トスカーナ州 中世の小さな村で、時代を越えるお祭り

リグーリア州との境目にある北トスカーナ州の山奥。このあたりには昔から小さな中世の集落や古いお城が点在しており、美しい自然と素朴な暮らしが残るイタリア国内でもちょっと特殊な地域です。 そんな村の一つフィレットにて、今年30回目を迎えるハイクオリティな中世のお祭りが5日間に渡って行われました。

一口に「中世のお祭り」と言っても、日本とはあまりに文化が違っていて、場所によって規模や質も異なるため、内容を想像するのはなかなか難しいのではないでしょうか? フィレットはもともと、大小2つの広場を中心に古い石垣で全体を囲まれた、徒歩数分ですべてを見尽くしてしまえるほど小さな山間の村です。普段は落ち着いた雰囲気の村ですが、お祭り開催中はこの村のキャパシティを明らかに越えるほどの観光客でいっぱいとなります。

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まずは村の入口で入場券を買います。大人1人6ユーロで、12歳以下は無料です。村の中に入ってしまうと公共トイレなどもないため、出入りの時に見せられるよう切符は携帯する必要があります。(トイレは、頼めば村を出てすぐの場所にあるBarで貸してもらえます)

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一歩村の中に入れば、中世の世界にタイムトリップ!村人を中心としたお祭りの実行委員たちは皆中世の衣装を身にまとい、市場の商品も他では見ることが出来ない変わった品が並びます。職人による手作りの鎧や、魔女たちが作ったアクセサリー、お祭りには欠かせない藁(わら)で編んだ花冠など、見ているだけでも楽しい屋台がズラリと村を埋め尽くします。

食事ももちろん中世風の地元料理。古代衣装を身に纏ったウエイターが走り回る様子は、映画のワンシーンのようです。 手作りのアクセサリーを屋台で買ったら、「あなたとの会話は楽しかったから、これを持っていれば願いが叶うよ。」と言って、「妖精の粉」と書かれた小瓶をプレゼントしてくれました。妖精、魔女、魔法使い、中世の人形遣いたち...そんな不思議なものたちが堂々と生きていて私たちに目に見えない魔法を掛けてくれる、とても不思議なお祭りなのです。

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夕方、お祭りの開始と共に中に入ると、既に小広場では騎士たちによるコミカルなショーが行われていました。

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どのショーも大変素晴らしかったですが、個人的にはベルギーからやってきたという骨使いの女性と、ドラゴン使いの男性のカップルによる競演が強く印象に残りました。滑車、ドラゴンや骨人形の仕組み、衣装などすべて彼らの手作りで、世界的にも注目を集めるアーティストなのだそうです。

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陽が落ちるのも待たず、広場は音楽と歓声で埋め尽くされていました。大道芸人たちも皆もちろん中世の道化師の衣装を身にまとい、目を見張るような大技を次々と披露し、聴衆との掛け合いで大いに笑いを取っていました。

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私はこの土地とちょっとした縁があり、毎年夏の楽しみとしてこのお祭りを訪れていますが、今年は会期中2回も訪れることができたので、普段は急ぎ足で通り過ぎてしまう小さな展示や講習会にも参加することができました。

細い路地を歩いていると唐突に剣が闇の中にきらめき、「は!」という師範の切れの良い掛け声が。路地で実際の武器と防具を使い、「本物の中世の騎士の戦い方」という講演が行われていたのです。 「映画でよく見るような大立ち回りは本当は嘘なんだよ」「この武器は本当はこうやって確実に敵を仕留めるために使われていたんだ」など、映画や本の世界からは伝わってこない騎士と武器のリアルな世界を感じることができました。

他にも、中世でよく用いられていたハーブの展示なども面白く、農民の衣装をまとった女性が丁寧に中世の女性の美と食におけるスパイスの有用性を語ってくれた後、子供でも参加できるアクティビティとしてナチュラルなお香作りにも参加させてもらいました。

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こちらは中世のスパイスワイン「イッポクラッソ」を試飲できる場所。長年イタリアに暮らしていても耳にしたことのない「イッポクラッソ」を実際に飲むことができて、感動でした。 当時のワインは今ほど美味しいものではなかったそうですが、その不味さを誤魔化し、整腸作用や美肌に良いとして、数種のハーブに漬け込んだこのイッポクラッソを食後に飲んでいたようです。味はクリスマスのホットワインにも似ていて、甘くてとても美味しかったですよ。

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大広場で22時半頃から行われる締めくくりのショーは、毎年ペルージャ県からやってくる「Piccolo Nuovo Teatro(ピッコロ・ヌオーヴォ・テアートロ)」。神話の時代にインスピレーションを受けたストーリー、独特な衣装と世界観、巨大竹馬を巧みに操る巨人表現、花火や火花を操る壮大なスペクタクルショーです。

いわゆる勧善懲悪でもなく、マスクや巨人が出てきたり子供たちにとっては怖いものも多い世界観なのですが、不思議と引き込まれて最後まで見てしまう。その証拠に、もう遅い時間だというのに、イタリアの子供たちは食い入るように彼らのショーを見ていました。 24時頃、歓声と割れんばかりの拍手の中、お祭りは終わります。

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佐藤 モカ

イタリア・フィレンツェ在住。作家、フリーライター、マーケティング各種リサーチやコーディネートなど。2013年女児出産、現在育児奮闘中。

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