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ウィーン最古のカフェ「フラウエンフーバー」は、モーツァルトとベートーヴェンゆかりの地
ウィーンのカフェハウスはユネスコの無形文化遺産にも数えられ、独特の雰囲気と居心地の良さが、ウィーン人だけではなく世界中の観光客を魅了しています。
そんな中でも、ウィーン最古のカフェハウス「カフェ・フラウエンフーバー」は、伝統的なスタイルを守っているだけでなく、モーツァルトやベートーベンが演奏したこともある歴史のあるカフェなんです。
今回はそんなカフェ・フラウエンフーバーの、一風変わった歴史をご紹介します。
<古き良き時代を感じさせる、カフェの内装>
銭湯からモーツァルト、ベートーベンまで
現在カフェ・フラウエンフーバーの場所は、14世紀には風呂屋が営業していたと記録に残っています。現在では町中に浴場はほとんどありませんが、当時は20軒以上も公衆浴場があり、日本の銭湯のようにウィーン人の日々の生活に欠かせないものでした。
しかし、当時の公衆浴場は入浴の他に、散髪、ひげ剃り、更にマッサージや原始的な外科手術(抜歯や瀉血(しゃけつ)など)が行われていたため、衛生状態も悪く、伝染病の温床となっていました。
<カフェの窓から街並みを眺めて>
16世紀のペスト流行の時期には浴場は一時閉鎖されましたが、その後17世紀まで営業を続け、体にまつわる様々な業務を行っていました。次第に衛生状態も改善され、市当局の立入検査が行われ、この場所にあった風呂屋は「市民病院浴場」と呼ばれていました。
しかしとうとう、老朽化した建物は1720年代に取り壊されます。そして、ベルヴェデーレ宮殿やシュロス・ホーフ宮殿などを建築した建築家ヨハン・ルカス・フォン・ヒルデブラント(Johann Lucas von Hildebrandt)によって、現在の建物が建てられました。
<現在Himmelpfortgasseに建つ、カフェ・フラウエンフーバー>
国家の英雄オイゲン公の離宮のすぐ隣という好立地のこの建物は、マリア・テレジアのもとで宮廷料理長を務めていたIgnaz Jahnに手に渡り、1792年には貴族向け高級レストランに生まれ変わりました。
晩餐会の他に、舞踏会やコンサートの会場にもなり、贅沢な雰囲気の中、貴族たちはこぞってこの建物の2階のサロンに集まりました。
モーツァルトは1788年にここでコンサートを行った他、最期のコンサートもここで行われたと言われています。また、1797年にはベートーベンもここで演奏したという記録が残っています。
この歴史的な建物の1階にカフェが入ったのは、1824年のことです。当時のCafé Hänischという名前が、1891年にカフェ・フラウエンフーバーに改められましたが、これがウィーン最古のカフェとされています。
<カフェの内装>
カフェ・フラウエンフーバーを楽しむ
<カフェ・フラウエンフーバーのテラス席は夏季のみ>
内部は伝統的なウィーンのカフェで、コーヒーやケーキのほか、軽食もいただくことができます。夏はテラスがにぎわいますが、せっかく歴史的な建物ですので、少し薄暗い内部に足を踏み入れてみましょう。
<店内の様子>
古き良き時代の雰囲気満点のイスやテーブルが特徴的。ケルナーと呼ばれるウェイターたちも、伝統的な服装とサービスでウィーンのカフェの伝統を守り続けています。
実際にモーツァルト達が演奏したのはこのカフェの上の階になりますが、ここが250年前には貴族向けの高級レストランであったことに思いを馳せると、不思議な気分になります。
せっかくカフェに入ったのですから、ウィーンの定番コーヒー「メランジュ」を頼んでみましょう。ケーキメニューには、アップルシュトゥルーデル、トプフェンシュトルーデルなどのウィーンの伝統的なお菓子もあります。
<Frauenhuberのロゴ入りカップのメランジュと、トプフェンシュトルーデル>
また、ここの自家製ラズベリーレモネードは絶品です!夏の観光の際にはぜひお試しください。ランチメニューも美味しいですよ。
<自家製レモネードと煮凝りのサラダ>
まとめ
旧市街の観光地からほど近く、ゆったりした伝統的なカフェの雰囲気が楽しめるカフェでが、カフェの歴史を巡って行ったら、なぜか風呂屋や病院、モーツァルトやベートーベンにまで行きついてしまいました。
まさにウィーンの旧市街らしい、歴史を感じさせる落ち着いたカフェです。ぜひ観光の合間に立ち寄ってみてくださいね。
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ひょろ
- オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。