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ブラジルの巨大野外現代アート美術館、イニョチン
ブラジルが世界に誇れるものの一つに、「大自然」があります。この鬱蒼たる自然の中に現代アートを組み込んだら、今までにない、なんか凄いものができてしまった、というのがイニョチンです。なので、野外現代アート美術館という一つの枠組みに入れて紹介するには、あまりにも言葉が足らず、この巨大施設の全体像が見えてこないのです。
ここを訪れた人は、「天国」「別世界」などという言葉で形容します。普通、美術館に行って、「天国のような美術館だった」という感想は持ちませんが、ここに行くと、「正にパラダイス」と思ってしまうのはなぜか。その謎にせまりながら、イニョチンを紹介してみたいと思います。
目次
イニョチンについて
イニョチンは現代アート美術館&植物園で、ミナスジェライス州ブルマジーニョ市に所在します。2006年オープンで、まだ開館から20年も経っていない、比較的新しい美術館です。
創設者はブラジル人実業家、ベルナルド・パス氏。現代アートのコレクターだった彼は、80年代、イニョチンと呼ばれている地域に所有していた自分の牧場を庭園に変え、そこにアートコレクションを展示するという個人的なプロジェクトを立てます。
最初の頃は、プライベート庭園で、パス氏に招待された人だけに与えられた特権だったのですが、2002年から予約制で一般に公開されるようになります。それから4年後の2006年に「イニョチン」という名の美術館としてオープンし、現在は、世界一大きな野外現代アート美術館、死ぬまでに行くべき美術館の内の1つとして位置づけられる、世界的に注目を浴びる美術館になっています。
Inhotim(イニョチン)
- 住所:Rua B, 20, Inhotim, Brumadinho, MG
- 開館時間:木・金曜 9:30~16:30、土・日曜・祝日 9:30~17:30
- 入館料:1日チケット 44レアル、2日間パスポート 76レアル、3日間パスポート 106レアル
- HP:Inhotim
イニョチン行きの準備
イニョチンへの訪問を決めたら、まずしなければならないこと。
入館チケットと送迎バスの事前購入が最低限必要です。購入は共にイニョチンのホームページからできます。現在、コロナの影響で、開館日に制限があり、木~日までの4日間のみ。通常なら火~日です。
送迎バスは、拠点地となるミナスジェライス州の州都ベロオリゾンチーイニョチン間の往復で、ベロオリゾンチの発着場は、Tryp by Wyndham Belo Horizonte Savassiホテル前とバスターミナルの2ヵ所です。バスは、開館時間に到着し、閉館時間に帰途に着きます。
また、電動カートに乗って、敷地内を移動したい場合は、カート乗車券も事前に購入しておいた方がいいでしょう。1日でできる限り回りたいというのであれば、カートの利用をお薦めします。敷地が140haもあり、広すぎて歩いて回るには結構大変です。
1日では到底全部を見て回ることができないので、1日入館の他に2~3日連日入れるパスポートがあります。
以下は2022年1月の料金です。
【入館料】
- 1日チケット:44レアル
- 2日間パスポート:76レアル
- 3日間パスポート:106レアル
【往復送迎バス】
- Tryp by Wyndham Belo Horizonte Savassi ホテル前―イニョチン往復:85レアル
- ベロオリゾンチ・バスターミナルーイニョチン往復:86.60レアル
- 電動カート:30レアル
イニョチンへの行き方
イニョチンへ行くには、まずミナスジェライス州の州都、ベロオリゾンチまで行きます。州都から施設があるブルマジーニョまで約60㎞の道のりで、8時発の送迎バスに乗ると、9時半には到着します。帰りのバスの発車時刻は16時半。美術館には7時間滞在することになります。週末の土日は閉館時間が17時半なので、バスの時刻も17時半。もう1時間長く滞在ができます。
今回、私はイニョチン訪問の前日にベロオリゾンチ入りをし、送迎バスの発着場所となるTryp by Wyndham Belo Horizonte Savassiホテルに宿泊しました。2日以上訪問する場合は、ブルマジーニョにもペンションがあるので、そちらに滞在するのもいいかもしれません。ホテル探しは、イニョチンのホームページにも紹介されていますので、参考にしてください。
Tryp by Wyndham Belo Horizonte Savassi ホテル
住所:Rua Conçalves Dias 30, Funcionarios, Belo Horizonte
HP:Tryp by Wyndham Belo Horizonte Savassiホテル
アート巡り
まずは入口でもらえる地図を見て、何が見たいか決めることが大切です。コースは3つ。私の場合、絶対に見ておきたい作品はなかったので、歩いて回れそうな一番短いコースを選びました。
私のイニョチンでの目的は、実は、現代アートよりも植物鑑賞が優先でしたので、特にお目当ての作品があったわけではありません。とは言え、自然と調和した作品が多く、目を楽しませてもらえました。また、環境にあまりにも馴染んでいて、芸術作品であることさえ忘れてしまうものもありました。
展示中の現代アートは560作品、アーティストはブラジルを中心に38ヶ国60人。有名どころでは、草間彌生、ダン・グレアム、オラファー・エリアソンなど。
作品は野外展示のほかに、敷地内に点在する23のギャラリー内に展示されているものもあります。ギャラリーでは 写真、映像、絵画、インスタレーション、パフォーマンスなどのアート作品が鑑賞できます。
植物散策
緑林の香りが恋しくなり、1日たっぷり自然の中を散策できるようなところを探していたら、イニョチンに白羽の矢が立ちました。同施設は美術館でありながら、2010年に植物園としても認定されており、4,300種の国内外の植物コレクションの他、巨匠造園家、ブルレ・マルクスが、80年代に手掛けた庭などもあって、植物園としても見所満載。
前述した通り、敷地の広さは140haありますので、歩いて回るには結構体力がいります。実際、閉館時間が近くなるころには疲れて休憩している人がいっぱいいました。
私は、普段見たこともないような植物ばかりが続く道を歩いていたらテンションが上がてしまったので、疲れも吹き飛び地図を片手に珍しい植物を求めて行ける所まで歩いてみました。でもやはり時間的に限界があり、結局サボテン庭園など施設の端のほうにある所までたどり着くことができなかったので、また次回の訪問にとっておこうと思います。
現在、オンラインで植物園巡りができるので、興味のある方はぜひアクセスしてみてください。
その他の楽しみ方
私などは美術館に行くと、1つも見落とすまいと躍起になってついつい肩に力がはいってしまうのですが、ブラジルの人はもっと気楽というか、この空間の中でどれだけリラックスして楽しめるかを優先しているように思えます。
イニョチンは、まさにリラックス、脱力できる空間としても利用できるよう構成されています。
私も気に入ったのですが、ブラジル人デザイナー、ウーゴ・フランサによる古木を使ったベンチ。敷地内の至る所に設置されていて、歩き疲れたら休憩できるようになっています。同じ形のベンチは一つもなく、古木の味わいがそれぞれに出ていて、とにかく渋い。
また、コロナ感染防止のため、現在は閉鎖されていましたが、プールもあります。実はこれもアート作品で、アルゼンチン人ジョルジ・マッキというアーティストの作品なのですが、コロナ前は利用可能だったそうです。美術館に来て、プールに入る、奇想天外な発想に脱帽です。
その他、レストラン、軽食屋さん、カフェなどが所々にあり、自然を満喫しながら、食事ができるようになっています。
最後は、なんと言ってもお土産。美術館には欠かせないミュージアムショップで、オリジナル商品やブラジル人デザイナーによる良質のグッズが購入できるようになっています。
まとめ
イニョチンに行った人の感想が「天国のような所」になる理由は、アート鑑賞、植物散策、そして自然の中でのリラクゼーション、この3つの要素がちょうどバランス良く楽しめるようになっているから、というのが私の出した結論です。
2年ぶりの遠出の旅で、リフレッシュしたい気持ちいっぱいでイニョチンに行きましたが、実現することができました。
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オシャラ
- ブラジル在住19年。今はサンパウロに住んでいます。現地ならではの旅情報を発信していけたらと思います。