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【オーストリア】クリスマスマーケット発祥の地はウィーン?
<TOP画像:クリスマスマーケットでの楽しむグリューワインは格別>
ドイツ語圏のクリスマス前の風物詩と言えば、クリスマスマーケット。夜の街角にキラキラと輝く屋台には人々が集まり、グリューワイン(ホットワイン)を片手におしゃべりや買い物を楽しみます。
ドイツやフランスにも有名なクリスマスマーケットは数多くありますが、世界最古のクリスマスマーケットがウィーンで開かれた可能性があることはあまり知られていません。
今日は、クリスマスマーケットの起源に迫り、その名前の由来や来歴を掘り下げます。
<シュテファン広場のクリスマスマーケット>
目次
「12月マーケット」とクリスマスマーケットの原型
クリスマスマーケットにプレゼントの屋台が並び、グリューワインを片手に語り合う場となったのは、19世紀以降のことですが、「クリスマスの時期に特別なマーケットが開かれる」という伝統は中世のころからありました。
中世真っただ中の1296年、アルブレヒト一世がウィーンの商人たちに「12月マーケット」を開催する特権を与えた、というのが、最初に残る原クリスマスマーケットの記録です。クリスマスマーケットの原始的な形式は、「来る冬に備えて食料を備蓄する」という点に重点が置かれていました。ですので、この「12月マーケット」は、どちらかというと食料確保の目的が強かったと言われています。
同様の「冬の食用備蓄のための市」は、1384年ドイツのバウツェンでも確認されていて、こちらは肉を販売していたことが確認されています。
クリスマスマーケットの源流
13~14世紀の「12月マーケット」が、どこまでクリスマスをテーマにしていたのかは記録に残されていませんが、1600年頃には、現在の形に似たクリスマスマーケットがウィーンで最初に開かれたことが記録されています。シュテファン大聖堂の前や、グラーベン通りで、12月中ごろから1月9日までの間開催されていた「トーマスマルクト」です(聖トーマスの日は12月21日)。
このマルクトでは、現在のクリスマスでも人気の「レープクーヘン」という種類のクッキーも売られていたという記録があり、1761年まで続きました。
<グラーベン通りのクリスマスイルミネーション>
一方、1722年からは、現在でもクリスマスマーケットが開かれるフライウング広場で、「ニコロ、クリスマス、クリッペマルクト」が開かれ100以上の屋台が立ちました。ニコロとは、12月5日にやってくる聖ニコラウスの愛称で、クリッペとは、キリスト誕生の場面を描いた小さな人形を指し、どちらもクリスマス前の風物詩です。明らかに、クリスマス関連のお祭りを全部盛り込んだマルクトだったことがうかがえます。
<現在のフライウングのクリスマスマーケット>
<木製のおもちゃの屋台>
フライウング広場では、通常の定期市も開かれていたため、クリスマス市との間で問題が起こり、1842年にはお隣のアム・ホーフ広場に移動しました。現在では、この隣接する両方の広場で、クリスマスマーケットが開かれているのは、そういうわけだったのです。
19世紀後半から第一次大戦までクリスマスマーケットはウィーンの人に愛され、屋台の数は増加し、多くの人が訪れました。名前が「クリストキンドルマルクト」と変わったのもこの頃です。クリストキンドルとは、「赤ちゃんのキリスト」を意味し、オーストリアではサンタクロースの代わりにプレゼントを届けに来る存在とされています。
<キリスト誕生の場面を現した巨大クリッペ>
屋台の増加と共にフライウング広場は手狭になり、シュテファン大聖堂前などの大きめの広場などでも開催されました。第二次世界大戦で2年間の中断がありましたが、その後も開催場所は移動し、最終的に1975年にウィーン市庁舎広場が開催地として定着しました。市庁舎前広場では、国内の各州から持ち回りでウィーン市に寄付された巨大なクリスマスツリーが立てられるなど、オーストリアという国を代表するクリスマスマーケットという位置づけになっています。
<ウィーン最大の市庁舎前のクリスマスマーケット>
その後1980年頃から、市庁舎前以外でも様々なクリスマスマーケットが開催されるようになり、現在ウィーンでは、毎年20以上のクリスマスマーケットが開催、1,000軒近い屋台がにぎわっています。
まとめ
「ウィーンを代表するクリスマスマーケット」と呼ばれる、市庁舎前のクリスマスマーケット。ただウィーン最大規模等だけでなく、ウィーンで最も歴史のある「フライウングのクリスマスマーケット」の流れを汲む、由緒正しいクリスマスマーケットです。
ウィーンの数々のクリスマスマーケットをはしごしながら、クリスマスマーケットの歴史を受け継いできたウィーン人たちの息吹を感じてみてはいかがでしょうか。
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ひょろ
- オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。