ベートーベンの住居パスクヴァラティハウスは、歴史を遡る不思議なアパート

音楽の都ウィーンでは、モーツァルト、ハイドン、ベートーベンなどの音楽家の足跡に、意外なところで出会えたりします。今日はそんな素敵な出会いをご紹介します。

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ウィーン旧市街を散策していたら、気になる壁があり、登ってみたところ、不思議な発見がありました。ウィーンには、史跡となる建物に赤白の旗が立っているのですが、近づいてよく読んでみると「ベートーベンが住んでいた」と書いてあるではありませんか。

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入り口のところには小さな小さな案内板が。よく読むと、ここはベートーベン博物館にもなっているようです。散策していただけなのに宝物を見つけた気分になり、早速入ってみることにしました。

とは言っても、見たところ普通の古い住居です。おまけに、博物館の入り口は4階(日本の5階)。狭くて暗い螺旋階段を、息を切らして登っていくと、もうどの時代にいるのか段々わからなくなってきました。

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そして、これがベートーベンの住居の扉です。どう見ても普通の家のドアです。

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勇気を出して開けてみると、5室分の展示室がありました。チケットを買って入りますが、よほどのベートーベン好きしか来ないようで、思う存分歴史にどっぷりつかることができます。受付の方がガイドツアーさながらに解説をしてくれるので、展示で書かれていないことも沢山教えてもらいました。

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展示室の様子

それでは、実際に展示室を見てみましょう。まず、この5室の博物館のうち、実際にベートーベンが住んでいたのは、最初の2室のみ。入ってすぐのピアノの間の右側に昔は3室つながっていて、合計5室のアパートに、34歳の独身のベートーベンが家政婦と住んでいたことになります。

展示の第一室目は、ピアノが真ん中に置いてあります。これは、ベートーベンが実際に使っていたピアノで、五つのペダルに特徴があります。それぞれ異なった音色を引き出すことのできるペダルで、当時の機構がそのまま残っているという点で資料的価値の高いピアノです。

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この建物の名前の由来となっている「パスクヴァラティ」というのは、この建物の持ち主一家の名前ですが、ベートーベンのパトロンでもあったため、ここに住まわせてもらっていました。

このアパートでベートーベンは1804年から4年間と、1810年から4年間の合計8年間を過ごしました。引っ越し魔として有名なベートーベンは、ウィーンで70回も住居を変えたことで有名ですが、家主はそれを見越して、彼のためにとっておいてくれたので、何度も戻ってきていたのですね。

ちなみにウィーンでは、このパスクヴァラティハウスの前にベートーベンが住んでいた住居が二つ公開されています。一つは有名な「ハイリゲンシュタットの遺書の家」(1802年居住)、もう一つは「エロイカハウス」(1803-4年)で、その後しばらくアン・デア・ウィーン劇場に住んだあと、この住居に引っ越してきたことになりますね。

この住居では、オペラ「フィデリオ」の他に、交響曲4、5、7、8番と「エリーゼのために」が作曲されました。

第一室には他にも、ベートーベンが使っていた戸棚や時計、砂糖入れ(名前入り)などが展示されています。また、壁は塗り替えられていますが、床板は当時のままで残されています。

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第二室以降は、ベートーベン直筆の楽譜(の写し)や、肖像画などが飾られています。特に、第三室にある34歳の頃のベートーベンの肖像画(W.J.メーラー作)は、ちょうどこのアパートに入った1804年の頃に描かれたもので、パトロンに庇護され、かなり裕福な生活を送っていた当時のベートーベンの姿を偲ぶことができます。

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右がベートーベンの絵。左は、ベートーベン常に壁にかけていたという、音楽家だったベートーベンの祖父の絵。

また、窓からの景色も気になります。現在このベートーベンハウスの5階からは、ちょうどウィーン大学の建物が正面に見え、素晴らしい景観となっています。

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しかし、ベートーベンの頃にはこの建物は存在していませんでした。当時のウィーンでは、この住居の基礎になっている市壁から外側は、緑の平原が広がっていました。ベートーベンが見ていた景色は今とは全く違うものだったのです。

窓から外を眺め、ウィーンの森まで見渡せる、広い緑の平野を想像すると、部屋の中は時間が止まっていても、部屋の外は大きく変わったんだなあ、と考えさせられます。

この博物館では、この部屋で作曲されたオペラや交響曲を聞くこともできます。規模は小さい博物館ですが、18世紀の建物の狭い階段を上り詰めて、ベートーベンと二人っきりになれたような親密な気持ちになることができます。

パスクヴァラティハウスは、音楽好きの方だけでなく、ちょっと歴史的な異世界体験をしてみたい方にもオススメです。ぜひ階段を登ってベートーベンの時代にタイムスリップしてみてくださいね。

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ひょろ

オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。

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