ガストロノミーツーリズムとは? 知って味わう、食文化に触れる旅

ガストロノミーツーリズム イメージ 畑 野菜

近年、単なる観光だけの旅行ではなく、旅先の歴史や文化、自然などをより深く知るための旅のスタイルに注目が集まっています。その一環として人気が高まりつつあるのが、旅先の食文化に触れる「ガストロノミーツーリズム」。

食を通してその土地の文化や歴史を学びつつ、より深く地域の魅力が体験できるガストロノミーツーリズムについて、その定義や魅力、取り組み事例などをご紹介します。

目次

<1. ガストロノミーツーリズムとは>

<2. 観光庁が推進! ガストロノミーツーリズム推進事業とは>

<3. ガストロノミーツーリズムでできること>

<4. 日本におけるガストロノミーツーリズムの取り組み例>

<5. ガストロノミーツーリズムに触れやすい海外旅行先の国>

1. ガストロノミーツーリズムとは

「ガストロノミーツーリズム」とは、訪問する土地の食文化や食に関連する体験を楽しむことを目的とした観光のこと。観光庁はガストロノミーツーリズムを「その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、食文化に触れることを目的としたツーリズムのこと」と定義しています。

ガストロノミーツーリズムには「食を通してその土地の魅力を発見する」という意味合いがあり、単に訪問する国や都市での食事を楽しむだけでなく、食材の産地を訪問したり、食に関する歴史や習慣を学んだり、料理教室や食に関するフェスティバルに参加したりと、食に関連する幅広い活動や体験が含まれます。ワイナリーの訪問やワインの飲み比べなどを楽しむ「ワインツーリズム」もガストロノミーツーリズムの一種です。

2. 観光庁が推進! ガストロノミーツーリズム推進事業とは

近年、日本もガストロノミーツーリズムに力を入れており、観光庁主導で「地域一体型ガストロノミーツーリズム推進事業」に取り組んでいます。

「地域一体型ガストロノミーツーリズム推進事業」の目的は、外国人旅行者からの需要が高い「日本の食」の領域において、魅力的なガストロノミーツーリズムコンテンツを生み出し、外国人旅行者の訪日や地方への分散を促進すること。ガストロノミーツーリズムに取り組む都道府県や市町村、観光地域づくり法人(DMO)、民間企業に対して経済支援を行い、さまざまな関係団体が連携して、ガストロノミーツーリズムに取り組めるようにすることで、地域における観光分野の経済波及効果を最大化することを目指しています。

3. ガストロノミーツーリズムでできること

食べるのが好きな人、さまざまな土地の食文化に興味がある人なら見過ごせないガストロノミーツーリズム。ガストロノミーツーリズムにはどのような魅力があり、どんな体験ができるのでしょうか。

その地の食文化に触れられる

「食文化」という言葉が象徴するように、食はその土地の文化や風土と密接に結びついています。

ガストロノミーツーリズムをするということは、単に旅先での食を楽しむだけでなく、食の背景を知ることを意味します。その土地の食文化に触れて、「なぜそのような食べ物が生まれたのか」「その料理や食材はどのように作られているのか」「その食べ物はその土地の人にとってどのような意味をもつのか」など、食の背後にあるストーリーを知ることで、その土地やそこで暮らす人々のことをより深く理解することができるでしょう。

その地の料理の歴史が学べる

料理はその土地の歴史とも深い関わりがあり、料理自体にもそれぞれの歴史があります。

ガストロノミーツーリズムは、その土地の食やその背後にあるものについて「知る」「学ぶ」ことを大切にしているため、ガストロノミーツーリズムを通して、その土地の料理の歴史を知ることができます。その土地の料理の歴史を学ぶことは、観光スポット巡りとはまた違った観点から、その土地の暮らしや歴史を知ることにつながるはずです。

おいしい料理、おいしい飲み物に出会える

「知る」「学ぶ」だけでなく、もちろん「味わう」こともガストロノミーツーリズムの醍醐味です。

食を通して地域の魅力に触れるガストロノミーツーリズムだからこそ、その土地ならではのおいしい料理やおいしい飲み物に出会えるチャンスがたくさんあります。その土地の食を深堀りするガストロノミーツーリズムだからこそ、よその人にはあまり知られていない隠れた地域の名物や、珍しいグルメに遭遇できる可能性も高まるはずです。

普段できない食体験ができる

旅先だからこそ、普段はなかなかできない食体験ができるのもガストロノミーツーリズムの魅力。農園や工場を見学したり、酒蔵やワイナリーを巡って飲み比べをしたり、地元の人に教わりながら地域の名物料理や特産品を作ったり、野菜や果物の収穫体験をしたりと、食にまつわる体験は多岐にわたります。

ガストロノミーツーリズムを軸にしたツアーの中には、地域の農園や家庭に泊まって、現地での生活を体験しながら食文化に触れられるものもあり、一生忘れられない体験ができるかもしれません。

4. 日本におけるガストロノミーツーリズムの取り組み例

世界的に旅先での「コト」消費を重視する機運が高まる中、日本でもガストロノミーツーリズムに力を入れる地域が増えており、成功事例も出てきています。ここでは、国内における4つのガストロノミーツーリズムの取り組み例をご紹介しましょう。

しずおか型ガストロノミーツーリズム

日本一の高さを誇る富士山、日本一の深さを誇る駿河湾など、雄大な自然を擁する静岡県は食の宝庫。静岡県は、「美味ららら旅」と題して、土地の食の背景にある物語を知り、体験し、深くゆっくりと思い出を刻む、記憶に残るガストロノミーツーリズムを提案しています。

養鰻(ようまん)業発祥の地、浜名湖で鰻(うなぎ)の養殖場を見学した後に、秘伝のたれを使ったうな重に舌鼓を打ったり、遠州で地酒&醤油蔵を巡り、発酵の食文化を満喫したり。ガストロノミーツーリズムを体感できる複数のスポットを組み合わせれば、自分だけのガストロノミーツーリズムが楽しめます。

ONSEN・ガストロノミーツーリズム

ONSEN・ガストロノミーツーリズムは、日本全国にある温泉とガストロノミーツーリズムを融合した新しい体験を提案しています。「めぐる」「たべる」「つかる」を切り口として、温泉地を拠点に、食や自然、文化・歴史をウォーキングなどで体感した後は、温泉に浸かってその土地ならではの食を堪能。日本各地の温泉地で「ONSEN・ガストロノミーウォーキング」が開催されており、ウォーキングイベントと食、温泉がセットで楽しめます。

5. ガストロノミーツーリズムに触れやすい海外旅行先の国

せっかくなら海外でガストロノミーツーリズムを楽しみたいと考えている人もいるのではないでしょうか。ガストロノミーツーリズムはもともとヨーロッパで先行している旅のスタイル。ヨーロッパをはじめ、世界のさまざまな国でガストロノミーツーリズムが楽しめます。

スペイン

スペイン料理ピンチョス
<出典元:写真AC

ガストロノミーツーリズムを語るうえで欠かせないのがスペインです。とりわけ世界屈指の美食の聖地といわれるバスク地方のサン・セバスチャンは、平方メートルあたりのミシュランの星の数が世界トップクラスで、「世界のベストレストラン50」の常連店も輩出しています。

山・川・海に囲まれたサン・セバスチャンは食材が豊富。100軒以上のバルがひしめき合う旧市街では、サン・セバスチャン発祥の小皿料理「ピンチョス」をはじめとする独特のバル文化や、伝統的なバスク料理を楽しむことができます。地産地消をモットーにしているため、ここでしか味わえないオリジナルの美食の数々に出会えるのも、サン・セバスチャンが世界の美食家に支持されるゆえんです。

イタリア

フィレンツェ風ステーキ
<出典元:写真AC

イタリアも世界が認める美食大国のひとつ。日本では「イタリアン」として一括りにされがちですが、郷土色豊かなイタリアは同じ料理でも地域によって食材や調理法が異なるため、「イタリアにはイタリア料理はない」といわれるほどです。

イタリアに足を運んだら、リグーリア州の「パスタ・ジェノヴェーゼ」、ロンバルディア州の牛すね肉の煮込み「オッソブーコ」、トスカーナ州の「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(フィレンツェ風ステーキ)」など、その土地ならではの郷土料理を楽しみましょう。オリーブオイル工場を見学したり、ワイナリーを巡ったりと、イタリアの食の裏側をのぞいてみるのもいいですね。

フランス

パリの牡蠣プレート
<出典元:写真AC

フランスもガストロノミーツーリズムに最適な国のひとつ。ミシュランで星を獲得しているファインダイニングや街のビストロなど、多彩なダイニングでの食事はもちろん、マルシェで新鮮な食材を調達したり、ベーカリーやパティスリーを巡ったりして暮らすようにフランスの食文化に触れるのもいいでしょう。

フランスでは、さまざまな地域や都市が食を通した地域の魅力発信に力を入れているので、見学や体験ができる施設も豊富。ワイナリー見学やテイスティング、チーズテイスティング、マスタード作りなどができるツアーに参加するのもおすすめです。

タイ

タイ料理 パッタイ
<出典元:写真AC

アジアでは、タイも多様な美食体験ができる国のひとつ。77の都県があるタイには、その土地でないと食べられない、バラエティ豊かな郷土料理が多数存在します。ベトナム文化が融合したサコンナコーン県の郷土料理、マレーシア料理の影響を受けたサトゥーン県の郷土料理など、まったく表情の異なるご当地タイ料理の魅力に触れてみましょう。料理好きな人なら、料理教室に参加してみるのもおすすめ。首都バンコクにもたくさんの料理教室があり、市場への買い出しから始まるプログラムも多数あります。

食を通してその土地の魅力を掘り下げられるガストロノミーツーリズム。難しく考えなくても、国内の日帰り旅行から始めたり、海外旅行の旅程の1日をガストロノミーツーリズムに充てたりしてもいいでしょう。食や食文化に関心のある人は、ガストロノミーツーリズムを採り入れて、旅の楽しみ方の幅を広げてみてはいかがでしょうか。

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