たびこふれ

フランス革命から230年。断頭台に消えたマリー・アントワネットのメタモルフォーゼ展

記事投稿日:2019/10/02最終更新日:2019/10/03

Views:

Honeyview_29.jpg
<Portrait de la reine Marie-Antoinette dit « à la rose », Élisabeth-Louise Vigée-Lebrun, 1783, Château de Versailles © Jean Feuillie / Centre des monuments nationaux>

1789年フランス革命により、王妃の座から転げ落ち、処刑されたマリー・アントワネット。38年に満たぬ短い生涯でありながら、死後なお世界中で話題に上ることの多い人物です。実際、極東の国、現代日本においても彼女の名を知らぬ人はほとんどいないはず。

フランス革命から230年となる今年、その実像と虚像に迫るパリ・コンシエルジュリーの『マリー・アントワネット、イメージのメタモルフォーゼ(Marie-Antoinette, métamorphoses d'une image)』展を紹介します。

目次

王の居城として建てられたコンシエルジュリー

2.jpg
<コンシエルジュリー時計塔側 © Caroline Rose CMN>

会場となるコンシエルジュリー(Conciergerie)は、もともと王の居城として建てられたもので、当時はシテ宮(Palaisdela Cité)と呼ばれていました。10世紀から14世紀前半にかけカペー朝の歴代王がしばしば滞在しましたが、14世紀後半からは司法や財務関係の機関として用いられるようになります。そうして次第に、「門衛のいるところ」という意味のコンシエルジュリーという呼び名が定着しました。

18世紀終わりのフランス革命時には、革命裁判所が置かれ、拘留者たちの多くがここに収容されました。マリー・アントワネットもその一人です。

3.jpg
<コンシエルジュリー, salle des Gens d'armes © Benjamin Gavaudo CMN>

コンシエルジュリーは、現在博物館となっており、端麗王フィリップ4世(1268-1314)が命じたゴシック式の広い部屋なども見学可能です。ついでながら、パリで一番美しい礼拝堂と言われるサント・シャペルも、コンシエルジュリー同様、元はシテ宮の施設の一部でした。いずれも国立モニュメントセンター(Le Centre des monuments nationaux)が管理しています。

王妃を偲ぶパリのモニュメント


<La reine à la Conciergerie(コンシエルジュリーの王妃), A. Sceffer>

このコンシエルジュリーに最期の朝まで約10週間収容され、1793年10月16日ギロチンによる斬首刑に処されたのが、フランス王妃マリー・アントワネットです。女帝マリア・テレジアの娘としてオーストリアに生まれた彼女が、後のフランス国王となるルイ16世のもとに嫁いできたのは、わずか14歳の時でした。

その後のフランス宮廷での豪奢な暮らしとスキャンダル、フランス革命という大きな時代の流れに巻き込まれた悲劇的な晩年は、よく知られるところです。


<Marie-Antoinette se rendant au supplice(処刑台へ向かうマリー・アントワネット), François Flameng, 1885. © Coll. Musée de la Révolution française-Domaine de Vizille, Dépôt du musée d'Art et d'Archéologie, Senlis.>

処刑後、亡骸は今のパリ8区にあったマドレーヌ地区の共同墓地に葬られますが、復古王政期に掘り返され、1815年1月には夫ルイ16世の亡骸とともに、サン・ドニ大聖堂(Basilique de Saint-Denis)で国葬が執り行われました。マドレーヌの共同墓地跡には、現在フランス革命犠牲者のための贖罪礼拝堂(Chapelle Expiatoire)が建っています。

サン・ドニ大聖堂

  • 住所:1, rue de la Légion d'Honneur, 93200 Saint-Denis
  • 開館時間:10時~17時15分(日曜は12時~、4月~9月は~18時15分
    ※例外的に今年10/9は11時から開館
  • 定休日:1/1、5/1、12/25
  • 入場料:9ユーロ
  • http://www.saint-denis-basilique.fr/

贖罪礼拝堂

  • 住所:29, rue Pasquier, 75008 Paris
  • 開館時間:10時~12時30分、13時30分~17時(4月~9月は~18時30分)
  • 定休日: 日・月曜(10月~3月は水曜も)、1/112/25
  • 入場料:6ユーロ
  • http://www.chapelle-expiatoire-paris.fr/

悲劇の主人公か、わがままな浪費家か?


<マリー・アントワネットが最期の日に履いたとされる室内履きMusée des Beaux-Arts de Caen, © cliché Patricia Touzard>

マリー・アントワネットがどういう人物であったのか、その評価は、時代や立場によって、実にさまざまです。"悲劇の主人公"、"理想の母親"、"教養高い女性"といった肯定的な見方がある一方、"国民を裏切った外国女"、"わがまま娘"、"浪費家"という否定的イメージも広く流布しています。


<マリー・アントワネット手書きの最後の手紙 ©Archives nationales (France)>

『マリーアントワネット、イメージのメタモルフォーゼ』展は、貴重な資料の初公開で歴史を辿るとともに、死後なお多岐に亘る分野で取り上げ続けられるマリー・アントワネット像を広く分析する意欲的な展覧会です。

78.jpg
<Gazette des Atours de la Reine, 1784-1786, ©Archives nationales (France)王妃のガゼット・デ・ザトゥール>

貴重な資料には、死刑裁判に関するアーカイブや、マリー・アントワネットが記した最後の手紙、ガゼット・デ・ザトゥール(王妃がその日着る服を選ぶために作られた布の見本帖)などが含まれます。普段は、フランス国立中央文書館の宝物庫に収められているこれらの重要文書が公開されるのは、非常に珍しいことです。

書籍と映画:『ベルサイユのばら』の存在感


<Marie-Antoinette : Le hameau de la Reine, 2014 ©Pierre et Gilles>

また、絵画や版画のみならず、ファッション、映画、漫画、小説などの分野でのマリー・アントワネット像に迫るのも、今回のエキスポの特徴です。

その中にはもちろん(!)根強い人気を誇る日本の漫画『ベルサイユのばら』(池田理代子著)も含まれています。1972年に誕生した同作品のフランス語訳が発行されたのは2002年になってからのことでしたが、それに先立ちアニメ版は、1986年から2005年にかけて、フランスのテレビでも放映されました。ちなみに、フランス語のタイトルは、『レディ・オスカル(Lady Oscar)』。実は、フランスでは、日本の漫画をベースに、この同じタイトルで、実写版の映画も作られています。監督はなんと、『シェルブールの雨傘』などで知られるジャック・ドゥミ(Jecques Demy)。1978年の作品です。

そのほかにも、マリー・アントワネットを題材とした小説や映画は多く、映画だけでもこれまでに50以上発表されています。最近では、2001年に刊行されたアントニア・フレーザーの小説『マリー・アントワネット』(邦訳はハヤカワ文庫から2006年に出版)や、これを下敷きにしたソフィア・コッポラ監督による2006年の映画が挙げられます。同展覧会では、もちろん、これら映像作品に関する資料も多く展示されます。

また、パリ5区カルチエ・ラタンにある映画館ル・シャンポ(Le Champo)では、展覧会時期に合わせ10月末から11月にかけてマリー・アントワネット関連の映画を特集で上映する予定となっています。

ル・シャンポ映画館

虚実入り乱れるマリー・アントワネット像


<ディオールによるコートドレス, 2005年春夏コレクションJohn Galliano, Dior ©Laziz Hamani >

慣習を嫌い、宮廷に流行の風を吹かせたというマリー・アントワネットは、モード界にも多くのインスピレーションを与えています。

奇抜なヘアスタイルもいとわなかった豊かな髪、純粋無垢な少女と罪深い咎人の混ざり合ったイメージ、切り落とされた首などの強いインパクトは、時代を超えてアーティストを惹きつけます。


<Royal Blood, Marie-Antoinette, † 1793, 2000, Erwin Olaf © Erwin Olaf>

展覧会のタイトルにある「メタモルフォーゼ」とは、「変化」「変身」という意味を持ちます。時と場所によってさまざまなイメージに変化し続けてきたマリー・アントワネット像は、こうして並べてみるとまるで万華鏡のようにも思えます。

これらを鑑賞した後、あなたの頭の中に、どんなマリー・アントワネット像が生まれるのか、知りたくありませんか?

「マリー・アントワネット、イメージのメタモルフォーゼ」展の詳細

会期はマリー・アントワネット226回目の命日となる2019年10月16日から2020年1月26日まで。場所、時間、特別チケットなどについては下の通りです。

  • 場所:コンシエルジュリー(Conciergerie)
  • URL:http://www.paris-conciergerie.fr/
  • 住所:2 boulevard du Palais, 75001 Paris
  • 最寄り駅:メトロ1,7,11,14番線のChâtelet駅、4番線のSaint-Michel駅またはCité駅
  • 開館時間:9時30分~18時(水曜日は~20時30分)(入場は閉館の45分前まで)
  • 休館日:12月25日
  • 入館料:大人9ユーロ
    ※特別パス『マリー・アントワネット』:大人26ユーロ(コンシエルジュリー、贖罪礼拝堂、サン・ドニ大聖堂、ランブイエ城の入場料を含む)


プロフィール画像
この記事を書いた人
冠ゆき
  • Facebook シェア
  • twitter シェア
  • はてなブックマーク  シェア
  • LINE シェア

記事投稿日:2019/10/02最終更新日:2019/10/03

Views:

フランスのアクセスランキング

    © 2017 TabiCoffret Co.,Ltd.