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【フランス】最大の中世祭りが催されるバラの町プロヴァン
<トップ画像:プロヴァンの町にて©Kanmuri Yuki>
石造りの建築が基本であるフランスには、今でもタイムスリップ気分を味わえる町が多く残っています。今日はその中から、ユネスコの世界遺産に登録されているプロヴァンをご紹介します。
目次
- 中世には欧州貿易ルートが交差点
- バラとチューリップ、ヨーロッパに入ったのはどちらが先?
- 中世の香りを楽しむ旧市街散策を
- 城壁
- サン・ジャン門とジュイ門
- グランジュ・オー・ディム
- シャテル広場
- セザール塔
- 聖キリアス教会
中世には欧州貿易ルートが交差点
<プロヴァンの街角 ©Kanmuri Yuki>
プロヴァンはパリの東方、約80kmの距離に位置します。パリ東駅から電車に乗れば、片道1時間半弱でつけるので、パリから日帰りも十分可能です。
現在では、パリを取り巻くイル・ド・フランス地方に属するプロヴァンですが、地図を見ればわかるように東側に広がるシャンパーニュ地方からも近い距離にあります。シャンパーニュ地方は、いわずと知れた "あの" 発泡ワインを製造する地域です。実は、プロヴァンも古くはシャンパーニュ伯爵の保護下にありました。
12~13世紀にかけ、シャンパーニュでは定期的にシャンパーニュの大市が開催され、経済的な繁栄と文化的な交流を活性化しましたが、プロヴァンは、その大市の開催地のひとつでした。その頃築かれた城壁や屋台を設置することを前提とした広い通り、豪華な商家など、プロヴァンの中世の町並み地区には、今も11~13世紀の歴史を感じさせる建築が多く残っています。
バラとチューリップ、ヨーロッパに入ったのはどちらが先?
<プロヴァン旧市街にて ©Kanmuri Yuki>
プロヴァンの町は、シャンパーニュ伯ティボー4世(1201-1253)の治世下で最盛期を迎えます。1234年ナヴァラ王に即位したシャンパーニュ伯ティボー4世は、十字軍に参加しますが、帰国時、ダマスクバラを持ち帰ったことで有名です。これにより、バラが、フランスをはじめヨーロッパで多く栽培、また交配されるようになります。
ちなみに、大使として今のトルコに派遣されていたフランドルのオージェ・ド・ブースベックがチューリップやライラック、マロニエを持ち帰ったのは16世紀のこと。つまり、バラは、チューリップやライラック、マロニエより300年も前からヨーロッパに根付いた植物なわけです。
中世の香りを楽しむなら旧市街散策を
<サン・ジャン門 ©Kanmuri Yuki>
プロヴァンの町は、西手少し高台の旧市街と東側低地の新市街に分かれます。市役所や駅などがあるのは新市街側です。車で訪れる方は、旧市街側サン・ジャン門から旧市街に入るのもおすすめです。サン・ジャン門の外には観光案内所があるので、季節に応じておすすめの観光名所を教えてもらえますし、お得な共通チケットなども販売しているからです。もちろん観光案内所前には広い駐車場もあります。
プロヴァン観光案内所
- 住所:4 Chem. de Villecran, 77160 Provins, フランス
- 開業時間:1/2~3/29:9:30~17:00、3/30~11/3:9:00~18:30、11/4~12/31:9:30~17:00
- 休業日:1月1日、12月25日
- 公式サイト:プロヴァン観光案内所
プロヴァンの旧市街は問題なく徒歩で回れる大きさですし、街角いたるところが絵葉書になる撮影スポットなので、できれば歩いて巡ってみてください。下に主な観光スポットを挙げておきましょう。
1. 城壁
<プロヴァンの城壁 ©Kanmuri Yuki>
ところで、中世の町というのは、基本的に「砦」で守られた区域を指します。プロヴァンもしかりで、旧市街は当時、高さ25m、長さ5kmに及ぶ城壁で守られていました。現在残っている城壁は1.2kmだけですが、それでも目の前に立つと守りの堅さをひしひしと感じずにはいられません。
2. サン・ジャン門とジュイ門
<ジュイ門 ©Kanmuri Yuki>
この城壁に今も残る2つの門が、サン・ジャン門と北方のジュイ門です。城壁の外側には、堀に沿って道があるので、散策がてら城壁を眺めることもできれば、堀の底に降りて一番下から城壁を見上げることもできます。また、サン・ジャン門とジュイ門それぞれの地点からは城壁の上にでて、景色を楽しむこともできます。いずれも見学は無料です。
3. グランジュ・オー・ディム
<プロヴァンの街角、左奥にあるのがグランジュ・オー・ディム ©Kanmuri Yuki>
サン・ジャン門から旧市街にまっすぐのびるサン・ジャン通りと、ジュイ門から同じくまっすぐのびるジュイ通りが交差するあたりにあるのが、グランジュ・オー・ディムと呼ばれる館です。
これは、中世のプロヴァンの建築の典型ともいえる建物で、当時はシャンパーニュの大市に来る商人たちに貸し出されていました。例えば1223年の賃借人は、南部トゥールーズの商人だったことが分かっています。
内部は広い三層に分かれ、一番高い階には建物外部の階段で入るようになっています。
<グランジュ・オー・ディム ©Kanmuri Yuki>
グランジュ・オー・デイムというのは、税を置く倉庫という意味ですが、その用途で使われるようになったのは、ずっと後、15~16世紀になってからのことです。
グランジュ・オー・デイム
- 住所:2 Rue Saint-Jean, 77160 Provins, フランス
- 入場料:大人5ユーロ、子ども(4~12歳)3ユーロ(共通券対象モニュメント)
- 所用時間:35分
- 休館日:1月1日と12月25日
- 開館時間:季節により異なるが、夏季は10:00~18:00、秋季は週日が14:00~18:00、週末が10:00~18:00、冬季は週末と祝日、学校の休暇期間のみ14:00~17:00
4. シャテル広場
<シャテル広場 ©Kanmuri Yuki>
グランジュ・オー・ディムから歩いて1分の距離にあるのが、旧市街の中心ともいえるシャテル広場です。幅30m×長さ80mのこの広場の真ん中には中世から残る井戸があり、その傍に立つ十字架が目立ちます。歴史的建造物の指定を受けた古い石造りの建物や、伝統的な木組みに囲まれていて、その場に立つだけで映画のセットの中にいるような気分になります。
5. セザール塔
<セザール塔 ©Kanmuri Yuki>
細長いシャテル広場の縦線に沿って、更に奥へと進むと目の前にそびえるのがセザール塔です。12世紀に建てられてたもので、監視塔や牢獄の役割と果たしました。現在、内部には、聖キリアス教会の鐘が吊るされています。狭い階段を上れば、プロヴァンの町を眼下に見下ろせます。
セザール塔
- 住所:Rue de la Pie, 77160 Provins, フランス
- 入場料:大人5ユーロ、子供(4~12歳)3ユーロ(共通券対象モニュメント)
- 所用時間:35分
- 休館日:1月1日と12月25日
- 営業時間:季節により異なるが、基本的には、冬季の週日が14時~17時、週末が10時半~17時、夏季が10時~18時
6. 聖キリアス教会
<セザール塔から見た聖キリアス教会 ©Kanmuri Yuki>
セザール塔から東を見ると真ん前に建つのが聖キリアス教会です。12世紀から建造が始まった教会ですが、当初予定された形には完成されないままとなっています。特徴的なドーム型の屋根は、1662年の火災の後に作られた部分です。
この教会に設置された石板によれば、1429年8月3日ランスでの戴冠式からの帰路フランス王シャルル7世とジャンヌ・ダルクは、この教会のミサに参列したのだそうです。
<ジャンヌ・ダルクについて記す聖キリアス教会の石板 ©Kanmuri Yuki>
聖キリアス教会
- 住所:Pl. Saint-Quiriace, 77160 Provins, フランス
- 開場時間:10:00~18:00
- 電話:+33164602626
その他、プロヴァンの名所には、採石によりできた地下道巡りや、博物館、バラ園が挙げられます。訪れる季節やお天気によって、違う表情を楽しめますね。
最後に、プロヴァンでは、毎年6月に、フランス最大級の中世祭を催しています。次の中世祭は通算40回目で、2025年6月14.15日に開かれます。公式サイトは下の通り。ビデオリンクもありますから、興味のある方はえひご覧ください。
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冠ゆき
- 山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。