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ギリシャの秋の野の花 シクラメンの和名はブタノマンジュウ???
まぶしい太陽のイメージが強いギリシャですが、秋になって曇りや雨が続いたりすると少し憂鬱な気分になります。でも、自然界にとっては夏の間にカラカラに乾いてしまった大地を目覚めさせる恵みの雨。野山の植物が徐々に芽吹いてきます。
野生シクラメンを探しに行ってみよう
ギリシャの野草の花が美しく咲くのは何といっても春ですが、秋にも可憐な花を楽しむことができます。代表的なのが、野生のシクラメン。地中海沿岸や中東を原産とするシクラメンは、ギリシャでも何種類かが見られ、秋から冬にかけて、また、品種によっては春に花を咲かせます。自宅近所のリカヴィトスの丘にもシクラメンが生えているので、天気のよい秋の週末、散歩がてら花を見に行ってきました。
遠目にはまだあまり野草の姿は見えず、あまり咲いていないのかな?と思いましたが、近づいてみると、ポツポツとピンクの花が見えました。野性のシクラメンは葉っぱより先に花が出てくるものが多く、草丈も低いので、群生でないとあまり目立たないのです。よく見かける栽培種よりもかなり小さいのが写真から伝わるでしょうか?小さく可憐なシクラメンは、ギリシャでとても愛されている花のひとつです。
ウサギとカメ
ギリシャ語でシクラメンは「キクラミノ」。その名前は、円や輪を意味するギリシャ語の「キクロス」に由来します。受粉後の花茎がくるくるとらせん状に丸まってしまうことからつけられたそうです。
ギリシャで一番よく見かけるCyclamen graecumは、ギリシャのシクラメンという意味。花がウサギを思わせるのか、「ラグダキ」(小うさぎ)という愛称で呼ばれることもあります。また、古代ギリシャでシクラメンは「ケロニオン」と呼ばれていましたが、これは丸くて少し平べったい塊茎の形が亀に似ていることからだそう。野生シクラメンはピンクっぽい花のものが多いですが、クレタ島で見られるCyclamen creticumのように白花のも見られます。
豚の饅頭、ギリシャでは......?
こんなに可愛らしいシクラメンですが、和名にはブタノマンジュウという面白い呼び名があるのをご存知の方も多いでしょう。ギリシャでも「ヒロプソモ」(豚のパン)という名があり、これは、他の動物には毒であるシクラメンの塊茎を豚が好んで食べることから付けられたそう。実際、豚がシクラメンを食べるのかはわかりませんが......。シクラメンは、かつて薬として用いられていたことも。塊茎は瀉下剤、子宮収縮剤、虫下しなどに、花はスキンケアやしみ消しに使われたそうです。
注:情報として薬効について触れましたが、シクラメンは主に塊茎や根に毒があるので口にしないで下さい。
葉っぱを使った郷土料理
忘れられつつある食文化ですが、ドデカニサ諸島のシミ島やロドス島の郷土料理に、シクラメンの葉っぱで米や豆(レンズ豆かファヴァという割り豆)を包んだドルマデスがあります。
(画像は、ぶどうの葉で作ったシミ島風ドルマデス)
ドルマデスとは、葉っぱで米などを包んで煮た料理。ぶどうの葉で作るものが一般的かつ有名ですが、キャベツで作るラハノドルマデスはじめ、他の葉っぱでも作られます。
シクラメンの葉を使うというのは他の地方では聞いたことがないのですが、イラン、パレスチナ、レバノン辺りで同じような料理があるらしく、中東から伝わったのかもしれませんね。
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アナグノストゥ直子
- アテネ在住。主婦業の傍ら、ライター、リサーチャー、コーディネーターとしても活動する。ブログ「ギリシャのごはん」にてギリシャ料理レシピやおいしい話題を発信中。