【たびこふれ美術館】第7話:ポルトガルで紡がれた伝統の装飾タイル「アズレージョ」

こんにちは!

たびこふれ美術ライターのやすおです♪

突然ですが私先週、ポルトガルに行ってまいりました♪

いつもの添乗でしょ??

って感じだと思うのですが・・・添乗ではなくプライベートのバカンスでポルトガルに遊びに行ってきたのです~!フウ~~~←余韻が残ってる(笑)

私は1年に1度ツアーに乗って海外に遊びに行くのですが、今回は阪急交通社さんのツアーに潜り込んで(ちゃんとお金は払ってますよ!笑)、素敵な添乗員さんからいろんなご案内を聞いて、大満喫してまいりました。

そして、そこで見たのが素晴らしい「アズレージョ」の数々!

添乗中には何度も見てるんですが、なかなかゆっくり眺める時間って添乗ではないんですよね。

そこで、今回の旅行で一気に虜になってしました美しいアズレージョについて今回レポートさせていただきます!お楽しみくださいませ♪

トップの画像は「アズレージョと私」、顔が赤いのはお昼前だというのにビールを2杯いただいた直後だからです。

やっぱ、旅行ってサイコー!(笑)

目次

そもそもアズレージョとは?

アズレージョ2.jpg

(ポルトの町にあるサン・ヴェント駅構内のアズレージョ)

アズレージョとはポルトガルとスペインに存在する、上薬をかけて焼かれたタイルのことを指します。

スペインでもセビリヤなどアンダルシア地方には多くのアズレージョが残されていますが、やはりアズレージョと言うとポルトガル!

街を歩いていても、建造物に入ってもその美しい青い輝きに心を奪われる・・・

そんな「ポルトガルらしさ」を象徴する一つの要因にもなっています。

アズレージョの紀元は古く、500年ほど前にスペインを経由してイスラム教徒から入ってきたタイルの文化だと言われています。

彼らの話すアラビア語で小さな磨かれた石の事を「الزليج(どうやらアズレホと読むらしい)」と言うらしく、その言葉がなまって「アズレージョ」と呼ばれるようになったそうです(諸説あり)。

時代の変化を敏感に感じながらその姿を変え続け、現在でも「現代アズレージョ」と呼ばれる芸術として残るように、今なお続くポルトガル人の心となっています。

アズレージョの変遷 ~流入初期~

イスラム教徒たちから伝わった初期のタイルがこんな感じ。

アズレージョ3.jpg

「偶像崇拝禁止」の徹底で知られるイスラム教徒は、人物や動物などを用いて装飾を作ることが出来ないので、彼らの装飾は幾何学模様や植物などで彩られます。

いくつものパターンがあるイスラム装飾ですが、特に有名なのはこの模様。

お花のような太陽のような、同じ模様がどこまでも続いていく「アラベスク」という技法が使われており、イスラム教の教理がどこまでも続いていくことを意味しています。

このような美しいタイルに魅せられた時の王様マヌエル1世が、王の離宮であるシントラ王宮の内部をタイルで飾ることにし、そこから徐々に宮殿・教会・修道院などの壁に取り入れられていったようです。

うんうん、きれいだもんねぇ。

アズレージョ4.jpg

また、細かく見てみるとわかるのですが、タイルの上に柄が描かれているわけではなく、細かく切ったタイルをモザイク状にはめ込んでいるのが分かります。

途方もない作業ですが、日本でいう「仏画を描く」という行為にも繋がるような、一種の修行のような工程の一つだったのかもしれませんね。

アズレージョの変遷 ~キリスト教に触れて~

イスラム教の装飾であったタイルはジブラルタル海峡を渡ってイベリア半島に入ってきて、大きな化学反応を起こしました。

1つは、キリスト教との出会い・・・!

2つは、マジョルカ焼きの技術との出会い・・・!

そして、アズレージョはこう変わりました。

アズレージョ5.jpg

これは16世紀後半に作られた、教会の祭壇前のアズレージョです。

教理とかのお話はちょっとデリケートなお話になるので、専門サイトにお任せしようと思うのですが、要するにイスラム教徒で禁止されていた偶像崇拝がキリスト教では容認されているのが事実です(特にカトリックでは)。

ですので、今まではできなかった人物を描くことができるのです!

マリアやイエスを描くことができたキリスト教国であるポルトガルでは、先ほどのモザイク状のタイルでは人物を美しく表現することができないため、「埋め込む方式」から「描く方式」へと変わりました。

その「描く方式」への転換になったのが、イタリアのマジョルカで陶器(マジョルカ焼き)に使われていた直接彩色の技術だったんですね。

アズレージョ6.jpg

描かれるテーマもどんどん幅広くなり、人物や動物描写・歴史上の出来事・神話・宗教的事項などが表されるようになってきました。

そして、モザイクでは表現できなかったようなグラデーションや、細部の表現など、「描く」ことによって可能になったものを駆使しながら、今までになかった美しいアズレージョを作り上げていくのでした。

アズレージョの変遷 ~中国磁器への憧れ~

こうしてテーマも鮮やかさもイスラム教時代を脱したアズレージョですが、17世紀ごろから新たな様相を呈してきます。それが・・・

中国磁器との出会い。

当時、オランダ東インド会社が東洋の様々なものをヨーロッパに輸入しており、その中に白と青のみでデザインされた「青花磁器」と呼ばれる中国磁器がありました。

その美しい姿に魅了されたヨーロッパの富裕層たちは、下の絵画のようにこぞって中国から輸入されたこの磁器を生活に取り入れていきました。

アズレージョ7.jpg

(ユリアーン・ファン・シュトレーク『レモン、オレンジ、桃と万暦磁器のある静物』17世紀)

しかしそんな中、問題が発生・・・

当時の中国の皇帝であった明の万暦帝が死去し、中国磁器のヨーロッパへの輸入がストップ!!

そこで・・・

入ってこないなら作るしかない・・・!

と、メラメラ燃えたオランダの陶器職人たちは中国磁器の模倣品の制作を始めていきました。

それが今でいう「デルフト焼き」と呼ばれる白と青の焼き物で、大量生産されたデルフト焼きはヨーロッパ中に輸出され、その影響をアズレージョも受けてこのように変わりました。

アズレージョ8.jpg

白と青の美しいコンビネーションで表された貴族たちの生活の様子です。

今、ポルトガルの「アズレージョ」というと「白と青のパネル」!というくらいの一大装飾としてのアズレージョが完成しました。

アズレージョ9.jpg

アズレージョの変遷 ~大衆化に向けて~

こうして変遷を遂げてきたアズレージョは18世紀、ジョアン5世の時代に植民地であったポルトガルから金鉱が発見され、その莫大な富を背景に、ますます美しく進化を遂げました。

しかし、転記が訪れるのが18世紀半ば。

1755年に発生した、「リスボン大地震」です。

リスボン市内の建物を大きく壊滅させたこの地震の復興に、今までの「装飾的」であったアズレージョはいよいよ「実用的」なものに変遷していきます。

時を同じくして1767年にラト・セラミック工場が設立され、今までは不可能であったタイルの大量生産がされるようになりました。

このことにより、今までは「富裕層の建築を飾る芸術」であったアズレージョは、「一般市民が享受できる大衆芸術」に姿を変えていくことになったのです。

その後、産業革命を迎えた世界は、安価なものづくりが容易にできるようになり、道路の壁、教会、商店や市場、鉄道の駅などにもアズレージョが貼られ、工場製品のタイルは、旧市街の貧しい庶民のアパートにも使用されるまでになりました。

アズレージョ10.jpg

アズレージョの変遷 ~アートに昇華されゆくもの~

こうして大衆文化の一つとなったアズレージョはまさに、「ザ・ポルトガル」と思わせるまでの知名度を得ましたが、すべてのアズレージョが大衆化されたわけではありません。

アズレージョは500年間にわたりポルトガル人に寄り添い続けた、まさに「ポルトガル人の魂」、美的センス・文化的関心の塊です。

そのため、工場生産が一般的になった今なお、伝統工芸品としての質の高いアズレージョも生産されつづけていますし、アズレージョの新しい可能性は模索され続けています。

その最新をいくのが、「現代アートとしてのアズレージョ」です。

アズレージョ11.jpg

アズレージョ12.JPG

・・・現代すぎ!!汗

ここまでくると現代アートと同じで、おそらくアートは「説明するもの」という範疇を超えるのだと思います。

未来へ・・・

アズレージョの世界いかがでしたでしょうか?

建物からお土産まで広がるこの芸術は、ポルトガルでは切っても切れない存在で、たびこふれ読者のみなさんもポルトガルを訪れるときには必ず関わってくるものです。

「きれいだな~」と眺めてもらうもよし!

ただ、「アズレージョにもいろいろあったのねぇ・・・」と思って眺めていただくと、

一見「変なアズレージョ!」と思うような町中の作品も、また違った見方ができるかもしれませんね。

そう、このアズレージョみたいに・・・

アズレージョ12.JPG

変なアズレージョ!!

山上やすおのホームページはこちら

>>>美しいアズレージョを自分の眼で観られるポルトガルへのツアーはこちらからチェック!

<東京発>ルフトハンザドイツ航空利用 決定版ポルトガル8日間

<大阪発>フィンエアー利用「時を紡ぐ北スペインとポルトガル9日間」

※上記ツアーは終了しています。

編集部註:本記事は2019年12月に公開されましたが、2021年3月に一部修正しています。

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山上やすお

国内外の添乗員として1年の半分ほどを現地で過ごすかたわら、日本にいるときには各地で美術のカルチャー講師をしています。博物館学芸員資格保有。「旅に美術は欠かせない!」の信念のもと、美術の見方、楽しみ方を記事にしていきます。

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