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2019年8月に開催されたアルゼンチンタンゴフェスティバル
アルゼンチンの首都、ブエノス・アイレスでは毎年冬の終わりにアルゼンチンタンゴのフェスティバルが開催されます。
アルゼンチンの無形文化遺産としても登録されたアルゼンチンタンゴは、今や、世界中からタンゴ愛好家をブエノス・アイレスに招く一大イベントです。
8月に幕を閉じた、2019年のこのフェスティバルについてご紹介します。
目次
アルゼンチンタンゴとは?
アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスの南東部に位置する船着場「ラ・ボカ」で生まれたと言われる踊りのアルゼンチンタンゴ。
「情熱的な激しい踊り」という形容詞からスペインの踊りフラメンコと間違われがちですが、タンゴは男性と女性の吐息が聞こえるほどの至近距離で抱擁しながら踊るペアダンスで、ソロで踊るフラメンコとは大きく違います。
19世紀、スペインやイタリアなどのヨーロッパ諸国から南米ブエノスまでの長旅で疲れた船乗り達が、寂しさや悲しみを紛らわすために酒場で男同士で踊り始めたことが発祥したとも言われ、その後女性と踊るペアダンスに変化。一度ヨーロッパに渡り、一世を風靡して逆輸入されたアルゼンチンタンゴは、場末の踊りから社交界の踊りへと変化し、エレガントさを求められます。
また男性の哀愁漂う背中と、猫のようにしなやかで、移り気な女性の美しい足さばきに目がいく踊りです。
ブエノス・アイレスのタンゴフェスティバル
ブエノス・アイレスアイレス市では、毎年8月に半月ほどの期間をかけて世界文化遺産にも登録された「アルゼンチンタンゴ」のフェスティバルが開催されます。
フェスティバルの内容は、アルゼンチンタンゴダンスの世界選手権、有名ダンサーや国宝級のミロンゲーロ達の無料レッスン、タンゴ音楽の演奏会やタンゴに関係する映画の上映、タンゴダンサー達によるショーなどが市内にある劇場や美術館などで期間中毎日、プログラムが開催されています。
諸外国では、アルゼンチンタンゴというと競技ダンスとして捉えられがちですが、ブエノスアイレスの「タンゴ好き」にはタンゴダンスよりも音楽好きの方が多く、またタンゴに関する非常にマニアックな人が多いです。レコード収集家やオルケスタマニア、1人の作曲家や演奏家の熱狂的なファンなども多く、「ミロンガ」と呼ばれるタンゴのダンスパーティには、毎晩タンゴ愛好家が集います。
そういった人たちが唸り、心待ちにする1年に1度のブエノスアイレス市主催のフェスティバルです。
アルゼンチンタンゴ世界選手権
タンゴフェスティバルの中でも1番大きく取り上げられ、アルゼンチンタンゴを世界に広めた立役者は、アルゼンチンタンゴの世界選手権と言えるでしょう。
第一次予選とセミフィナルはラ・ボカ地区のウッシーナ・デ・アルテで開催し、ファイナルは市街地にあるルナ・パルクという9,000人を収容する多目的アリーナで開催されます。
誰でも参加できて参加への規制や制限がないため、男女のペアに限らず、女性同士、男性同士のカップルや車椅子のカップル、また80歳、90歳のミロンゲーロ(タンゴ愛好家)達の挑戦もあります。互いを尊重できて互いにとって大切な人であれば踊れる、それがタンゴです。
また、参加は無料で、事前のWeb申込みかパスポートを持参していれば直前に受付ができれば参加可能。
過去、世界選手権の日本人優勝者も輩出しており、近年は2018年に日本で育った日系3世のアクセル新垣氏がエセナリオのカテゴリで優勝し、話題を呼びました。
今年の世界選手権を賑わせたNews
アルゼンチンタンゴの世界選手権で今年1番賑わせた話題は、99歳のアイルランド人の男性が出場したことでしょう。彼は、80歳からタンゴを始め99歳の今年、ブエノスアイレスで開催された世界選手権に出場。
99歳という年齢で飛行機に乗ってアイルランドからアルゼンチンまで移動し、2日間の選手権第一次予選に出場する姿は、タンゴへの愛なしではできない偉業です。会場からは、その偉業への敬意とタンゴへの愛の深さに感動し、多くタンゴファンから拍手が寄せられました。
アルゼンチンタンゴ世界選手権、2019年優勝者達
アルゼンチンタンゴ選手権には、カテゴリが2つあります。
ロンダと呼ばれる輪を複数のダンサーで作り、踊っている2人が楽しむ様をエレガントに魅せる「ピスタ」と、激しくアクロバティックな動きでショータンゴとも呼ばれる「エセナリオ」の2つ。
日本ではアルゼンチンタンゴというとショータンゴの激しさを連想させますが、実はブエノスアイレスではピスタと呼ばれるカテゴリが人気です。
2019年の今大会には、ピスタのカテゴリでは36ヶ国744ペアが参加し、その中からアルゼンチン人とロシア人ペアのMaksim Gerasimov&Agustina Piaggioが優勝。
エセナリオの優勝者は、アルゼンチン人のペアのFernando Rodriguez&Estefania Gomez。
優勝者には賞金と日本を含む、世界ツアーが用意されています。
アルゼンチンタンゴの世界選手権が終わると、フェスティバルが終了しブエノスアイレスの冬が終わります。季節は暖かな春へと変わり、紫色に街を染める春の花「ハカランダ」が咲き乱れる季節。
世界中からブエノスアイレスへと訪れていたタンゲーロス(タンゴ好きの人びと)はまた来年のフェスティバルに向けてそれぞれの国や地域に戻っていきます。
基本情報
ルナ・パルク
- 住所:Av.Eduardo Medero 420 C1106 CABA
- HP:https://www.lunapark.com.ar
Usina del Arte ウッシーナ・デ・アルテ
- 住所:Agustín R. Caffarena 1 C1157 CABA
- 定休日:月曜日
- 入場料:無料
- HP:https://www.buenosaires.gob.ar/cultura/usina-del-arte
タンゴフェスティバルの情報2019年
ブエノス・アイレス市のHP:https://festivales.buenosaires.gob.ar/2019/tangofestivalymundial/es/home
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AKANE
- アルゼンチンのブエノス・アイレス在住のタンゴダンサー、講師。タンゴやブエノス・アイレスの文化・情報について、日本から見て地球の反対側の本場ブエノス・アイレスから情報を発信中。