して糖化させると甘みが引き出されるのだそうです。

加熱後のアガベ。見た目も黒糖っぽい
<加熱後のアガベ。見た目も黒糖っぽい>

加熱されたアガベも味見させてもらいました。するとさっきまでの雑草っぽさはどこへやら、繊維からジュワッと甘い汁が。

パイナップルのような味わいに、どこか黒糖を思わせる香り...。思わず「もう一つください」とおかわりしちゃいました。

発酵途中。プクプクしている
<発酵途中。プクプクしている>

糖化したアガベは細かく粉砕され、樽の中で発酵させるそう。はしごを登って上から覗き込むと、シュワシュワという音を立てながら泡立っていました。

「生きてる!」つい声に出してしまうほど、エネルギーに満ちた発酵の過程がそこにはありました。鼻をかすめる、酸っぱい微生物の香り。これがお酒になるとは、少し不思議です。

発酵後のアガベ

発酵を終えたアガベは蒸留され、そのまま製品になることもあれば、さらに樽で熟成を重ねることもあります。熟成にはワインの古樽が再利用され、ブランドによって選び方にもこだわりがあるのだとか。

そして、いよいよ試飲タイム。説明を聞きながら次々とテキーラを味わっていきます。スタッフのお姉さんは、「飲みたいだけどうぞ」というスタンス。にこにこと何杯も注いでくれるので、自然と酔いがまわっていきます。

テキーラの熟成の違い

テキーラの熟成による味わいの違いについても丁寧に教えてくれました。無熟成のものは、シャープで野性味あふれる味わい。熟成を重ねるほどに香りはまろやかになり、甘みやコクが深まっていくのだそうです。

たしかに若いテキーラは癖があり、尖った印象。一方、長く熟成されたものは、樽の香りをまとっていてスモーキーな余韻を感じる。気づけば、ふわりと心地よい酔いのなかにいる自分がいました。

Tequila Don Cayo

  • 住所:Salvador Allende 425, Tejonera, 45350 El Arenal, Jal., メキシコ
  • 電話:+52 33 1582 2900
  • 営業時間:9:00〜15:00/16:00〜19:00 土・日曜 9:00〜15:00

小さな村とアガベ畑に魅了されて

その後テキーラ村を散策しました。正直、酔っていてぼんやりとした時間を過ごしていたように思います。

テキーラ村の様子
<テキーラ村の様子>

今にして思えば、街に流れるのんびりとした空気が、私の心をほどいてくれていたのでしょう。メキシコは場所によっては治安が気になる地域もあるけれど、この村は穏やかで落ち着いていました。

異国にて、昼間から眠くなれる。そんなささやかな幸せをしみじみと噛みしめました。テキーラ村は、世界中からテキーラ好きが集まる村。

お酒の街らしく活気はあるけれど、決して気取らない。ゆったりとした中米特有のリズムに包まれています。

ずっと遠くまで続くアガベ
<ずっと遠くまで続くアガベ>

街をひととおり歩いたあとは、近くのアガベ畑へ。西日を浴びて、ほんのりと色づくアガベがとてもきれいでした。

ここ数日、日本から来た友人と一緒に旅をしていましたが今日でお別れ。友人は先に帰国します。

私の旅はまだまだ続くので、日本が恋しい。日が傾くと、なぜこんなにも寂しさに焦点が当たるのでしょうか。温かい色をしていた畑はどんどんと暗くなっていってしまう。

夕方の少し冷たい風に吹かれながら、ちょっぴり、しみじみ。

車窓から見えるテキーラ村
<車窓から>

テキーラ村から帰る車内。ふと窓の外を見ると、ぽつんと満月が浮かんでいました。その下に広がるアガベ畑。月光に照らされ、お行儀よく並んでいる。

テキーラには、派手なイメージを持っていたけれど、そうじゃないかもしれない。乾いた土地に根を張るアガベ。その自然な甘さを引き出すお酒。朗らかな村の空気。

本当はテキーラってもっと穏やかだし、素朴だ。改めてそう感じました。

おすすめ専門店を紹介

テキーラ村で製造過程を見学した私ですが、「他のブランドも知りたい」「日本にいるお酒好きの友人に何か送りたい」。そんな思いが湧いてきました。

トラケパケの街並み
<トラケパケの街並み>

そこで向かったのがグアダラハラのすぐ隣、トラケパケ。創建はグアダラハラよりも古い1548年。ヨーロピアンな建物が並ぶ街には、あちこちにアート作品が展示され色彩に満ちています。

近くにテキーラ村があることから専門店も多くあり、世界中のテキーラ愛好家が訪れる場所でもあります。

EL BÚHO TEQUILASの外観
<EL BÚHO TEQUILASの外観>

数ある専門店の中でおすすめなのが、【EL BÚHO TEQUILAS(エル・ブホ テキーラス)】。テキーラ界隈で"カリスマ"と称されるエンリケ氏が営むお店です。選び抜かれたテキーラやメスカルが、常時1000種類以上揃っています。

EL BÚHO TEQUILASの店内
<EL BÚHO TEQUILASの店内>

店内にはテイスティングコーナーがあり、気になる銘柄を試すことができます。好みや、「もっと香りが強いタイプはある?」といった相談にも親切に応じてくれます。

丁寧な対応と、豊富な知識。エンリケ氏のテキーラへの情熱がひしひしと伝わってきました。

せっかくテキーラ村まで来たのなら、ぜひトラケパケにも足を伸ばしてほしい。この街ならきっと特別な一本に出会えるはずです。

私も自分へのお土産に一本選びました。すでに重量オーバー気味のバックパックに、そっと詰め込んで。もうかなり重いし、肩も痛い。それでも、この味わい深い一本を手に入れたことに後悔はありません。

EL BÚHO TEQUILAS

  • 住所:C. Juárez 164-B, Centro, 45500 San Pedro Tlaquepaque, Jal., メキシコ
  • 電話:+52 33 3659 0863
  • 営業時間:月〜土曜 10:00〜20:30 日曜 10:00〜20:00
  • 公式サイト:EL BÚHO TEQUILAS 

次回は同じくメキシコの地酒、メスカルをご紹介します。南東部、オアハカで出会った新たな一本。

こうして私の荷物は、また少しずつ重みを増していくのでした。

※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

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