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年間インフレ率100%を超える?!ハイパーインフレのアルゼンチンから
最近、日本国内でも「インフで大変!」という言葉を聞くようになりました。
2022年、日本のインフレ率は2.2%が予想されているそうです。今まで商品の価格がほとんど上がることがなく、デフレ経済といわれた日本にとってはこれは驚きのニュースですね。
今回は、南米第2位のハイパーインフレが続くアルゼンチンのインフレ状況を一般市民の目線で紹介していきます。
目次
アルゼンチンの状況
南米の中でもベネズエラに次いでインフレ率が高く、すでにハイパーインフレの状況が続くアルゼンチン。今年の年間インフレ率はなんと3桁を超える、という予想が10月にラ・ナシオンという新聞に掲載されました。
政府は年初め「年間インフレ率を50%に抑えよう!」と目標を掲げていたましたが、毎月発表される月間インフレ率は上昇の一途をたどり、このままでは年間インフレ率が60%を超えてしまう、と問題視されていました。
10月には毎年起こる年末の上昇も含めて見積もると、年間100%は超えるだろう、という予想結果にどんどん上書きされていきました。政府もここまではと想定外の様子です。
年間100%のインフレ率で暮らすってどんな状況?と気になりませんか。
この世の終わりのように想像するかと思いますが、これまでの耐性もあり、私たちの日常に大きな変化はありません。ただ、家族の食事を作る主婦として全ての商品が大きく値上がりし苦しく感じているのは間違いありません。
そもそもインフレって何?
インフレをとても簡単に説明すると、「お金の価値が下がって物の値段が上がること」です。
極端にいうと、昨日は100ペソで買えていたりんごが今日は120ペソになり、明日は140ペソ持ってなければ買えない。ということが起こります。
また、アルゼンチンペソの紙幣の価値は下降の一途を辿っており、アメリカドルからアルゼンチンペソに両替する際、今日現在(11月8日)で非公式の両替所(※)を使って1ドルが283ペソです。アメリカの1ドルはアルゼンチンの283ペソに変わるということです。
アルゼンチンペソは何度も国が経済破綻していて、国と紙幣に対する信頼度が低く、その信頼度は日々下がっています。
私がアルゼンチンに来た2016年1月は、1ドル12ペソでした。7年間で1ドルが12ペソから283ペソになる、この紙幣価値の下落でもハイパーインフレの様子がわかるのではないでしょうか。
この紙幣価値の下落は、物価の上昇に大きな影響があります。
※アルゼンチンでは、ドルをペソに両替する際に銀行に行かないことが多い。非公式なお店は路面で営業しており、率が良く手早く両替できるため市民には主流。
市民にはどんな影響があるか?
海外からの旅行者にとっては、アメリカドルを持参すれば、両替時に多くのアルゼンチンペソを手にできます。その場合、アルゼンチンペソの下落は悪いことのようには感じないかもしれません。しかし、アルゼンチンペソでお給料をもらう市民にとっては、大きな問題です。毎月貰うお給料の額は同じでもその金額の価値は下がっていくということ。
市内のスーパーでは、毎週購入する商品の値段が上がっていきます。お給料は毎週増加する訳ではないため、生活はどんどん厳しくなります。数ヶ月に一度、いくらかの昇給はありますが、日々上昇するインフレ率に比例しないため、やはり一般市民の生活に負荷がかかります。
市民は政府に抗議したり労働組合で抗議するなど、自分達の給料を増やすため毎日のように世界一幅の広い 7月9日通りでは 抗議デモが行われます。しかし、国民の望み通りにことが運ぶことはほとんどないでしょう。
スーパーマーケットの様子
ブエノスアイレスのスーパーマーケットに商品がない、という訳ではありません。
世界第1位のインフレ率であるベネズエラでは、ハイパーインフレが加速しすぎてお金の価値よりも物に対する価値が上回った結果、商品が店頭にない状況に陥ったこともあったそう。
アルゼンチンは移民国家で多種多様な外国人が暮らしています。そういった地域から避難してくる方に出会う機会もあります。友達になったベネズエラ人は「大変だったのよ」と、話をしてくれました。
ブエノスアイレスの場合、価格は日々高くなるものの商品は充足しています。
10月に行われたJETROの調査では、「フランスパンと牛乳が前月比で約30%上がり、値上がり幅の大きさが目立った」という状況で、ブエノスアイレス市内は厳しい値上がりが続いています。パン、牛乳、チーズを主食のようによく食べるアルゼンチン人には、影響があまりにも大きい値上がりです。
商品の値段が先週よりも数十ペソ(何十円かぐらい)の単位で上がっていくことが繰り返される日々。
私は1週間に一度、スーパーマーケットでその週の買い物をまとめて行います。その度に「また値段が上がった!」と思いつつも買わないわけにはいかず、仕方なく購入しますが、レジで合計金額を見て恐ろしくなります。
2001年、アルゼンチンの国が破綻した際は、午前中と午後で商品価格がどんどん上昇していった、という話を主人(アルゼンチン人)から聞きました。
そういった経験もあり、1週間数十ペソの上昇には驚かないのかもしれません。
「民間エコノミストらの分析によると、第4四半期(10~12月)に物価上昇が減速するとは考えにくいため、年間インフレ率が3桁に達することはほぼ確実だ」ともJETROは伝えており、民間のエコノミストがアルゼンチンの年間インフレ率が100%超る予想を市内の有力な新聞が掲載したことを報告しました。
世界の状況
2022年11月現在、世界中でインフレが起きています。日本はもちろん、アメリカやヨーロッパでも起こっています。「世界のインフレ率は2021年の4.7%から2022年には8.8%に上昇する見込み」(国際通貨基金より)という状況です。
コロナや戦争、そして自然災害など多くの不幸が重なり、現在世界各地でインフレが起こっています。日々ニュースを見ては心配し、安心、安全、健やかに暮らせていた日本を思い出さない日はありません。
世界経済も大きな問題を抱えているとは思いますが、ハイパーインフレが起こっているアルゼンチンでも生活は営まれ、人々には笑顔があります。
「どんなことがあったって何とかなるさ。」というアルゼンチン人の強さと未来を心配しすぎない考え方に、私はいつも救われています。
世界的にも問題多き年だった2022年ですが、もうそろそろ年末ですね。あまり心配しすぎることなく、アルゼンチン人を見習って、できるだけ楽しい毎日を前向きに過ごしていきたいと思います。
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AKANE
- アルゼンチンのブエノス・アイレス在住のタンゴダンサー、講師。タンゴやブエノス・アイレスの文化・情報について、日本から見て地球の反対側の本場ブエノス・アイレスから情報を発信中。