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スペイン中が美しいマリア像とともにキリストの死を悼む「セマナサンタ」
目次
世界中から大勢の観光客が訪れる「セマナサンタ」
<キリスト像を先導する三角頭巾にマント姿のナサレノ達>
キリストがエルサレムに着いてからの受難に思いを馳せ、その死を悼むセマナサンタ(聖週間)はカトリック教会の典礼です。この期間は、スペインの各地でキリスト像やマリア像をのせた山車とともに信徒たちや楽団が町を練り歩く"プロセシオン"が出ます。宗教色が濃いことにも関わらず、これを見るために世界中から大勢の人が訪れるので、今では観光資源にもなりました。
セマナサンタは、キリストがロバに乗ってエルサレムに入場した"枝の主日"と呼ばれる日曜日から、復活の日曜日の前日までの1週間ですが、日付は毎年変わります。春分の日の後、最初の満月の次の日曜日が復活の日曜日なので、その1週間前に始まることになります。ちょっとややこしいですね。
<"枝の主日"にマドリードのアルムデナ大聖堂から出るロバに乗ったキリスト像>
スペインの多くの町で前述の"プロセシオン"が出ますが、特に盛大なのがアンダルシア地方です。中でもセビージャとマラガが有名で、期間中はホテルが値上がりし、それでも予約が難しいほど混みあいます。
"プロセシオン"には地方色があり、またその町それぞれのカラーを持っています。アンダルシア地方のように豪華で華やかなところもあれば、もっと質素で厳かなところ、山車を肩に担ぐところ、電動のところ、こじんまりしたところ、信徒は普段着でも参列できるところ等さまざまです。
<聖金曜日のバレンシアの港町のプロセシオンは延々と4時間も続く>
往復10時間・最大3500人、スケールの大きさに圧巻
セビージャを例にとって"プロセシオン"の話をしましょう。毎日市内の何軒かの教会からマリア像とキリスト像が担ぎ出され、KKKのような三角頭巾とマント姿の信徒団やおごそかな音楽を奏でる楽団を従えて大聖堂へ向かいます。そしてまた教会へと帰っていくのですが、ゆっくり進むために往復10数時間かかるところも。また、従う信徒の数も最大で3500人とものすごいスケールです。
また、聖像ののった山車はお神輿のように肩に担ぐのではなく、コスタレロと呼ばれる担ぎ手が山車の真下に入って後頭部の付け根で支えて歩くことが特徴です。マリア像の華やかさは有名で、特にトリアナ地区のエスペランサの聖母とマカレナ地区のエスペランサの聖母は絶大な人気があります。
<美人の誉れ高いマカレナのエスペランサの聖母>
セマナサンタに惹かれる理由とは
さて、"プロセシオン"の何が見る人々を惹きつけるのか。いくつもの要素が重なります。厳かな音楽。鼻孔をくすぐるお香。ゆらめくろうそくの火。三角頭巾にマント姿の信徒たち。裸足で十字架を抱えて歩くペニテンテ(悔悛者)たち。正装した見物人。そして、熱狂を内に秘めて静かに見守る人々の前をしずしずと進んでいくマリア像とキリスト像。
※動画:裸足に重い鎖を引きずり、十字架を抱えて何時間も歩くペニテンテ達
アンダルシア地方のマリア像は特に美しく、また天蓋のついた豪華絢爛な山車に乗っており見物客の目をくぎ付けにします。中には山車に手を触れ、涙を流す人の姿も。プロセシオンの途中で、ベランダからマリア像やキリスト像に向かって歌われるサエタと呼ばれるフラメンコに似た調べを持つ宗教歌も、胸に沁みるのです。
おそらく、これは実際に見てみないことにはわからないことでしょう。信心のない私でさえ、見るたびに涙があふれそうになり、これが宗教の持つ求心力なのかと感じ入ります。
※動画:田舎町のキリスト像をのせたお神輿風の山車。後半ではサエタが聞こえる
最後に一言
宗教に関心がない方でも、もしセマナサンタの期間中にスペインにいる機会があれば、ぜひご覧ください。きっと心に響くものがあるはずです。
セマナ・サンタ 基本情報
・国名:スペイン
・都市名(地域名):セビージャほか、スペイン各地
・イベント名(日本語):セマナサンタ(聖週間)
・イベント名(現地語):Semana Santa
・開催時期(前回開催):春分の日の後、最初の満月の次の日曜日が復活の日曜日なので、その1週間前に・始まることになります。
・初回開催年:不明
・来場者人数(規模感):全国各地で開催
・料金:不要
・予約:不要
・知名度:★★★★★
・おもしろ度:★★★★★
・開催場所(主な会場):スペイン各地
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田川敬子(Keiko Tagawa)
- 1996年スペインにひとめぼれ。以後何度も渡西し、2002年春に夢がかなってスペインで日系企業に就職。その後現地企業を経て、現在はオリーブオイルソムリエ/テイスターやライターとして活動中。