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春を待って訪れよう!サン・ジャン・ド・ボールギャール城と菜園
<上空から見たサン・ジャン・ド・ボールギャール城と菜園 © Château de Saint-Jean de Beauregard>
フランスのお城というと、日本で有名なのは、ロワール渓谷の古城やヴェルサイユ宮殿でしょうか。フランスには他にもずっと多くのお城が残っており、その数はおよそ45,000と見積もられています。フランスの自治体は約35,000ですから、単純計算でも一市町村につき1つ以上のお城がある計算になります。ガイドブックを見てもわかるように首都パリだけでもシャトー(城)と名が付く建物は十を下りませんし、パレ(宮殿)と呼ばれる建物も複数あります。
目次
シャトーとパレの違いは?
<フランス式庭園を持つサン・ジャン・ド・ボールギャール城 © Château de Saint-Jean de Beauregard>
シャトーとパレの違いは、実はフランス語でも少々曖昧です。あくまで大まかな説明ですが、基本的に中世に建てられた防御機能を備えたお城はシャトー・フォールと呼ばれます。これまた大まかな目安ですが、ドンジョンと呼ばれる高い塔を備えているのがこのシャトー・フォールです。
時が下り、ルネッサンス期以降に登場する明るく華美な装飾のお城の場合、都市部に建てられ時の権力者や君主が居住し、政治的機能も兼ねていたものはパレと呼ばれました。それに対して、郊外や田舎に建てられたものはシャトーと呼ばれました。
フランス語だと、パリのルーヴル宮殿が「パレ」であるのに対し、ヴェルサイユ宮殿が「シャトー」なのは、そういう理由です。
17世紀のサン・ジャン・ド・ボールギャール城
<初秋のサン・ジャン・ド・ボールギャール城 © KanmuriYuki>
さて、今日ご紹介するサン・ジャン・ド・ボールギャール城は、「シャトー」です。17世紀初めに城が建てられ、この地域はサン・ジャン・ド・ボールギャールと呼ばれるようになりました。これまでに所有者は何度となく変わりましたが、今現在も個人が所有しています。
サン・ジャン・ド・ボールギャール城がある町は、その名もサン・ジャン・ド・ボールギャール。この町は90%以上が農地や緑地で、住宅やお店などの都市機能は10%未満でしかありません。そのため人口も約480人と少なめです。サン・ジャン・ド・ボールギャール城の敷地は、この町の南西部分を大きく占めています。
森を散歩するようなお城までの道のり
敷地の北側に設けられた門からお城までは意外に距離があります。ついお城を目指して早足になるかもしれませんが、ここはぜひ、深い森のような敷地の雰囲気を存分に味わいながら奥へと進んでみてください。
<水仙咲く早春の庭園 © Château de Saint-Jean de Beauregard>
この広い城のドメーヌは、全体がフランスの歴史的建造物に指定されています。建築物としてはお城の本館のほか、オランジュリーや、鳩舎、別館なども残っており、いまも現役の家屋として用いられている部分が少なくありません。そのため、建物内部で見学できる場所は限られていて、ガイド付きの見学のみとなっています。内部の写真はお見せできないのですが、興味深い絵画やタピストリー、クラヴサンなど、往時を偲べるものも少なくありません。ドイツの占領を受けたときに多く割られてしまったという食器の一部も展示されていますし、何世代にもわたって集められたという数千冊の蔵書が残る図書室も圧巻です。
鳩舎を見れば領地の大きさがわかる?!
<鳩舎外観 © KanmuriYuki>
建築物の中でひとつ注目したいのが、お城から少し離れて建つ円筒形の建物。これは鳩舎です。鳩舎とは文字通り鳩を育てる小屋ですが、当時はこういう独立した鳩舎を建てられるのは、大地主に限られていました。一説によると、1アルパン(約5000平方メートル)の土地につき、鳩の寝床(ブーラン)を1つ持つことができたとか。
<鳩舎内部 © KanmuriYuki>
写真でわかるように、これだけの数の寝床がある鳩舎ですから、サン・ジャン・ド・ボールギャール城の城主がどれほど広い領地を持っていたのかは推して知るべしと言えます。
お城以上に見逃せない菜園
<上空から見た菜園 © Château de Saint-Jean de Beauregard>
サン・ジャン・ド・ボールギャール城には、複数の庭園や中庭がありますが、その中で必見なのはずばり、菜園です。お城に勝るとも劣らない、いやもしかしたらお城以上に見ごたえがあるかもしれません。ぐるりと塀に囲まれているため、お城からはうかがい知れない分、塀をくぐり抜けて菜園に入り込んだ時の印象は強烈です!幾何学的に区切られた区画を、多種多様な花々・野菜・果物が、鮮やかな色と香りで染め上げる世界が広がっています。
<菜園中央の水場 © KanmuriYuki>
広さは2ha。この菜園はお城が完成した17世紀半ばに作られたもので、当時このドメーヌに居住していた40人の食事にほぼ十分な量をまかなう収穫があったと言います。捨て置かれた時代もありましたが、古い資料を元に1984年からこの菜園の再現工事が行われ、今見られる形でよみがえりました。奥には果樹園もあり、一歩進めるたびに季節の香りを感じることができます。
2005年には、フランス文化省が指定する「ジャルダン・レマルカーブル(素晴らしい庭園)」のリストにも登録されました。
<多彩な色と香りの菜園 © KanmuriYuki>
サン・ジャン・ド・ボールギャール城
- 住所:rue du château, 91940 Saint-Jean de Beauregard
- 個人見学:3月15日~11月15日の日祝日14時~18時
- 休業日:11月16日~3月14日と、3月15日~11月15日の日祝日以外
- 入園料:鳩舎+菜園+庭園の自由見学:8ユーロ(6~18歳は6ユーロ)、お城と鳩舎内部の見学(ガイド付きのみ)は+2ユーロ、6歳未満は無料
- 公式サイト:サン・ジャン・ド・ボールギャール城
<果樹園一部 © KanmuriYuki>
冬期はお休みですが、春にはまた見学が可能になります。復活祭のエッグハンティングに始まって、春・秋には植物祭、夏にはハンドクラフト祭など、様々なイベントの会場としても使われます。見学は、イベントのない日曜日と祝日の午後のみですので、事前にサイトをチェックするようにしてください。スケッチブックや読みかけの本を持って出かけたい場所です。
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冠ゆき
- 山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。