物乞いにお金を渡す前に考えるべき3つのルール

海外旅行は、自分の視野を広げるのにも役立つ楽しい体験であると同時に、世の中の冷たい現実を痛感する瞬間でもある。

例えば、世界に溢れるスラム街と物乞い。東南アジアやアフリカ、南米のみならず、ヨーロッパやアメリカのようないわゆる先進国を旅行している時でさえ、物乞いを目にするのは珍しいことではない。

では、お金を求められたらどうだろう。「無視するのもかわいそうだけど、付きまとわれたらどうしよう」そんな風に感じる海外旅行者も多いのではないだろうか。

この記事では、日本人観光客を対象に実施したアンケート結果とともに、お金を渡す前に考えるべき3つのルールを紹介しよう。

目次

1. 物乞いに遭遇したらどうする?

インド・デリーの貧困地区
<インド・デリーの貧困地区>

まず、海外旅行経験のある日本人約20名に次の3つの質問をぶつけてみた。

  1. 海外旅行中に物乞いを見たことがありますか?
  2. 物乞いに何かを渡したことがありますか?
  3. 物乞いにお金を渡すのは正しいことだと思いますか?

結果は次の通り。

1. 海外旅行中に物乞いを見たことがありますか?
はいー84.2% いいえー15.8%

2. 物乞いに何かを渡したことがありますか?
はいー52.6% いいえー47.4%

3. 物乞いにお金を渡すのは正しいことだと思いますか?
はいー15.8% いいえー15.8% わからないー68.4%

物乞いを見たことがあると回答した人は約85%。つまり海外旅行をする大多数が物乞いを目にするようだ。ところが、2つの目の「何かを渡したことがあるか」という質問になると事情は異なり、人によってだいぶ対応が違うことがわかる。

最後の「お金を渡すのは正しいことだと思うか」という質問では、大多数が「わからない」と回答。物乞いには頻繁に遭遇するものの、対応に悩んでいるのがわかる。

2. お金を渡す前に考えるべき3つのルール

物乞いにお金を渡すかどうかは、難しい問題だ。その時の状況や国によっても、対応の仕方はだいぶ異なるだろう。唯一の正しい答えというものはないかもしれないが、これからご紹介する3つのルールを守れば、時と場所に応じた賢明な決定をする助けになるだろう。

ルール1:現地の法律を尊重する

意外に思うかもしれないが、「物乞い行為」を制限または禁止する法律というものが世界には数多く存在する。例えば、タイでは物乞いはすべて法律で禁止されており、当局も物乞いにお金をあげないよう市民に呼び掛けている*1。

インドでは物乞いを禁止する連邦レベルの法律は存在しないが、州によっては「物乞い行為」が犯罪行為として罰則の対象となるようだ*2*3。実は日本でも「物乞い行為」は軽犯罪法一条で禁止されている。

こういった法律の制定には賛否両論あるだろうが、物乞い行為が禁止される国や地域では当然観光客が物乞いにお金を与えることも推奨されていないことを覚えておくとよいだろう。

逆にアメリカでは「Anti-panhandling law(物乞い禁止法)」なるものがさまざまな州や都市で制定されていたが、憲法で保障されている「言論の自由」や「慈善的な資金提供の訴え」を侵害しているとして近年は違憲判決が出ている。

フランスでは一定の条件下では物乞いは合法だが、「攻撃的な物乞い行為」や「子どもを使った物乞い」は禁止されており、違反すると罰金や拘禁刑が科される場合がある。

私が住むパラグアイでは物乞いを禁止する明確な法律は存在しない。妻の出身国である南アフリカでも物乞い行為は禁止されていないが、子どもを使った物乞い行為は違法となるようだ*4。

パラグアイや南アフリカの貧困に関しては、こちらのブログを参照したい。国や州によって法律は異なるので、旅行に出る前にその国の法律と地元当局が出しているガイドラインを調査しておこう。

>>ブログについてはこちら

パラグアイの首都アスンシオンのスラム街
<パラグアイの首都アスンシオンのスラム街>

ルール2:自分の身を危険にさらさない

当然ながら、慈善行為をしたい場合でも、まずは自分と家族の安全が第一だ。インドを旅行していた時、子どもたち数人にお金をねだられて服を引っ張られたり、散々な目にあったことがある。危険を感じたら、すぐにその場を立ち去ろう。

例え、物乞い行為が法律で規制されていなくても、夜間や人通りの少ない場所で安易に財布を出すのも賢明とは言えない。自分の今いる状況を考えて現金を差し出すのが安全とは思えない場合は無視するのが一番だ。

昼間、公共の場であったとしても人前で財布から現金を抜き出すより、いざというときのために胸ポケットに少額入れておくほうがいいかもしれない。

ルール3:相手の身を危険にさらさない

物乞いをしている本人の健康や安全も考慮しよう。明らかな薬物中毒者やアルコール依存の人に現金を渡すのは、本人のためにもならないどころか危険にさらすことにもなる。

例えばアメリカを旅行していた時、若い子からお金をせがまれたので気の毒に思い小銭を渡したが、後日仲間とたばこをふかしているの見て残念な気持ちになったことがある。

ロンドンに拠点を置くホームレス支援団体Thames Reach*5によると、ロンドンで物乞いをしている人々の80%が、クラックコカインやヘロインを含む薬物購入のために物乞い行為を行っているという。

もちろん、すべての路上生活者が薬物中毒者であるわけではないが、お金をあげるかどうか決める際の判断材料にしよう。

パナマの子どもたち
<パナマの首都パナマシティの貧困街でサッカーに興じる子供たち>

3. 個人的な決定

私の妻は南アフリカ出身で、まだ幼い時に両親をふたりとも亡くしたために一時非常に困窮したそうだ。人生とは不公平なもので、いつどこで転落するかわからない。それで貧しい人には私以上に同情的だが、それでもお金を渡すことはおすすめしないという。理由は簡単で、渡したお金がどのように使われるかわからないからだ。

それで私たちは物乞いに出会ったら、食べ物を渡すようにしている。果物やミルク、パンなど基本的なものを袋に入れて物乞いに渡したことが何度もある。これは私たちの個人的な決定だが、それでトラブルが発生したことは今のところない。

物乞いに何も渡さなくて後悔したこともある。例えば、トルコを旅していた時、シリアのパスポートを持ち、幼い子どもを抱いた男性からお金をしきりにせがまれた。

その時少し急いでいたので、煩わしく思い足早に立ち去ることにした。ところがその後、当時トルコに流入していたシリア人難民の窮状を聞いて、その男性の必死な表情を思い出し、なんだか申し訳ないことをしたなと思ったものだ。

4. まとめ

海外旅行は人生を豊かにしてくれる楽しい経験であると同時に、人生が不平等であるという現実を突きつけられる瞬間でもある。

物乞いに対する考え方や法律は国や地域によって異なるので、唯一の正しい方法というものはないかもしれない。

それでも、この記事にある3つのルールを守り、思いやりを持って行動すれば、海外旅行を安全に楽しく過ごせるに違いない。

出典:

  • *1 社会保障人権保護相 「物乞いにカネを与えないで」 背後に犯罪組織 警察などと合同取締り (bangkokshuho.com)
  • *2 Laws related to Begging in India - Is it Crime? (restthecase.com)
  • *3 路上の物乞い追放、トランプ氏娘の来訪目前に インド - CNN.co.jp
  • *4 South Africa - Is it illegal for children to beg? - The Legal Atlas for Street Children
  • *5 Thames Reach | Ending street homelessness - Thames Reach

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Shinji Muto

一人旅・海外勤務を経て、現在は南アフリカ人の妻と共に南米パラグアイに在住。3カ国の永住権を持ち、日本語・英語・スペイン語を操る日系アメリカ人が各地の名所を解説します。コトバラウンジ(journal.kotobalounge.com)にてウェブサイトやアプリのローカライゼーション・翻訳も承っています。

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