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音楽歴史を辿るふらり旅。ニューヨークジャズの都、ハーレムを散歩
世界的に音楽文化中心都市の一つであるニューヨーク。様々なジャンルの音楽文化が進化し続けるこの街で、歴史が特に深いのがマンハッタン区のアップタウンに位置するハーレムのジャズである。今もこのエリアにはアフリカ系アメリカ人、カリブ地域の移民たちによって築かれた歴史や音楽文化の情緒溢れる場所が健在するのだ。
目次
- アメリカ南部からハーレムに辿り着いたジャズ
- エンターテインメントの殿堂 アポロシアター
- ビバップを代表するトランペッター ディジー・ガレスピー壁画
- ジャズに関する貴重な資料を展示している 国立ジャズ博物館
- アフリカンティーでほっと一息 Serengeti Teas&Spices
- 最後に
アメリカ南部からハーレムに辿り着いたジャズ
西洋音楽とアフリカ音楽の融合によりアメリカで発展したジャズ。
南部ルイジアナ州ニューオリンズが発祥の地と言い伝えられているが、アメリカ南部の労働者階級の人々によるものということしか明確ではなく、はっきりした語源は現在でも分かっていない。スピリチュアル、ブルース、ラグタイムという要素を含み、ルーツはアフリカ、ニューイングランドの宗教的な賛美歌やヨーロッパの軍隊音楽にある。アフリカ音楽を起源とするものは、アフリカからアメリカ南部に奴隷として連れてこられたアフリカからの移民、その子孫の人種音楽としてもたらされた。
南北戦争後、自由を得た多くのアフリカ系アメリカ人やカリブ地域からの移民が、貧しさから逃れるためにアメリカ南部からハーレムに移住。そして1920年から1930年代半ば頃までに「ハーレム・ルネサンス」という人種的アイデンティティを啓発する思想的・社会的運動の革命が起きる。ハーレム・ルネサンスはアフリカ系アメリカ人のアート、文学、音楽、文化、芸術の文化運動でもある。アメリカ南部からシカゴ、カンザス・シティ、ニューヨークと北部に移動するにつれ、それまでに抑えられていた彼ら独自の文化がハーレムにて開花した。それらによりハーレムは、世界的にもブラックカルチャーの発信地と化したのだ。
この社会現象に大いに関わる一つがジャズである。当時のLennox Avenueと7番街には少なくとも20軒以上ものジャズクラブがあった。黒人ミュージシャンによって都市部と進化を遂げ、この音楽育成 に重要な役割を果たした土地であるハーレムとジャズの関係性はとても深い。
エンターテインメントの殿堂 アポロシアター(Apollo Theater)
1934年創立から歴史が刻み続けられている観光名所のアポロシアター。この舞台でパフォーマンスを繰り広げてきたアーティストは、ベシー・スミス、レイ・チャールズ、ニナ・シモーン、ジェイムス・ブラウン、サム・クック、ダイアナ・ロス、アレサ・フランクリン、スティーヴィー・ワンダー、ジャクソン5などを含めた偉大なるアーティストばかりだ。そしてアポロシアターは、音楽、舞台、コメディ、マジックとアフリカ系アメリカ人のエンターテイメントを型どる基盤となった。
当時から伝統を引き継がれる若手アーティスト発掘イベントのアマチュアナイト、過去に歴史を刻んだアーティストのトリビュートなども展開されている。フィラデルフィア出身のビリー・ホリデーも若くして、ハーレムで発掘された代表的な女性ヴォーカルの1人。彼女の代表曲である「奇妙な果実」でも人種差別についての告発を歌ったのが知られる様に、芸術は個人を表現するだけではなく社会にメッセージを訴えかける手段だったのが物語られている。
アポロシアター
- 住所:253 West 125th Street, New York, NY U.S.A. 10027
- ウェブサイト:https://www.apollotheater.org/
ビバップを代表するトランペッター ディジー・ガレスピー壁画
サウスカロライナ州出身のビバップを築いた1人であるトランペット奏者ディジー・ガレスピーはジャズ界で重要人物であり、当時ハーレムではアイコン的な存在だった。ハーレム・ルネサンス時代の画家たちが、ハーレムの街並みやアフリカのイメージを描いていた様に現在でもニューオリンズ出身のBマイクとハーレム出身のマーサリシア・マタリータの2人のグラフィティアーティストによるディジー・ガレスピー100歳記念の壁画が、ハーレムの街角で讃えられている。
ジャズに関する貴重な資料を展示している 国立ジャズ博物館(The National Jazz Museum)
さらにジャズの歴史にもっと興味があるなら一度はチェックしておきたい。老若男女のジャズ好きから地域コミュティにまで密着するこの博物館は、気軽に立ち寄れる。小規模なスペースなのでふらっと散歩がてら訪れたい。火曜、水曜日が定休日。
国立ジャズ博物館
- 住所:Ground Floor, 2203, 58 W 129th St, New York, NY 10027 アメリカ合衆国
アフリカンティーでほっと一息 Serengeti Teas&Spices
地元の人たちにも大人気のアフリカンティースポット。アフリカを拠点に世界中のハーブ、スパイス、お茶を取り扱う。400種類以上のハーブを取り揃え、要望により個人に見合ったお茶を作ってくれる。お茶文化の日本人も好むであろうローカルでオススメのお店。旅の疲れを癒してくれるようなハーブティーで休憩には最適。
Serengeti Teas&Spices
- 住所:22 E 125th St, New York, NY 10035 アメリカ合衆国
- ウェブサイト:https://serengetiteasandspices.com/gift-sets/
最後に
この他にも老舗のジャズクラブ、アフリカ系アメリカ人の現代芸術を鑑賞出来る美術館や、ソウルフード・スポットなど見所は満載。音楽、芸術、文化、飲食とふらりとこの街を歩くだけでもただの観光名所とは一見違ったニューヨークを体験でき、独創的な文化に触れ合える。時代の流れと共に目まぐるしく変わりゆくニューヨークで、これらの歴史も薄まりつつあるのだがハーレムという伝統的な土地なしではジャズは語れない。そんな音楽歴史の名残がまだ感じられる場所を探求しながら、ふらりと散歩してみるのも一つの旅の楽しみ方ではないだろうか。
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Yayoi
- ニューヨークを拠点に音楽、レコード、芸術、カルチャーなど様々な情報を発信するライターです。