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28年ぶりに優勝!ブエノスアイレスで「コパ・アメリカ」を観ながらアルゼンチン人とサッカー話
アルゼンチンの独立記念日(7月9日)の翌日でもある7月10日、去年の王者ブラジルに勝ち、2021年のコパ・アメリカをアルゼンチン代表が制しました。
未だコロナの感染が落ち着かず、経済状態も不安定なアルゼンチン共和国にとって大きな希望を与える試合でした。
今回はそんなコパ・アメリカの詳細とアルゼンチンのサッカー観戦の状況についてご紹介します。
目次
コパ・アメリカについて
2021年6月13日から7月10日の日程でCopa America(コパ・アメリカ)がブラジルで開催されています。
2年に1度の開催で2020年に第47回が開催される予定でしたが、コロナ禍のため2021年に持ち越し。また、当初はアルゼンチンとコロンビアの共同開催予定でしたが、コロンビアの政情不安、アルゼンチンのコロナ感染拡大によってブラジルでの開催になりました。
コパ・アメリカの参加国は南米の10ヵ国です。
- アルゼンチン
- ブラジル
- コロンビア
- ペルー
- パラグアイ
- チリ
- エクアドル
- ウルグアイ
- ベネズエラ
- パラグアイ
基本は南米の国々ですが、南米以外の招待枠を設けており、今回はオーストラリアとカタールが招待国として参加予定でした。しかし直前に本大会の参加を辞退することになり、10カ国での試合になりました。
7月10日の決勝では、1−0でアルゼンチンの勝利。アルゼンチンは1993年以来、28年ぶりのコパ・アメリカの勝利になりました。
優勝国となったアルゼンチンの首都ブエノスアイレスでは、試合が始まる前から街中が1日中ソワソワしていました。アルゼンチン人にとって、サッカーは大事な国民的スポーツです。
ここからはサッカー鑑賞をしながら話題に上がった、アルゼンチンのサッカーの常識についてご紹介します。
得点王メッシの知られざる過去
サッカー~アルゼンチン~メッシというキーワードは、サッカーに興味がなくても知っている人が多いのではないでしょうか。
2021年コパ・アメリカではメッシが得点王として君臨しました。また歴代最多アシスト記録も保持しているメッシ。サッカー関係者の間では、サッカー史上最高の選手とも言われています。今回、34歳5度目の決勝戦で、初のタイトルを手にしました。
アルゼンチンのテレビ放送では、試合開催期間中、終始メッシの一挙一動が取り上げられ、アルゼンチンの人々にとってどんなに重要な選手かよくわかります。
また決勝戦の試合終了のホイッスルが鳴ると、アルゼンチンの代表選手がつぎつぎとメッシめがけて駆け寄ってくる様は、チーム内での信頼の厚さがよく反映されていました。
そんなメッシですが、実はアルゼンチンの国内チームには属していません。2005年からアルゼンチン代表としてプレーしていますが、現在所属しているクラブチームはスペインのバルセロナFCです。
なぜメッシはサッカーのために13歳という若さでスペインへ行ったのでしょうか?
実はメッシは成長期にホルモン系の病気に悩まされた時期がありました。その高額な治療費用について、サポートしてくれるチームを父親が必死に探して交渉。結果、スペインのバルセロナFCが「チームでプレーするのであれば」という条件でサポートを約束してくれ、スペインに渡ったそうです。
その頃のアルゼンチンは2001年に債務不履行を決行しており、国の経済はどん底でした。メッシのお父さんの経済状況、心境は想像の域を出ませんが、メッシにサッカーを続けさせてあげたい一心だったのではないでしょうか。
メッシはそれ以降、スペイン在住となっています。
アルゼンチン人のサッカー鑑賞とは
キルメスビールのCMにみる、アルゼンチンのサッカーの見方
アルゼンチン国内でキルメスビールを知らない人はいない、というほど有名なビールメーカーのCMが、アルゼンチン人のサッカー鑑賞時の状況をうまく表現していたのでご紹介します。
まさにこんな感じで鑑賞しています。アルゼンチンチームがゴールを決めると地鳴りがします。
喜びの共有はバルコニーで
大事なサッカーの試合で得点が入った喜びは、バルコニーに出て大声で「ゴーーーーーール!」と叫ぶことで自分の推しのチームを誇示します。
サッカーの試合は、夜23時頃まで続きます。もちろん、23時に得点が入っても叫びます。1人ではありません。あっちからもこっちからも出てきて「ゴーーーール!!!」「ゴーーール!!!」と叫び回るのが常です。床をドンドン蹴ったり、飛び跳ねたり、ラッパを鳴らしたり、奇声をあげたりすることもしばしば。
1歳半の幼児を持つ母としては、子供が起きてしまうのでは、と頭を悩ませています...。
もともと夜中の2時までは「騒いでも良い時間」と設定されていて、23時はまだまだ早い時間。しかもサッカーとくれば、この国では何も言えません。
我が家のアルゼンチン人
主人(アルゼンチン人40歳)も例に漏れず、サッカーが大好きです。1歳半の息子には、最初にサッカーを習わせたいと考えています。
サッカー中継がある日は、子供の寝かしつけも早々に切り上げていつもテレビにかじりついていますが、「ここぞ」という一番大事な試合の日は、気の置けない親友と一緒に観たい!というのがアルゼンチン人の特徴。もちろん、今回のコパ・アメリカの準決勝、決勝は私の機嫌を取りつつ、友人のもとへ出掛けて行きました。
やはりサッカー観戦は、エンパナーダをつまみにビールを飲みながら、そして得点が入ったらバルコニーに出て、喜びあい大きな声で叫びたいようです。
アルゼンチンで注意したいサッカーのこと
アルゼンチンに来てびっくりしたこと、それはサッカーにまつわるNGが多いことでした。
ボカとリベルが戦う時は外出に注意
アルゼンチン国内には多数のサッカーチームがありますが、その中でもボカ対リベルの試合の日は、外出に気をつける必要があります。
テレビをつけると「緊急!」と赤いマークが点灯し、今どこを選手陣の乗車したバスが走っているか中継しています。暴徒化したファンが選手陣のバスを襲うため、通行路が危険地帯になります。
一般人は巻き込まれないよう注意して外出します。
チームの名前やロゴが入った紙袋は外で使うな
なんの気なしにリベル好きの知り合いにリベルのロゴ入り紙袋にプレゼントを入れて外出したら、主人から呆れ顔で「サッカーチームの紙袋は外で持ち歩いてはいけない。」と注意されたことがあります。
持っていく場所にもよりますが、因縁をつけられ袋叩きにされる可能性もあります。サッカーチームの紙袋は外出時に持ち歩いてはいけない。「紙袋くらい」と侮ってはいけません。
気安く自分の推しのサッカーチーム名を口にしない
相手にもよりますが、アルゼンチンでは自分の推しのサッカーチームは自分から話さない方が無難です。もしかしたら話した途端、喧嘩になったり、友情が壊れることも。まずはどこのチームが好きかを聞いて様子をみた方がいいでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
熱心なサッカーファンではない私としては、ついつい「そんなこと...」と思えてしまうこともたくさんありますが、サッカーにこれだけ夢中になるアルゼンチン人を私は愛おしくも感じます。
日本もサッカーワールドカップのときはとても盛り上がっていましたよね。
渋谷に集まるサッカーファンの奇行が話題になりましたが、アルゼンチンは国中が渋谷のような状態になると想像していただければわかりやすいでしょう。写真はご用意できませんでしたが、ブエノスアイレスの象徴でもあるオベリスコ周辺には夜中にもかかわらず人が集結しました。
人生の中で胸を熱くする瞬間や夢中になれることがあるのは、とても素晴らしいことですね。今回のコパ・アメリカはコロナ禍で沈んでいたアルゼンチン人の心に、新たな火をつけた熱い瞬間でした。
ぜひ日本でもコパ・アメリカの優勝をきっかけに多くの人がアルゼンチンに興味を持ってもらえたら嬉しいです。
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AKANE
- アルゼンチンのブエノス・アイレス在住のタンゴダンサー、講師。タンゴやブエノス・アイレスの文化・情報について、日本から見て地球の反対側の本場ブエノス・アイレスから情報を発信中。