公開日:
最終更新日:
海外旅行「チップ」のすべて ~世界のチップの感覚・相場・マナー~
皆さんは、海外旅行に行って「チップ」について疑問・不安を持ったことはありませんか?
日本には無い習慣『チップ』。「日本人はチップをくれない」という声も去ることながら、「日本人はチップをばら撒きすぎ」なんて声も、実は聞かれることがあります。。。
世界の多くの国にある習慣なだけに、日本から外に出る際にはせめてその『感覚』くらいはわかった上で出かけたいものです。
- どのタイミングで?
- いくらくらい?
- 失礼にあたるのはどんなこと?
海外旅行の現場で私が目にした失敗例、そこからのアドバイス含め、わかりやすくお伝えします!^^
目次
- 日本には無いチップの習慣。その『感覚』がわからない!
- チップが必要な国と不要な国。その背景と今を知る
- 日本人の心からの「ありがとう!!!」それ、海外の方に伝わってませんよ!
- いくらが妥当?チップの相場
- 最後に
日本には無いチップの習慣。その『感覚』がわからない!
こんにちは!126カ国を旅してきた海外添乗員のNatsukiです!
皆さんは、海外旅行先での「チップ」について、苦手意識はありませんか?
ある程度知識としては知っていたとしても、妥当な金額や、こここそ渡すべきシーンだよね!という、いわゆる『感覚』というものは、やはりその地で生活してきてこそ培われるものかな・・・という気が、個人的にはしています。
私が海外添乗員を始めた十数年前、「ここでいくら渡してね」というリストを受け取り、都度渡していったものの、そんなリストに載っていないシーンでもチップは必要だったりします。
「適当でいいんだよ!」とも言われるけれど、それがまた多すぎたり、少なすぎたり、渡すべきシーンで渡せなくて怒られたり・・・
海外添乗員になってからそんな経験を散々をしてきました。
さらには、本記事を書こうと思い改めてネットで諸々調べていると、Google検索ワードには以下のように出てきました。
「チップ いらない/めんどくさい /意味がわからない/理解できない/なぜ」
・・・やっぱりそうか笑
無い習慣ですもの、皆さんがそう思うのも無理はありません!(私だけでなくてよかった笑)
ですが、海外旅行に行こうと思ったら、やはりチップは「わからない」では済まされないこともあると思います。
「めんどくさい」けど、きちんと理解せねばなりません!泣
ということで、
海外旅行にこれから出かけよう!という皆さんへ
海外旅行は数回は言っているけど実はよくわかっていない・・という皆さんへ
世界126カ国を巡った経験から、世界各国のチップ事情と共に、私が理解している一般的な『チップの感覚』をお伝えします。
添乗員ならではの、現地でよく目にする日本人がやってしまいがちなマナー違反なども含め、順にご説明していきます!
チップが必要な国と不要な国。その背景と今を知る
まず、世界にはチップが「必要な国」と「不要な国」がありますね。
世界地図を色分けして簡単にご説明しても良いのですが、理解を深めるためにもここは添乗員流に!
- チップはいつ・どこで生まれたか?
- どこへ、どうやって拡まったか?
- 今、どうなっているのか?
と、順にご説明していきたいと思います。
チップはいつ・どこで生まれたか?
諸説ありますが、ざっくりまとめますと
- 中世〜18世紀ごろ
- イギリス(またはヨーロッパの他国)にて
- パブ・床屋・郵便・貴族などで誕生
背景としては、「これよろしくね!」「いい仕事ありがとう!」「なるはやでよろしく!」という気持ちでお金を渡した(To Insure Promptness : 迅速性を保証する−−の頭文字がTIP)と言われています。
どこへ、どうやって拡まったか?
ヨーロッパ全土に拡大
↓
ヨーロッパ諸国の各植民地に拡大
↓
19世紀の南北戦争(アメリカ)での事例:安く労働力を使おうと、雇用主は給料を支払わうことなく客からのチップをもって彼らの「収入」とさせた
今、どうなっているのか?
上記のような流れをもってチップ文化は世界に拡まっていきました。では今現在はどうなっているのか、世界各地の傾向を見ていきましょう。
▶︎世界で最もチップ文化が強く残っているのが「アメリカ」
上記の影響から、未だに職種によっては賃金が「チップありき」の設定になっており(チップがもらえる想定の職種の最低賃金は、そうでない最低賃金の1/3以下の州が多い)、利用客側は「任意」というよりも、より強い(半強要と言われることも)姿勢でチップの支払いが求められます。
コロナ以降このアメリカのチップ文化が暴走気味と言われ、これまでには求められなかったファストフードやカフェでも求められるようになり、また昨今の物価高に便乗してチップも値上がりしており、アメリカ社会で問題視されています。
▶︎アメリカと色々近い「中米諸国」
アメリカの影響や人の流れも多い中米は、それに準ずる印象があります。
▶︎チップの発祥である「ヨーロッパ諸国」
実はヨーロッパでは昨今、"脱チップ社会(文化)"という流れが存在します。
レストランなどで「service charge」という形でお会計にチップ相当分を組み込み、チップをいただかなくても問題なしとする方向性です。(日本も同じ傾向ですね。)
サービス業の労働賃金も「チップありき」ではないため、アメリカほど強く求められないし、チップを置かない利用客も多い。ただし、昔からの習慣が残っていて「このシーンではお渡しするのがマナー」という場面も多く、国ごとに把握する必要があります
▶︎旧宗主国がヨーロッパ"が多い「南米やアフリカ」
これらの国には歴史的な流れからチップ文化も流入していますが、元々はチップが存在しない社会ではありましたので、より一層「お渡ししなくても問題にならない」という印象があります。
ただし、観光に直結する仕事(ドライバーさんやガイドさん)は、外国人(=チップを渡してくれる可能性が高い人)を相手にするため、お給料が「チップありき」のことが多く、そこへのチップは求められることが多いと思います。
他にも「お渡しするのがマナー」というシーンが各国によって存在するように思いますので、訪問予定国ごとに下調べをしていくのがいいと思います。
また「お渡ししなくても問題になならない」けれど、逆手を取って「渡しておいた方がスムーズ」な場合が、特にこのエリアには存在するように思います。(よく私も添乗中 "袖の下" やりました!)
この類のチップは『旅の潤滑油』と理解し、「ちゃんとお願いね!!」としっかり仕事をお願いしたい場合に握らせます。
または、何度交渉してもダメと言い張るときに「これでなんとか!」的に。。言うてもこれらの国々は物価が欧米諸国よりも安いことも多いので、それで気持ちの良い旅になるのであれば安いもの!と捉えるのが良さそうです。(それを期待して意地悪してくる奴がいたりもして・・・これはこれでまた厄介です。)
▶︎宗教感が絡む「アラブ諸国」
ここで言う「アラブ諸国」とは、北アフリカ〜アラビア半島一円のイスラム諸国のつもりなのですが、実はイスラム教には『バクシーシ(喜捨)』という考えがあります。
「富める者が、喜んで(当然の行いとして)富めない者に施す」という意味合いです。
これらの国々はかつてヨーロッパ諸国の影響があったり、または立地的にヨーロッパからの旅人が多かったりして、「チップ文化」の流入もありました。
しかし、元来あった『バクシーシ』と「チップ」の概念が混ざり、観光客に対して当然のように「お金ちょうだい」と求めてくるシーンを多く見ることがあります。
「何もしてないけれど、旅行客のあなたは私よりも裕福でしょ?なのでお金ちょうだい!」(=バクシーシ?)であったり、頼んでもいないけれど「バック持つよ!」と手伝ってくれ、「はい、お金ちょうだい!」(=チップ?)のように。。。
それが特に顕著なのは、このエリアきっての観光立国「エジプト」。ここはすごいですよ・・・・。
ですが、このエリアは一口に「アラブ諸国」と言っても、立地も、歴史も、観光地化の度合いも、現在の経済状況も、国によって大きく異なります。
エジプトは顕著な例ですが、もっと穏やかな国もたくさんあります。
上記内容を基本概念として頭の片隅に置きつつ、各訪問国の状況をお調べになると良いと思います。
▶︎例外的にチップ無し(と思って大丈夫)「アジア」「北欧」「オセアニア」
アジアは、世界大戦などで敗戦国になった国が多いものの、文化が色濃く流入するほどの長きに渡って欧米諸国の支配下に置かれた国はそこまで多くはなく、チップ文化が根付いていない国が多いと思います。(ただし例外的に、歴史的にも文化的にも英国の影響をしっかりと受けたインドや香港などの国も存在します。)
「北欧」「オセアニア」は文化的にはヨーロッパ的ですからチップ文化はあるはずなのですが、なぜほぼ無いかとい言いますと、それはひとえに『賃金が高いから』です。
ヨーロッパ諸国よりもさらに賃金体制が「チップがなくても困らない」ようになっているとのこと。
それでも「特に手間をかけた時」などはお渡しする方もおられるようです。(やっぱりあるじゃないか・・・と思わないでくださいね!笑 そこはヨーロッパ各国の圧とはまた別物です。)
日本人の心からの「ありがとう!!!」それ、海外の方に伝わってませんよ!
私は日本で「外国から来る外国人」のお客様をお相手にした仕事もしていました。
外国の方の中には「チップを渡すことは、日本人にとって失礼な行為。なので極力渡さない」と理解していた方もおられました。はたまた、「お金よりも、物でお渡しする方がいい」と教わったとの方も。
確かに、そう、間違いではないんですが・・・
ガイドや添乗員という仕事は、「チップありき」な賃金では無いけれど、もちろん貰えたら嬉しいのがお金です!(現実)
さらに率直なところを言わせて貰うのならば、やっぱり物よりもお金が有難い!
何も、「極力渡さない」なんて思わなくて大丈夫ですよ!(笑)
・・・と、これは心の声です。。(恐らく外国人旅行客を相手にしている全旅行関係者が同様に思っていると思われます^^;)
そうは言っても『感動した!!あなたに会えてよかった!!』レベルの素晴らしいお仕事をした場合には、日本国内であっても訪日外国人のお客様からチップをいただくことはありました。(私の実体験としてもそうですし、他の通訳案内士さんも同様に仰っています。)
ですので、この感覚を上記の各国の状況に置き換えて考えていただくのがいいのではないかと思います。
「チップを渡さなくてもいい」とされる国であっても、それを「ラッキー!」と捉えるのではなく、ケースバイケースでお渡しするのがスマート。
海外には「100万回の『ありがとう』よりもチップ(の方が気持ちが伝わる)」という考えがあります。
日本ではチップの文化がないために、ついつい慣習として、手を固く握って、熱意を込めて「ありがとう!本当にありがとう!!!」と言えば、ありがとうの思いが伝わったと考えがちです。
しかし、海外では素晴らしい仕事ぶりであった場合には、最後の固い握手の際にはチップを握らせるのが一般的です。
ですので、日本人のチップの入っていない固い握手には、「なんでこんなに『ありがとう』と言ってるのに、手の中には何も入ってないの?」と思われかねません。(実際に、そのようなご意見を海外で幾度となくお聞きしたことがあります。)
はたまた、気を利かせてチップを渡したつもりでも、一日大変お世話になったガイドさんに対して「ありがとう!!!」と1ドル渡すのも、考えものです。(「これ・・何?!」と思われます。時には、馬鹿にしているのかと憤慨される方がおられます。)
いくらが妥当?チップの相場
お渡しする額として、いくらが妥当か?
世界中のチップをお渡しするシーンで、「だいたいこれくらい」という共通の目安があります。それは以下の通りです。
【世界共通のチップ目安】
- 荷物運んでもらった・・・$1(1個当たり)
- ベットメイキング・・・$1(一晩)
- 高級なレストラン・・・お会計の10〜20%(service chargeが加算されていたら不要)
- タクシー・・・小銭〜10%
- 対面でのサービスを受ける(美容院、マッサージ、ネイルなど)・・・気持ち(10%ほど)
これらがベースですが、あとは国によって(経済状況や慣習で)上記%が上下したり、レストランで言えばカジュアルなレストランでもお渡しした方がいいとか、カフェやバーでは渡す/ 渡さない、ホテルでもコンシェルジュやルームサービスで渡す/渡さない、上記のチップさえ渡さなくていいなどなど、さまざまな場合が存在します。
上記のベースを参考と捉え、あとは現地の生の情報を参照するのが実用的です。
1番いいのは「現地在住」の方のブログやコメントを参考にすること。
たいがい当てにならないのは、旅行会社などから「一般情報」として提示される参考金額!(全く当てにならないとは言いませんが、だいたい多めに提示されるように思います。その心は、例え多めに渡しても、問題になることはないですから・・・。)
ですが、これは私の持論なのですが、「自分が貰ったら」という感覚ではじき出すのが1番良いのではないかと思っています。
それはこの様な感じです。
一瞬で終わる「お手間かけたね!」
⇒「これで缶コーヒーでも買ってね!ありがとう!」な100円程度
「お手間かけたけど、お陰様で助かったよ!ありがとう!!」
⇒「これでカフェでお茶でも飲んでね!ありがとう!」な500円程度
「あなたがいてすごく助かった!ホントありがとうね!!」
⇒「これでランチでも食べてね!本当にありがとう!!」な1,000円程度
「あなたに出会えたことは、一生忘れないわ!!本当に心からありがとう!!!」
⇒5,000円でも10,000円でも、いくらでも!!
これできっとお気持ちは伝わるはずです!!^^
最後に
いかがでしたでしょうか?
これで「適当に」チップをお渡しできそうな気がしませんか^^?
お伝えしたように、チップは国によって微妙に額やお渡しする場面が異なります。
本記事でも書ききれない部分は多いのですので、これらの認識をベースに、あとはご旅行予定の国ごとにご自身でお調べになってみてくださいね。
「日本人はチップを払わない」
「日本人はケチだ」
そんな風に言われないよう(笑)、ぜひスマートな旅行者を目指して、色々なシーンでチャレンジしてみてください^^
数をこなすことで、より一層「こんな感じかな〜」という感覚が養われていきますよ!
では良い旅を!Natsukiでした!
※この記事で使用しているイメージ画像は、全てpixabayから引用したものです
関連記事
Ranking海外エリア記事ランキング
-
Natsuki
- 添乗員として日本全国・120カ国以上を訪れ、身も心も旅行に捧げた旅行好き。歴史系・文化系が得意ですが、自然系のツアーも大好きな信州生まれ。子育て真っ最中の中、お家から皆さんに「役立つ旅行のノウハウ」をお伝えしています!