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地球の裏側アルゼンチンで出産!メリット・デメリットと忘れちゃいけない手続き
「海外出産」と聞くと、どのようなイメージがあるでしょうか?
「先進的な医療やおしゃれな感じ」でしょうか。
2019年に地球の反対側のアルゼンチンで出産した私の経験を通して、皆さんの海外出産のイメージを良い意味で裏切れたらいいな、と思います。
私にとっては「鼻からスイカ」のイメージで恐怖でしかなかった出産。実際のところは、どうだったのでしょうか。
目次
日本との違い
妊娠月数のカウント方法がなんか違う?
お腹が大きくなるにつれ、お会いした方に「今、何ヶ月?」と聞かれることが多くなります。主人と一緒にいる時に「今、5ヶ月です。」と回答すると「4ヶ月だ」と訂正されることがあり、困惑しました。
妊娠月数のカウントを日本の場合は最終排卵日から計算します。
アルゼンチンの場合は、着床から計算するのか、日本とのカウントが1ヶ月ずれていました。日本では、赤ちゃんはママのお腹に10ヶ月いると言いますが、こちらでは9ヶ月でカウントしていました。
妊婦が食べられないものは何?
妊婦時期というのは、お腹の小さな命を守るためママ達は神経質なくらい口に入れるものを気にしますよね。
私の好きなものの一つに生ハムがありますが、日本では「トキソプラズマ」という寄生虫を考慮して食べてはいけないと本に記載がありました。健診の際に病院の先生に「生ハム食べちゃダメ?」と聞いたら「日本と生ハムの作り方が違うんじゃない?ここでは食べても大丈夫よ。」という回答でした。生魚は控えるように言われましたが、生ハムは対象外でした。
体重は増えるのが当たり前。
日本での妊娠中は厳しい体重制限があると聞いていました。
もちろん、私も体重を増やしたいとは思っていなかったので、妊娠中も運動を毎日し、タンゴのレッスンを欠かすことなく注意していましたが、結果25キロ体重は増加しました。
健診時に毎回おそるおそる体重計に乗り、毎週なぜか着実に増えていく体重に泣きそうな顔をしていると、先生が「妊娠中は仕方ないよ。あんまり気にしないで。」とにこやかに見守ってくれました。
産後の退院はいつか
産後の退院は、基本出産から3日です。
日本の場合は、1週間程度の入院で母乳のあげ方やお風呂の入れ方など丁寧に教えてくれるようです。
もちろん、産後の経過にもよりますが特に問題がないようでしたら3日で退院です。母乳のあげ方は一度だけ指導があり、お風呂の入れ方はまったく話もありませんでした。帝王切開での出産も例外なく3日間の入院で退院しました。
アルゼンチンで出産するメリット・デメリット
メリット1:DNI(滞在許可証)が取得できる
アルゼンチンでは、生まれた国が国籍になる「生地主義」です。日本は「血統主義」両親の血統で国籍が決まります。
アルゼンチンで生まれた子は、アルゼンチン人。そしてアルゼンチン人の両親にもアルゼンチンの滞在許可書(DNII)が受け取れるようになります。
南米大陸で地続きということもあって、近隣諸国やその他様々な理由によって自国以外で暮らしたい場合、アルゼンチンで子供を産めば滞在許可書の取得が可能です。
メリット2:無痛分娩対応の病院が多い
無痛分娩対応の病院が多い、とのことです。病院によって違うと思いますし、本人の選択も可能ですが、日本のような「痛みを経験してこそ出産」という精神的概念はなく、本人がどうしたいかで選択できます。
メリット3:無料で出産も可能
アルゼンチンでは国立病院の受診は無料です。どんな病院がいいか、夢やこだわりがない人は国立病院であれば無料です。
私は当時、パスポート証明のみで加入できる外国人用の保険に入っていました。
病院や医師は加入する保険によってランク分けされています。行きたい病院や受診したい医師がいる場合は、その病院や医師が所属しているランクの保険料を払う必要があります。
デメリット1:情報が少ない
アルゼンチン人ママの友人が多くいれば情報は集まりやすいと思いますが、初めての出産やコミュニティに入れていない場合は、情報を得にくいです。
私の場合は、こちらで出産した日本人の駐在員の奥様を紹介してもらったり、電子書籍で日本の情報を収集していました。病院が違うといただいた情報も少し違ったり、日本とは勝手が違うので電子書籍の情報は使えない場面もありました。
出産のためのママクラスは35週を過ぎてからの参加で、「出産」に対することのみでした。35週からのため、数回行う講習会の最終日にはすでに出産している人もいるというのんびり開催でした。
デメリット2:言語の問題
海外で出産する場合は、不安に感じるかもしれません。妊娠・出産は病気ではないと言われますが、命懸けの大仕事です。21世紀の今でも出産で母子共に命を落とすことはあるので、ママは納得の形で挑みたいですよね。
私は言語に自信がなかったので、友人に通訳をお願いしました。出産立会いは1人のみだったため、主人には病室で待っていてもらいました。
デメリット3:基本は塩対応
日本のサービス精神は海外では期待できません。基本はどこに行っても塩対応です。出産のための看護師さんも例外ではありませんでした。生まれた次の日に主人がうんちおむつの変え方がわからずナースコールをしたら「もうパパなんですからご自分でやってください。」と冷たくあしらわれていました。
忘れないようにしたいこと
出生届は大使館へ
日本人が出産した際は、アルゼンチンだけでなく日本への出生届も3ヶ月以内に必要になります。この出生届を出し忘れてしまうと日本でも国籍が取得できなくなります。
国籍留保も忘れずに
出生届と合わせて、「国籍留保の届出」が必要になります。アルゼンチンで出産するとアルゼンチン国籍が無条件に与えられて日本との二重国籍になってしまうので、21歳になるまでに本人が選択できる権利です。
海外出産を体験しての感想
2019年11月、39歳の高齢出産は胎児が産道におりてこない中、微弱陣痛が3日間続いていたため帝王切開で行いました。血栓を心配して帝王切開翌日から歩行練習が始まり、3日後には退院して新しい家族を迎えての生活が始まりました。
アルゼンチンでしか出産していないため日本との違いは正直分かりません。妊娠中、電子書籍を読み漁りながら事前勉強していた身としては「なんか違う。」と感じることはありましたが、海外在住で培った状況対応力でカバーできました。
実際に出産する間際になるといろいろ違っても、とにかく出産するしか選択肢はないので受け入れる他ありません。母とはこうして強くなるのかもしれませんね。
アルゼンチンは、子供好きの人が多く道を歩けばすれ違う人みんなが「おめでとう。」「なんて可愛い赤ちゃん」と声をかけてくれます。現在は2歳になった息子も保育園に行く道で、たくさんの知らない方に声をかけてもらいながら登園しています。
この街での出産・子育ての経験をわたしはとても気に入っています。
「妊娠・出産」というイベントがどうかというよりも、子供が生まれてママとして自分が生きる世界を見た時に、受ける感覚の違いに驚きました。日々、ふいにテレビで流れるニュースで子供の被害、虐待、戦争が辛くて、これまでのようには気やすくテレビが見られなくなりました。自分が母になってようやく、自分が両親にかけてきた心配の数々を顧みるようになり、そして、小さな命の見る未来が平和でありますようにと願う気持ちを理解しました。
「出産」は海外に関わらず、私が今まで経験した何よりも素晴らしい体験です。
これから国内外問わず、出産を控える方も色々不安はあるかもしれませんが、ぜひ素晴らしい経験が楽しい思い出となりますように、心よりお祈りしています!
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AKANE
- アルゼンチンのブエノス・アイレス在住のタンゴダンサー、講師。タンゴやブエノス・アイレスの文化・情報について、日本から見て地球の反対側の本場ブエノス・アイレスから情報を発信中。