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フランスのソウルフード:クレープ!
フランスを象徴するお菓子といえば、クレープ!シンプルな材料とフライパンひとつで簡単につくれるクレープは、大人も子供も大好きな 、まさにフランスのソウルフード。今回はクレープの国フランスならではの話や美味しいクレープレシピを紹介します。読んだ後にはぜひ作ってみて下さいね!
目次
クレープの起源
クレープの起源は、フランス北西端ブルターニュ地方の郷土食「そば粉のガレット(galettes de sarrasin)」です。これは、そば粉を水でといて塩味をつけ薄く丸形に焼いたものです。
イギリス海峡と大西洋に突出した岬型のブルターニュ地方は、雨量が多く海からの強風にさらされたエキゾチックな地方で、小麦が育たない気候と地質。13世紀の十字軍遠征でアジアから持ち帰られた「黒い麦」と呼ばれた「そば」がこの地の庶民の常食でした。ある時、熱い石の上(昔は平たい石がフライパン替わりだった)にこぼしたそば粥が焼けて固まったものが、ガレットの始まりです。
ガレットからクレープが生まれたのは、17世紀にこの地方を訪れた貴族が庶民のガレットを気に入り宮廷料理として改良したからだと言われています。そば粉は小麦粉に替わり、牛乳、鶏卵、砂糖などが加えられて現在のようなクレープが誕生しました。
ガレットの語源は小石(galet)、クレープの語源は「縮れ」という意味の古代フランス語(crespo)で、これはクレープを焼いた時に現れる模様から名付けられました。
一般的に塩味のガレットは、卵、ハム、チーズなどをのせ食事として、クレープは甘味を加えてデザートやおやつとして食べられます。クレープを食事とする場合は、ハムとホワイトソースを包んだ「クレープ・オ・ジャンボン(crêpe au jambon )」が有名です。
なお、「ガレット」は平たく丸い焼き物を示す言葉なので、そば粉のガレットの他にもお料理やお菓子に使用されます。どうぞお間違えなく。
クレープの日 シャンドル-ル
フランスでは一年中よく食べられているクレープですが、「伝統的にクレープを食べる日」があるのをご存知ですか?
クリスマスから数えて40日後、2月2日の聖燭祭、シャンドルール(Chandeleur)です。この日は赤ちゃんのイエス様がエルサレムの神殿に紹介され、聖母マリア様が産後のお清めを受けた日。かつては「光の御子」を祝って、この日にろうそくを灯した行進が行われていました。その際、太陽のような色形をしたクレープを巡礼者に配ったのがシャンドルールの日にクレープを食べる習慣として定着したということです。
この日にクレープを食べる習慣があるのはフランス、ベルギー、フランス語圏のスイスのみ。キリスト教の祝日とはいえクレープ本場ならではの習慣なのです。
シャンドルールが近づくとスーパーの広告はどこもクレープ大特集!毎年売場には特別コーナーが設置され、クレープ関連商品がズラリと並びます。それをどんどん買い物かごに入れてゆく人々の姿もこの季節の風物詩なのです。
クレープ作りに必要なもの
では、クレープ関連商品って一体どういうものでしょう?
華々しく並んでいるのは、クレープ専用フライパン「クレピエール(crêpière)」。これはフランス家庭にはかなりの確率で常備されています。もちろん、普段使いのフライパンでも美味しいクレープは作れますが、この専用パンは本当に優れもの!これを使うとクレープ生地が素早くきれいに薄く広げられ、火のとおりも早くて均等、ヘリが低いので裏返す時重なったりもしないのです。自分が急にクレープ達人になったような気がしますので、クレープファンのみなさん、買っても損はないですよ。
材料は小麦粉、卵、牛乳、バター、砂糖。香りをつけるバニラや洋酒。フライパン上で焼けたクレープに洋酒をかけてフランベさせ、大人向きデザートを作る人もいます。焼きあがったクレープにつけて食べるのは、ボンヌ・ママン社のコンフィチュール(ジャム)とヘーゼルナッツ入りチョコペースト「ヌテラ(nutella)」が、大衆の殿堂入り商品。でも近年は他社メーカーの商品もどんどん増えて多種多様になってきています。はちみつ、キャラメルソース、マロンクリーム、ホイップクリームなども商品棚にぎっしり並びます。
クレープのお伴の飲み物は同じ地方の特産品、りんごの発酵酒シードルがぴったりです。
フランス家庭での食べ方は?
フランス家庭でのクレープの食べ方は、いたってシンプル。どんどん焼いて重ねたクレープのお皿を、テーブルの中央にドン!とのせ、それぞれが、砂糖やジャムなど好きなものをつけながら何枚も食べてゆく、というのがよくある一般家庭の食べ方です。
日本では「おしゃれ」なイメージのクレープですが、フランスでは古くからある素朴で家庭的なお菓子なのです。
焼きあがるまで待てない!という子供が集まるパーティーなどでは、ミニクレープ6枚が一度に仕上がる鉄板を持つクレープ器が大活躍。こちらのクレープ器は子供のいる家庭における普及率の中でもかなり高いのではないかと推測します。
正式なクレープとは異なるものの市販されているクレープ菓子も人気です。ジャムやチョコを巻き込んだ半乾燥のクレープは小袋入りなので持ち運びにも便利。サクサクの焼菓子「クレープ・ダンテル(Crêpe Dentelle)」はブルターニュ地方の銘菓なので、お土産にもいいですよ。
クレープを作ってみよう!
では、クレープを作ってみましょう!多少形が崩れても気にしないで、どんどん焼いてゆきましょう。
クレープ材料
- 小麦粉 250g
- 卵 4個
- 牛乳 500cc
- 溶かした無塩バター 50g
- 砂糖 20g
- 塩 少々
- バニラエッセンス、お好みの洋酒など 少々
作り方
- 小麦粉をボールに入れ、真ん中にくぼみを作り、卵を割り入れる
- 泡だて器で混ぜながら、牛乳を少しづつ加える(ダマを作らないように)
- 残りの材料を加え、よく混ぜる
- 生地を1時間ほどおいておく
- 熱いフライパンに少量のバターかオイルをひき、お玉ですくった生地を薄く広げて両面を焼き上げる
基本の生地を参考に、分量を調節したり、トッピングを工夫したりして、自分好みの味を見つけて下さい。2月2日のシャンドルールには、左手にコインを握り、もう片方の手でフライパンからクレープを高く放り投げて、上手くひっくり返せれば幸運が訪れる、と言われています。日頃から練習しておきましょう!
さいごに ~クレープの思い出~
ある日、友人宅の台所でお茶をしていると、急に彼女が「今日、孫を幼稚園に迎えに行く日だった!」と言うなり立ち上がり、大きめのカフェオレ・カップに、ささっと目分量で小麦粉と卵ひとつを割り入れ、牛乳を注ぎつつ泡だて器をカシャカシャして、あっと言う間に少量のクレープ生地を用意したのです。私はいつも、決まった分量をミキサーでガーっと混ぜてクレープ生地を作っていたので、この光景は新鮮な驚きでした。
思い出せば、私の義母も生地作りはいつも目分量、いや混ぜた感触分量。家族が集まる時のクレープ作りは必ず彼女の役目で、いつもはりきって大量に作ってくれました。集まった孫の中には「やらせて!」と言い出す子も必ずいて、三世代でわいわいと楽しかった。これはきっとフランスではよくある日常のひとコマなんでしょう。きっとクレープは、たくさんのフランス人の、幸せな幼少期の思い出と結びついているに違いない、、、
なんたって太陽の色と形をしたお菓子、作って食べると心が温まることうけあいです。
Bon appétit!ボナペティ、美味しく召し上がれ。
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原田さゆり
- 旅・文化・猫を愛する、フランスの田舎在住者。フランス中を旅しています。