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世界遺産ヴァッハウ渓谷、テラコッタの中庭が美しいシャラブルク城
ウィーンからの日帰り旅行にぴったりな場所に世界遺産ヴァッハウ渓谷があります。ドナウ河が大きく蛇行するその風光明媚な地形は、中世の時代に騎士や吟遊詩人が行き来し、現在でも多くの古城が当時の姿を伝えています。
<美しくドナウ河が蛇行する、世界遺産ヴァッハウ渓谷>
今回ご紹介するのは、数あるヴァッハウ渓谷近くの古城のうちでも「アルプス以北で最も美しいルネサンス様式の城」と呼ばれる、シャラブルク城(Schloss Schllaburg)です。ドナウ南岸にあるメルクの修道院の少し南に位置し、その独特の装飾と特別展の質の高さから週末には多くの博物館好きが訪れます。
<シャラブルク城>
目次
シャラブルク城の魅力
この場所にはローマ時代から城があった痕跡が認められていますが、歴史にこの城が登場するのは11世紀の頃です。シークハルト・ヴォン・シャラ(Sieghard von Schala)という人物が所有していたため、「シャラの城=シャラブルク」と名付けられ周辺の村にも「シャラ」の名が残されています。シャラ家は12世紀には滅亡し、その後多くの持ち主の手を経ています。
15~17世紀の間にローゼンシュタイン(Losenstein)家の所有となり、ルネッサンス様式に改築が行われます。16世紀には新教徒だったローゼンシュタイン家のもと、この地方のプロテスタントの中心的存在となりました。
この城は18世紀からモーツァルトとの交流のあったティンティ家の私有となり、20世紀初頭にアルカーデンホーフと呼ばれるメインの中庭の修復が行われ現在の美しい姿になりました。
<テラコッタの修飾が美しい中庭>
第二次世界大戦後にオーストリア共和国の所有となり、1974年からは博物館として内部が公開されています。
現在、質の高い特別展を主催する博物館として城と展示の両方を楽しむウィーンからの日帰り客の間で人気となっています。
<中庭の柱一本一本に立つ、テラコッタの人物像>
シャラブルク城の見どころ
入場券を購入して敷地に入ると、幾重にも重なる城門と城壁に圧倒されます。城壁の間に作られたドラゴン型の巨大な木製遊具は家族連れにも人気です。
ルネッサンス様式の庭園も美しく、見所の一つとなっています。
<ルネッサンス様式の庭園>
城の門を越えて進むと美しい中庭に出ます。先ほどご紹介したテラコッタの装飾が美しいルネサンス様式の大きめの中庭は、オーストリアでは珍しいタイプです。中庭から左手にミュージアムショップ、左奥の階段を登ったところに特別展の入り口があり、右側からは別の中庭にも通じています。
<中庭から塔を見上げて>
明るい茶色を基調にした開放的なメインの中庭から隣の小さめの中庭に入ると、白黒を基調にした落ち着いた雰囲気になります。
<小さいめの中庭の装飾>
更に奥に進むと、現在は廃墟となっている元住居棟と城壁に出ます。明るく広々したメインの中庭、白黒で閉鎖的な第二の中庭に続き廃墟の城壁に囲まれ、全く異なる城の雰囲気を楽しむことができます。
<元住居棟部分の廃墟>
城の内部は、博物館と会議室に分かれていてじっくり見学することができます。中世やルネッサンス時代の装飾や壁画、城の発掘調査の様子や地下礼拝堂も残されていますのでぜひゆっくり散策してみてください。
<壁の装飾が残された会議室>
<12世紀の地下礼拝堂>
もちろん城の見学だけでなく、展示部分もじっくりお楽しみいただけます。ここで開催される特別展は、質も高く国内外から多くの展示品が集まっています。
特別展と城の内部見学が終わったら明るく開放的な中庭のカフェで一休み。
<中庭のカフェ・レストラン>
「モスト」を飲んでみよう
この城があるのは、正確には、ヴァッハウ地方に隣接する「モスト地方」と呼ばれている地域です。「モスト」とは、リンゴやナシの果汁を発酵させたアルコール飲料。(注:クリスマスの時期に飲まれる、温めたぶどうジュースを意味するノンアルコールの「モスト」とは別物です。)「モスト」はウィーンではあまり飲まれていませんが、この地方ではカフェやレストランのメニューに上がっていることもよくある、地域独特の味です。
色は白ワインのようで、味は少しすっぱめのさわやかな飲み口です。まるでアルコール入りの青りんごジュースのようです。炭酸水を混ぜて飲むことが多く、暑い日に飲むと意外にすぐアルコールが回りますのでご注意ください。ぜひ、この城周辺に来られたらこの地方特有の「モスト」も合わせて楽しんでみてくださいね。
<モスト地方のモスト>
まとめ
ウィーンから日帰りでき、特別展と古城探索の両方を楽しめてしまうシャラブルク城。世界遺産ヴァッハウ渓谷や豪華絢爛なメルクの修道院と合わせて訪れるのも良いかもしれません。気になる方はぜひ足を伸ばしてみてくださいね。
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ひょろ
- オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。