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バレンシア南部にある風光明媚なワイン産地とイベロ人集落遺跡
スペインに住んで19年目になりましたが、世界遺産や歴史的モニュメントや味のある小さな村、すばらしい海や山の自然などなど、スペインには見どころが満載だとしみじみ思っています。ガイドブックには載っていない魅力的な場所が国中に散らばっているので、行きたいところが途絶えることはありません。今回はスペイン人にさえマイナーな、でもとてもステキなスポットをご紹介します。
目次
ここはバレンシアのトスカーナ
バレンシア市内から高速道路A7に乗りアルバセテ方面に向かうと、ちょうど1時間ほどでモイシェン(現地語:Moixent、スペイン語:モヘンテ/Mogente)という小さな町に着きます。更にそこから15分ほど行ったラ・フォン・デ・ラ・フィゲラ(La Font de la Figuera、スペイン語:フエンテ・ラ・イゲラ/Fuente la Higuera)と、フォンタナルス・デル・アルフォリン(Fontanars dels Alforins、スペイン語:フォンタナレス/Fontanares)の3つの町を結ぶ三角地帯は風光明媚なワインの産地。地元では、密かにこの地域をバレンシアのトスカーナと呼んでいます(笑)
四季折々の景色が美しい
モイシェンからフォンタナルス・デル・アルフォリンを結ぶ州道CV652を走ると、わくわくする景色が広がります。オリーブやアーモンドの畑がある山を抜けると、ゆるやかな丘陵地帯。そこには、春は新緑がまぶしいぶどう畑の間に赤いアマポーラが顔を出します。もっとも牧歌的な景色が楽しめる季節です。
8月はひまわり畑。壮観です。
この時期になると、収穫も近いのでブドウの木は大きな房をつけています。
そして収穫が終わってしばらくすると、秋色に染まったブドウ畑が広がります。
このように季節ごとに違った美しさを見せてくれるこのドライブルートは、私のお気に入りです。
丘の上にたたずむイベロ人の集落跡
この州道を少し横に入った丘の上には、イベロ人(イベリア人)の住居跡la Bastida de les Alcusses(スペイン語:la Bastida de las Alcuzas)があります。イベロ人とは先史時代からイベリア半島に住んでいた人たちのこと。
ここには紀元前4世紀に塀で囲まれた、縦横650m×150mほどの細長く小さな要塞都市があったのです。遺跡は20世紀のはじめに発掘され、一時中断した後、今も調査が続いています。
住民は200m下の平地で麦やきび、豆類、オリーブ、いちじく、アーモンドを作っていたほか、家畜を飼い、ワインを作っていたそうです。また、イベロ文字が書かれた鉛板も見つかっており、文字を使っていたことがわかっています。
遺跡は公開されているので、興味のある方はぜひ訪れてみてください。敷地内には当時を再現した家屋があります。中には生活用品のレプリカもあり、イベロ人の暮らしを垣間見ることができます。どの家も平屋で、中にはパティオ(中庭)のある家もあったそうですよ。
イベロ人住居跡 La Bastida de les Alcusses
- WEB :http://bastidaalcusses.es/web/ (スペイン語、英語、バレンシア語)
- 営業時間:火~日10:00~14:00、16:00~18:00(日祝は午前のみ)/夏季と聖週間(※)の午後は18:00~20:00/水~日の10:30~14:00はガイドツアーあり。
- 入場無料
※編集部註:聖週間とは別名「セマナ・サンタ」といいます。イエス・キリストが復活したと言われる復活の日の前日までの1週間を指し、キリスト教の重要な行事です。
毎年日付が異なるため行く際は要チェックしてください。
また、この遺跡から発掘されたものはバレンシアの先史博物館に展示されているので、両方あわせて見学するとより理解が深まるはずです。遺跡のシンボルになっている小さなイベロ戦士像はここにあります。
バレンシア先史博物館
- WEB: http://www.museuprehistoriavalencia.es/web_mupreva/?q=es (スペイン語、英語、フランス語、バレンシア語)
- 営業時間:火~日 10:00~20:00
- 入場料2ユーロ
※どちらも2020年9月現在の情報です。行かれる方は事前にご確認ください
およそ10ものワイナリーが集まるワインの産地
イベロ人が住んでいた2400年前には既にワイン生産をしていたこの土地には、今ではおよそ10ものワイナリーがあります。見学を受け付けているところもあるので、ワイン好きの方にはおススメです。
<イベロ文字がエチケットになったおいしいワインもあります>
この地域のワイナリーで組織されているTerres dels Alforinsというアソシエーションがあり、毎春3つの町が1年交代で青空ワイン祭りを開催します。アソシエーションに所属するワイナリーがブースを出し、参加者はグラスを片手に飲み歩きを楽しみます。私が最後に行ったのは3年前でしたが、試飲チケット8枚とグラスで7ユーロと驚きのお値段!! さすがに全部使い切れませんでした。食べ物も売っていますが、チーズや生ハムといった乾き物のおつまみを持参するといいですよ。
アソシエーションのWEBサイトに、ワイナリー情報などが掲載されています(最近更新されていないようですが・・・)。
Terres dels Alforin
https://terresdelsalforins.com/index.php/es/ (スペイン語、英語、バレンシア語)
アクセス
最後にこの地域へのアクセスですが、残念ながらとても不便です。車がないとまわれません。バレンシア北駅からモイシェンまでは近郊線C2が通っているので(片道約1時間20分)、そこからタクシーをチャーターする手もあります。機会があればぜひ訪れてみてくださいね。
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田川敬子(Keiko Tagawa)
- 1996年スペインにひとめぼれ。以後何度も渡西し、2002年春に夢がかなってスペインで日系企業に就職。その後現地企業を経て、現在はオリーブオイルソムリエ/テイスターやライターとして活動中。