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【フランス】ノルマンディーのチーズ街道をゆく
世界で愛されるカマンベールチーズが生まれたのは、北西フランス・ノルマンディー地方の小さなカマンベール村。ペイ・ドージュ(Pays d'Auge)とよばれるその地域は、有名な個性派チーズ、リヴァロとポン・レヴェックが生まれた場所でもあります。
3つの村を繋ぐ「チーズ街道(La Route des Fromages)」を通って、チーズのふるさとを訪ねてみました。
目次
チーズの名称はふるさとの名前
フランスのチーズの名称の多くは、生まれた土地の名前がつけられています。
気候が温暖で雨が多く、一年を通じて緑豊かなノルマンディー地方。良質の牧草の恩恵を受けて育つ乳牛の酪農が盛んで、茶色い斑点をもつノルマンド牛はシンボル的な存在です。
チーズ、バター、クリームなど高品質な乳製品とりんごが特産品。代表的チーズは4種類、どれもが発祥地の名前です。高品質保証認定 AOPに登録されている、フランスが世界に誇るチーズたちです。
写真右側はマイルドな白かびタイプ、ハート形ヌーシャテルと丸形カマンベール。左側は芳醇なウォッシュタイプ、正方形ポン・レヴェックと丸形リヴァロ。
高品質チーズを保証するAOPとは
ヨーロッパ産ワインやチーズのラベルにみかけるAOP(Appellation d'origine protégée)とは、「原産地名称保護」と訳される、EU共通の品質保証です。
国内で、製造過程と品質評価において特定の厳しい条件を満たした認定品のみが、欧州委員会の審査を経て、AOPに登録されます。認証後は、登録規定以外のものは、登録名称を使って製造販売することは許されません。ただしカマンベールチーズにおいては、認定前に名称が世界に一般化してしまったため、「カマンベール・ド・ノルマンディー(ノルマンディー産カマンベール)」という名称でAOP登録されています。
条件の一部をあげると、「カマンベール・ド・ノルマンディー」は、牧草を食べて育ったノルマンド牛の牛乳の比率が高く、低温殺菌処理されていない生乳のみを原料とし、柄杓ですくって型入れられ、ポプラの木箱入りで販売されます。「世界最高のカマンベール」といわれるその風味は、驚くほど濃厚で深い味わいです。
のどかなカマンベール村
森林と渓谷が美しいペイ・ドージュ地域。上下の起伏が多い道路を進み、田舎の小道を通り抜けて、たどり着いたカマンベール村は、本当に小さな素朴な村でした。
カマンベールチーズの起源は、18世紀後半フランス革命時。パリの恐怖政治からこの村に逃避してきた司祭が、村で細々とチーズを作っていたマリー・アレルという農婦に、チーズ造りの秘伝を教えたことに始まります。グルメの神様のおはからいか、この司祭は、パリ郊外のブリー(同名の大型白かびチーズ産地)出身だったのです。
観光シーズンにだけ賑わうこの小さな村は、冬期はとてもひっそりとしていて、村唯一の観光施設も閉館中。詳しくは、こちらの動画をご覧下さい。
Maison du Camenbert
リヴァロのチーズ工場見学
リヴァロ村では、チーズ製造会社グランドルジュ社(E.Graindorge)の工場を訪ねました。近代的な展示施設は、入場無料で一年を通して訪れることが出来ます。
明るいエントランスホール。映像あり、ゲームあり、製造工場の一部も見学出来るうえ、チーズの歴史や簡単レシピまで学べる優れた娯楽施設となっています。
子どもでなくてもゲットしたい「ノルマンディーチーズすごろく」。クイズに答えてゴールする頃には、あなたもすっかりチーズ通に!
凝乳が型に流し入れられる製造過程。機械化とはいえ、ちゃんと作業員が丁寧に手作業で補助されています。
乾燥室で4-6週間、熟成を待つチーズたち。その間、リヴァロは3回、ポン・レヴェックは1回洗われ、それが味の違いになります。リヴァロのトレードマークである胴体の巻き紐は、型崩れ防止のためにつけられたそうです。
最後にある売店では、試食してお好みのチーズが選べます。その他のお土産も充実しているので、とても便利です。
Le Village Fromager E.GRAINDORGE
- 住所:42, rue Général-Leclerc 14140 LIVAROT
- HP:https://www.graindorge.fr/visiter-la-fromagerie/
ポン・レヴェックで歴史発見
ノルマンディー最古のチーズといわれるポン・レヴェックのふるさとは、高速道路の出口にあり、車の交通量も多いので、村というより町という感じです。他の都市にも移動しやすく、レストランやカフェも選択出来る大きさなので、ここを拠点に旅するのも良いでしょう。
現在、ポン・レヴェックの町にはチーズ関連施設はありませんが、ここでは、古き良き時代の面影が残る美しい町並みを楽しみましょう。木枠のみえたノルマンディー建築の観光局では、日本語の案内マップがもらえるので、是非、花壇に彩られた町を散策してみて下さい。
歴史的建築物の前には、昔の写真がパネルで展示されています。のどかな田舎のノルマンディー地方も、かつては戦火につつまれていたのでした。
商店では、シードル風味のカマンベールも発見しました。シードルとは、この地方の特産品、りんごの発酵酒。フランスでは、クレープと一緒に飲むのが定番です。チーズにはワインが欠かせませんが、カマンベールやポン・レヴェックは、シードル酒とも相性抜群です。どちらも同じ大地から生まれていますからね!一度お試しください。
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原田さゆり
- 旅・文化・猫を愛する、フランスの田舎在住者。フランス中を旅しています。