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カンボジアが誇る水辺のパワースポット!プノンクーレン、クバールスピアンを訪問

世界中から多くの観光客が訪れる世界遺産、アンコール遺跡群。
中でも、ヒンドゥー教の宇宙観を再現して造られた壮大なアンコールワットはパワースポットとしても有名であり、大いなる力を感じたい人々がこぞって訪れます。
しかし、700以上もの建造物の集合体であるアンコール遺跡群の魅力は、アンコールワットだけではありません!特にアンコールワットの北東部には、雄大な自然のパワーを得ることができる遺跡が点在しています。
今回は、訪れるだけで水のエネルギーを体中に浴びることができる「プノンクーレン」と「クバールスピアン」をご紹介します。
目次
- 清らかな水の力で栄華を極めたアンコール王朝
- 聖水が湧き出るアンコール王朝発祥の地:プノンクーレン
- 水辺に神々が宿る「カンボジアのガンジス川」の源流:クバールスピアン
- 水中遺跡訪問にあたっての注意点
- おわりに
清らかな水の力で栄華を極めたアンコール王朝
802年〜1431年まで600年以上続いたアンコール王朝。最盛期にはインドシナ半島の広範囲を領有するほどの力を誇ったと言われています。
豊かな大地を基盤とし、大農業国家として栄えたアンコール王朝発展の鍵を握ったのは水。
都が置かれた現在のシェムリアップ地域は、シェムリアップ川、ロリュオス川といった河川が貫く土地です。水資源を最大限活用し、治水・灌漑設備を張り巡らすことで農業の振興を図り、大帝国を築き上げたのです。
今回ご紹介するプノンクーレンとクバールスピアンは、いずれも山上の源流付近に位置する遺跡。アンコール王朝中に清らかな水を送り出した聖水生成所ともいえる場所でした。
いざ、水のエネルギーをたっぷりと浴びにいきましょう。
聖水が湧き出るアンコール王朝発祥の地:プノンクーレン
アンコールワットから北東に約50km。車を1時間30分ほど走らせたところにあるプノンクーレンは、標高500m弱の聖山です。
アンコール王朝の開祖であるジャヤヴァルマン2世が現人神の王として即位した場所であり、王朝が幕明けた地として知られています。
山の麓から見どころが点在する中腹までは、車やバイクなどで30〜40分ほど砂岩に囲まれた山道を上がっていきますが、道すがら感じられるのは、緊張感に包まれた神聖な空気。
シーンと静まり返った中、時折天高くから神々しい木漏れ日が差し、鳥のさえずりが響き渡ります。
かつてこのような環境で王は神々と交信していたのでしょうか。
見どころ1:聖なる水が降り注ぐ大小の滝壺
湧き水で有名なプノンクーレン。
プノンクーレンの水は「Kulen」という商標でミネラルウォーターとしても商品化されています。
山道を登りきったら、最初に大小2つの滝壺を訪れましょう。
滝壺は聖水に直接触れられる場所であり、パワースポットとしても親しまれています。休日になると、家族や友人と連れ立って訪れる地元の人々で賑わいを見せる場所です。
滝に打たれる人、目を閉じ、耳を澄ましてメッセージが降りてくるのを待っているような人々の姿も。
周辺は、水の精が見えそうなほど神秘的な雰囲気。
水遊びを楽しみたい方は、水着を用意していきましょう。
滝壺から少し南の駐車場付近にある、横たわるヴィシュヌ神と蓮の花の上で瞑想するブラフマー神を描いた水中遺跡にも注目です。
見どころ2:川底でパワーをみなぎらせるリンガ・モイポワン(1000本リンガ)
滝壺から川沿いを1.5kmほど南下すると、川底におびただしい数の円形が見えてきます。
これらは一体何だと思いますか?
正解はリンガです。破壊と再生を司るシヴァ神または男性器のシンボルであり、多産・豊穣を願ってヒンドゥー教の寺院内に彫像として祀られることがあるリンガ。
アンコール遺跡群の中でも、円筒のような形状で繰り返し現れるモチーフですが、プノンクーレンのリンガは単純化された円形で表現されたもの。
密集した様子が迫力を感じさせてくれます。
なぜ川底に無数のリンガを彫ったのかというと、リンガの上を通った水は清められると信じられていたからなのだとか。
ここで王朝中の国土を潤す聖水が生み出されていたのですね。
見どころ3:聖山を目指す巡礼者が集まる参拝スポット
「1000本リンガ」から東に500mほど進むと、寺院や祠堂が集まったゾーンがあり、カンボジア各地から訪れる参拝客で賑わいを見せています。
線香や賽銭を捧げて手を合わせる人々、僧侶に祈祷をしてもらう人々の列や、参拝所の横で民俗楽器を奏でる楽隊の姿も。
大きな砂岩の陰に仏像が設置された、天然の祠を順に巡って参拝するのもよいでしょう。
見どころ4:巨大砂岩から彫り出された涅槃仏
参拝スポットはさらに高いところにもあります。
階段を登り、切り立った砂岩でできた祠へ入っていくと、16世紀に設置されたといわれる涅槃仏(プリア・アントン)が。
艶やかな体を祠堂内いっぱいにどっしりと横たえている様子は圧巻です。
頭のてっぺんから足の爪先まで目を配って拝みましょう。
プノンクーレン
- 開門時間:6:00〜12:00
※12:00以降は入場ができなくなるため、午前中早めに行動しましょう。 - 休園日:なし
- 入場料:20USD(=約2,200円)
※アンコール遺跡共通チケットでは入場できないので要注意。
※2020年3月時点
チケット購入場所
- シェムリアップ市内のプノンクーレン専用チケットセンターで購入可能
水辺に神々が宿る「カンボジアのガンジス川」の源流:クバールスピアン
プノンクーレンを一通り堪能したら、車で北西へ30kmほど移動し、2つ目の遺跡、クバールスピアンを訪れましょう。
現地のクメール語で「頭の橋」という意味を持つクバールスピアンは、11世紀初頭に開かれたシェムリアップ川の源流にあたる遺跡です。
インドやヒンドゥー教の宇宙観に多大な影響を受けていたアンコール王朝時代には、シェムリアップ川は聖水が流れるガンジス川に、クーレン山(プノンクーレン)はヒマラヤ山脈になぞらえられていたそう。
クバールスピアンは、病気の治癒や幸福をもたらすとされる「カンボジアのガンジス川」が湧き出る場所なのです。
見どころ1:巨大砂岩が取り囲む、天然アスレチックさながらの山道
見どころのある山頂までは、勾配のある山道を40分ほどかけて登っていきます。トレッキング気分で頂上を目指す過程も、クバールスピアン鑑賞の醍醐味といえるでしょう。
山道の両脇には巨大な砂岩、絡みつく木の根や枝、うっそうと茂る木々。
自然界のものたちが共演する世界には、生命力がみなぎっています。
アンコール遺跡の中でも観光客が多くない穴場遺跡であるため、静けさと新鮮な空気をじっくりと味わうことが可能。
山道の勾配はややきつく、息切れしてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、水分補給をしつつ、休み休み進んでいきましょう。
見どころ2:神々が演出する川辺の劇場
山道を登っていき、小川のせせらぎの音が聞こえてきたら、頂上が近いというサインです。
頂上付近に到着すると、岩という岩に彫刻が散りばめられているので、川辺や川底をくまなく探してみましょう。
天然の岩が作り出すなだらかな階段の断面に着目してみると、ヒンドゥー教の神々が姿を現します。
段差を利用した遠近感のある世界は、寄っても引いても素晴らしいフォトスポットです。
度々描かれているのは、横たわるヴィシュヌ神とヴィシュヌ神の臍から伸びる蓮の葉の上で瞑想するブラフマー神。
ヒンドゥー教ヴィシュヌ派における天地創世神話のワンシーンに基づくモチーフです。
神々の周囲を彩るのは、多様な形をした無数のリンガ。
岩の壁面、表面をぎっしりと埋め尽くすリンガが川辺の舞台に立体感をもたらしているようにも見えます。
そのほか、創造神ブラフマーが刻まれた小さな岩や、聖牛ナンディンに乗って行進するシヴァ神一行を描いた岩などもありますよ。
見どころ3:聖なる水を生み出す水中のリンガとヨニ
川沿いを北から南に歩いて行くと、プノンクーレンの「1000本リンガ」同様、川底にぎっしりとリンガが彫られたゾーンに突き当たります。
リンガだけでなく、女性器のシンボルであるヨニとリンガがセットになったものも。
どこか暗号めいた配置で描かれている様子は、1000年の年月を経てもなお、はっきりと見てとれます。
シェムリアップ川は、農業大国アンコール王朝に恵みをもたらす水源でもありました。
川辺を彩る神々の彫刻と川底に彫られたリンガとヨニが、田畑を潤す水を清めていたことが分かります。
クバールスピアン
- 開園時間:7:00〜17:30
※入山は15:00まで - 休園日:なし
- 入場料:アンコール遺跡群共通のアンコールパス(1日券:37USD(=約4,000円)、3日券:62USD(=約6,700円)、7日券:72USD(=約7,800円))で入場可能
※2020年3月時点
チケット購入場所
- シェムリアップ市内のアンコールチケットセンターで購入可能
水中遺跡訪問にあたっての注意点
プノンクーレン、クバールスピアンはいずれも川辺の遺跡。
水中彫刻は、水量によって見え方が変わります。
水は多すぎても、少なすぎてもよくないため、適度に水がある時期を選んで訪れたいものです。
彫刻の上にうっすらと水が被るような状態を楽しむためには、雨季の始め(5〜6月)または、終わり(11月頃)の訪問がベストでしょう。
おわりに
水とともにあり、水のためにあるようなプノンクーレンとクーバールスピアン。
絶え間なく湧き出す山上の源流は、水中に宿った神々のエネルギーを水とともに広大な国土へと浸透させます。
どっしり佇むアンコールワットとは一味違った、涼しげで神秘的な雰囲気を感じに、水辺の遺跡を訪れてみてはいかがでしょうか。
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HARU
- カンボジア・プノンペン在住のフリーランスライター。カンボジアの観光、アート、カルチャー関連の記事を各種メディアに寄稿中。取材・インタビューを交えながら、現地在住者ならではの視点で旅行に役立つ情報を発信していきます!